発表

1D-071

個人特性がアンダーマイニング効果に及ぼす影響

[責任発表者] 江 聚名:1
[連名発表者] 田中 あゆみ:1
1:同志社大学

目 的
 行動を持続的に遂行するには,その行動自体に魅力を感じること,いわゆる内発的動機づけが不可欠である。内発的動機づけが報酬のような,その行動に随伴する外的制約によって低下する現象(Deci, 1971)は「アンダーマイニング効果」と呼ばれる。Hagger & Chatzisarantis(2011)は,外的環境要因によって生じるアンダーマイニング効果は,因果律志向性という自分が行動の原因であると信じるかどうかのような個人内部の特性によって,調整されると報告している。具体的には,行動の原因は自分自身であるという考え(自律的志向性)が高い人は,外的制約が提示されても内発的動機づけが低下しない。つまり,自律的志向性が高い人には報酬によるアンダーマイニング効果が生じないとされる。
 本研究は,Hagger & Chatzisarantis(2011)の実験結果を再現できるかを検証することを目的とした。

方 法
 参加者 関西の私立大学に通う学生84名(女性56名;平均年齢19.58歳)。
 課題 立体パズル(ソーマキューブ)。
 自律的志向性 一般的因果律志向性の日本語版(田中・桜井, 1995)の下位尺度「自律的志向性」を使用した。
 内発的動機づけ (自己報告) Intrinsic Motivation Inventory (Choi, Mogami & Medalia, 2009) の下位尺度Interest/Enjoymentを和訳し,使用した。
 自由選択行動 自由選択段階でパズルを解く時間を内発的動機づけの行動指標として記録した。
 手続き まず,課題進行段階では,報酬あり群の参加者に「パズル1つ正解につき,100円がもらえる」,報酬なし群の参加者に「パズルを解いてください」とそれぞれ教示し,7分間パズルを解いてもらった。そして,自由選択段階では,パズルに対する内発的動機づけを質問紙で回答してもらった後,参加者に雑誌を渡し,実験者がアンケート回答用のパソコンを取りに行くため,「戻ってくるまでパズルを続けて解いてもいいし,雑誌を読んでもいいので,自由に過ごしてください」と伝え,5分間退室する。その間に,参加者の行動をカメラで記録した。5分後実験者が戻り,参加者に自律的志向性のアンケートをパソコンで回答してもらった。

結 果
 群ごとの内発的動機づけ尺度得点,自由選択行動及び自律的志向性尺度得点の平均値をTable 1に示した。両群において内発的動機づけ尺度得点に有意な差が見られなかったが(t = 1.39, p = .168),報酬あり群のほうがやや高かった。
 自由選択行動のデータは正規性が満たされなかったため,一般化線形モデルを用いて分析を実施した。自由選択行動を応答変数,報酬の有無,自律的志向性,及びこれらの交互作用項を説明変数とした(Table 2)。その結果,報酬の主効果が有意であったが,内発的動機づけ尺度得点と同様に,報酬あり群のほうが自由選択行動の時間が長かった。また,自律的志向性の主効果及び交互作用項は有意ではなく,報酬が自由選択行動に与える影響は,個人の特性によって調整されなかった。

考 察
 本研究では,報酬によるアンダーマイニング効果ではなく,エンハンシング効果が見られた。これは,本研究が使用したパズルが困難であったため,報酬は統制感ではなく課題に対する有能感をもたらしたと考えられる。
また,自律的志向性の調整効果は見られなかったが,これは本研究の参加者の自律的志向性が全体的に高かったからと考えられる(尺度得点範囲が1~5で,平均値は4.03)。今後の研究では,自律志向性が低い参加者も含めて,より簡単な課題を用いて検討する必要がある。

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