発表

1D-073

将来の職業への意識が大学生の対人距離に及ぼす影響

[責任発表者] 加藤 みわ子:1
1:愛知淑徳大学

対人距離の侵害によって不安が喚起されるなどのストレスを感じることが報告されている。しかしこれまで,医系専攻や保育,福祉系専攻の学生は,実習などの臨床・対人訓練の有無に拘わらず,対人距離が人文系専攻の学生に比して狭いこと,対人距離の侵害に対して不安を喚起されにくいことがみいだされた。医療,福祉,保育などのヒューマンサービスを志す学生は,ある程度将来の職業を定めてから進学をすることが多い。このことから,人に近距離で接する機会の多い仕事を苦痛なく行うためには,本人のはっきりとした職業指向性が影響をしている可能性があることが示唆された。そこで,本研究では,「職業意識調査」の結果から2群に分けた高意識群と低意識群を比較して,職業意識が対人距離に及ぼす影響を検討する。また,対人距離測定後の不安感と快適感についても比較を行う。医系大学の臨床工学科の学生98名が実験に参加した。実験に先立ち,臨床工学技士の仕事についての意識や学部選択の動機,向社会的な思考傾向などの「職業意識」を質問紙で調査し,職業意識得点が平均値よりも高い学生を「高意識群」,平均値未満の学生を「低意識群」として2群に分けた。実験では,他者が接近してくる「侵害距離」と,自らが接近していく「侵入距離」について測定を実施した。このとき,対人距離と共に不安感と快適感を測定した。実験実施は,実験参加者がいずれも1年次の講義期間開始後1ヶ月半経過した時点であり,本格的な実習やグループ活動が開始される前とした。すなわち,お互いが顔見知りの程度であった。また,接近者と被接近者は同性同士とした。「侵害」「侵入」それぞれの対人距離について,職業意識の高意識群と低意識群を較した。また,対人距離測定後の不安感と快適感については,対人距離との関係について,それぞれ相関分析を行った。実験の結果,特に自らが接近する条件である侵入距離の時に,職業意識高群は低群よりも反応距離が有意に長いことが示された。また,対人距離と不安感との間の間に正の相関が,快適感との間には負の相関が認められた。すなわち,対人距離が長くなると不安感が増し,不快感が増す傾向があることが示された。本研究では,学生の将来への職業意識が対人距離に及ぼす影響について検討をした。また,対人距離と気分の関係についても検討した。実験の結果,ヒューマンサービスを目指す学生は,人に接近するとHappyになる傾向があることが示された。しかし,高意識群は低意識群に比して,対人距離が長いことが認められた。これらの結果から,ヒューマンサービスを志す者の内,将来の職業への意識が高い者は,自らが他者に近づくときには,自らの気分だけでなく,相手の反応を敏感に感じながら,相手にとっても適切な距離を取ろうとしている可能性が考えられた。したがって,本研究の結果は,ヒューマンサービス業の者が他者に直接触れる機会の多い業務を苦痛なく行えるようになるためには,教育や対人訓練,臨床経験と共に,将来の職業への意識の向上が重要であることを示唆していると考えられた。

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