発表

1D-050

説得的メッセージの精緻化指標としてのIUの利用—自己報告の精緻化指標とアイディア・ユニットの比較—

[責任発表者] 立川 経康:1
1:法政大学

目 的
 説得研究では,呈示したメッセージが精緻化されたかどうかが重要視される。これは精緻化の程度によって,説得状況に存在する変数が説得に与える影響が異なるためである(Martin & Hewstone, 2008)。ここで,「精緻化」とは,Krosnick & Petty(1995)によれば,態度対象の特質やその利点,欠点について考える程度を意味するとされる。そして説得研究では,精緻化を測定する方法として,次の3つが提案され,用いられてきた(Wegener et al., 1995)。(1)説得的メッセージに対する(非)好意的思考の割合,(2)メッセージ読解中の思考の数,(3)情報処理にどのぐらい多くの労力を割いたか(精緻化の自己評定)である。このうち,最初の2つは「思考リスト課題」という課題を実施することによって測定される。しかし,メッセージの説得力の高低や参加者の事前知識や事前態度によって変動する好意的思考の割合を精緻化の指標とするのは「説得状況における精緻化の程度の客観的な測定」という視点から考えると信頼性がない測定である。さらに,測定方法の3つ目の精緻化の程度の自己報告も,客観的な指標とは言えない。したがって,本研究では,文章の理解度測定の指標として用いられた文章読解後の「アイディア・ユニット(以下,IU)の再生率(邑本,1998)」を精緻化の指標として取り上げ,より客観的な精緻化の指標としての利用を探る。
方 法
 参加者と実験操作 参加者は,私立大学に在籍する学部生20名であり個別あるいは小集団で実験を行った。実験条件は,説得的メッセージの強弱2(強,弱)×精緻化高教示2(有り,無し)の2要因参加者間計画であった。
刺激 日本において道州制の導入を支持する説得的メッセージ2種類を参加者に呈示した。強論拠から構成される文章は716字,IUは58,弱論拠から構成される文章は722字,IUは52であった。
精緻化高教示 呈示された文章の精緻化を高めるため,参加者の半数に対して「調査の最後に道州制導入に関しての皆様の意見をお聞きしますので,できるだけ集中して読んでいただくようお願い致します」との教示を行った。
主な測定指標 呈示された文章への自己報告の精緻化指標として,「まったく考えなかった—非常に考えた」,「まったく注意を払わなかった—非常に注意を払った」の2項目11段階でそれぞれ回答を求めた。また参加者に対して文章の内容再生課題の実施を求めた。課題への従事時間は,参加者の再生量によって変わり7~10分間であった。参加者によって再生された文章内容を,大学院生2名によってIUに分割してもらい,そこから各参加者のIU数を最大のIU数(58または52)で除して参加者ごとのIUの再生率を算出した。
手続き 実験は次のようにして行った。最初に参加者に道州制の簡単な説明を行い,次に導州性導入への事前態度を測定した。次いで精緻化高教示(有り群のみ)を行い,その後,文章を4分間読むよう求めた。その後100マス計算を2分間行い,次いで内容再生課題7~10分,さらに思考リスト課題を3分間行い,態度等の測定,自己報告での精緻化の程度の回答と続いた。
結 果 と 考 察
IUの精緻化指標としての機能を評価するため,IUの再生率を従属変数として階層的重回帰分析を行った。記述統計をTable 1に示す。
Table 1.各記述統計
分析では,Step 1で説得的メッセージの強弱2(強0.5,弱-0.5),精緻化高教示2(有り0.5,無し-0.5)の主効果項を投入し,Step 2でこの2変数の交互作用項を投入し,Step 3で自己報告の精緻化得点の主効果項を投入した。分析の結果,Step 1のモデルが有意傾向(R2 =.288, p = .055 )であり,Step 2でのR2の変化量は有意(ΔR2 = .182, p < .05),Step 3でのR2の変化量は有意ではなかった(ΔR2 = .025, n.s.)。したがって,Step 2のモデルにおいて,説得的メッセージの強弱2(強,弱)×精緻化高教示2(有り,無し)の単純傾斜分析を行った(Figure 1)。精緻化高教示がある群では,強論拠を含む場合よりも,弱論拠を含む場合にIUの再生率が上昇することが示された(t = -3.79, p < .01)。一方で,自己報告の精緻化得点を従属変数とし,独立変数を精緻化高教示2(有り,無し),メッセージの強弱2(強,弱)とした2要因参加者間分散分析では,いずれの主効果,交互作用も有意ではなかった(F < 1)。
Figure 1.精緻化高教示を調整変数とした単純傾斜分析の結果
(エラーバーはSEを表す)
以上の分析結果から,精緻化の指標としてIUの再生率を用いることで,精緻化の自己報告では検出できない属性の精緻化を検出できる可能性が示された。

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