発表

2A-005

保育士のDark Triad (1) 専門性認知との関連

[責任発表者] 太田 仁:1
[連名発表者] 阿部 晋吾:1
1:梅花女子大学

目 的
保育士は1年未満から5年未満の早期離職が約50%,10年未満での離職合計は80%になる(厚生労働省平成25年,2013)。保育士の早期退職や保育事故を未然に防ぎ,その専門性の向上を図る保育士のキャリアパス構想(厚生労働省,平成28年(2016))では「乳児保育」,「障がい児保育」,「子育て支援」,「社会的養護」,「食育」,「保健衛生」の6分野の領域別専門職の育成を想定している。太田・阿部(2017)は,6領域の保育に対する保育士の認知の構造を検討した結果,食育・障害児保育に関する「発達支援」保健衛生を含み子育て支援に関する項目を含む「子育て支援」乳児保育を中心に社会的養護・子育て支援を含む「乳児保育」社会的養護に関する項目を中心に子育て支援を含む「社会的養護」の4因子を見出している。  
これらの専門的実践が過不足なく遂行されためには,その促進要因と障がいとなる要因を検討することが必要である。
本研究は,保育士が専門性を向上と保育事故の予防の観点からその個人的要因を検討することにより,専門性向上促進の一助とすることを目的とする。本報告は端緒として専門性と保育士の反社会的性格特性との関連について報告する。
反社会的な性格特性としてよく知られるものに,パーソナリティのDark Triadがあり,マキャベリアニズム,サイコパシー,自己愛傾向の3つにより構成されている(Paulhus & Williams, 2002)。Dark Triadはそれぞれが独立した性格特性として扱われてきた一方で,多くの類似した特徴も持つことから,近年では包括的な概念としてとらえるようになってきている。 本研究では,保育士におけるDark Triadを,専門性認知との関連から検討する。

方 法
実施方法と対象者 配東海地方の保育所に勤務する現職の保育士97名を対象に各保育所の園長及び主任保育士に調査の趣旨を説明し,質問紙と返信用の封筒の配布を依頼した。回答後返信された質問紙は,73名分(回収率75%)であった。回答の不備にあったものを除き61名の回答を分析対象とした。対象者は常勤職の保育士60名(男性1名,女性59名)で,平均年齢は27.20( SD = 6.96 )であった。
質問項目 Dark Triad:日本語版Dark Triad Dirty Dozen (DTDD-J; 増井他, 2015)を使用した。この尺度はDark Triadの各側面に対応する4項目,計12 項目で構成され,選択肢は“1.全くあてはまらない”から“5.非常にあてはまる”までの5件法である。本研究における各尺度のα係数は,マキャベリアニズムがα= .83,サイコパシーがα=.58,自己愛傾向がα=.74であった。なお,それぞれの平均値は,1.94 (SD = 0.86),2.08(SD = 0.65),2.29(SD = 0.81)で,従来の大学生を対象とした研究(田村他, 2015)より全般的に低い値であった。
 保育士の専門性認知:前掲太田・阿部(2017)による保育士の専門性尺度36項目。本研究における各尺度のα係数は,子育て支援がα= .88,乳児保育がα= .86,発達支援がα= .76,社会的養護がα= .74であった。

結 果と考察
 相関分析 保育士経験年数,Dark Triad,専門性認知の相関係数をTable 1に示す。

Table 1 保育士経験年数,Dark Triad,専門性認知の相関係数

経験年数は,子育て支援,発達支援,社会的養護と正の相関を示していることから専門性の向上には経験年が重要な要因となっているといえよう。
DTについては,サイコパシーが高いほど,子育て支援と,障害児保育等の発達支援に有意な負の相関がみられ,保育士のサイコパシーの高さは、子育て支援や虐待等の対応といった専門性認知の障がいになっていることが予見される。
 重回帰分析 次に,保育士経験年数とDark Triadを独立変数,専門性認知の各下位尺度を従属変数とした重回帰分析を行った。結果をTable 2に示す。

Table 2 専門性認知の下位尺度を従属変数とした重回帰分析

Dark Triadは, ,サイコパシーによる子育て支援への負の影響のみが残った。サイコパスは“私は,どちらかというと冷淡で人の気持ちを気にしない”といった質問項目から構成されていることから保育所での保育と家庭での子育てにおける責任の主体を分離して認知することにより保育所における自身の保育の結果の整合性を保とうとする機制が機能していことが予見されよう。相関関係が認められた発達支援についても影響が想定されたが重回帰分析では有意とならなかった結果から今後は,対象者数を増やす等の取り組みが必要である。

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