発表

1D-080

幼児期の選択場面における視線シフトの発達 人はいつから選択するようになるのか

[責任発表者] 須藤 竜之介:1
[連名発表者] 齊藤 俊樹:2, [連名発表者] 高野 裕治:3
1:九州大学, 2:東北大学, 3:同志社大学研究推進機構赤ちゃん学研究センター

目 的
 自らの意思に基づき何かを選ぶという行動は,人の生活を支える重要な認知活動である。幼児期における選択行動は,人格形成や親との愛着形成に関わっていると考えられている。そのため,幼児の選択行動を理解することは,人の発達を研究するうえで非常に重要なテーマである。近年,視線が選択行動に大きく影響することが明らかにされている。例えば,2つの物を呈示した際,より多く見せた物が選ばれやすくなることや(Shimojo et al., 2003),視線の計測により選択される物,選択にかかる時間がモデリングできることが知られている(Krajbich et al., 2011)。しかしながら,視線が選択行動のプロセスにいかに影響するかという研究は多く行われている一方で,視線と選択行動の関係がどのように獲得され,発達していくのかといった発達的視点からの検討はされていない。そこで本研究では,幼児を対象とした選択課題を開発し,選択行動における視線の発達的な変化を明らかにすることを目的とした。

方 法
参加者
 71名(2歳児:21名,3歳児:20名,4歳児:20名,大学生:10名)の幼児と成人であった。
手続き
 参加者は,2つの人形(約9~18cm)のうち1つを選択する課題を24組の人形に対して行った。実験者と参加者が対面で向かいあい,実験者が二つの人形を参加者へ同時に呈示した。参加者は呈示された人形のうち,どちらかより好きな方を選び自らの手で掴み取った。参加者の選択行動はビデオカメラで撮影され,人形が呈示されてから掴むまでの視線行動が記録された。

結 果
 選択時における視線行動の発達過程を検討するため,人形が呈示されてから掴むまでの間に参加者が人形を見比べた回数を算出した。幼児を対象に,月齢と人形を見比べた回数の相関分析を行った。その結果,有意な正の相関関係が認められた(r = .52, p < .001)。これにより,月齢に伴い人形を見比べる回数が有意に増加することが示された(Figure 1)。選択対象を見比べた回数に対して,発達段階(2歳児・3歳児・4歳児・成人)を独立変数とした1要因分散分析を行った。その結果,発達段階の主効果が有意であった(F(3, 57) = 8.84, p < .001, ηp2 = .32)。多重比較の結果,2歳児と4歳児,2歳児と成人,3歳児と成人の間に有意差がみられ(Figure 2),2歳児と4歳児,3歳児と成人の間には視線行動における発達段階の明確な差異が示された。

考 察
 本研究では,月齢に伴い選択場面の視線シフトが有意に増加し,4歳児で成人との間に差がみられなくなることが分かった。視線シフトには,一方の人形に向けた注意を抑制し,他方の人形へ切り替えるという抑制機能が必要である。2歳児は成人と比べ抑制機能が未発達であり,これにより視線シフトが少なかった可能性がある。また,4歳児では,成人との有意差がみられなかったことから,選択行動における視線の抑制機能は4歳頃に獲得されると考えられるが,この点については更なる検討が必要である。本研究から,好きな物を選択して掴むという単純な選択行動においても,発達段階によって関連する認知機能や認知プロセスが変化している可能性があり,視線行動の計測でその発達を捉えられることが示された。今後は,視線の停留時間など複数の指標を用いること,4歳児以降の発達段階を含めた比較を行うことにより,選択場面における視線行動の発達プロセスを解明したい。

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