発表

1D-030

東日本大震災被災地域の高校生のPTSDと抑うつ症状の推移 2013年から2016年までの継時的測定の結果

[責任発表者] 小関 俊祐:1
[連名発表者] 伊藤 大輔:2, [連名発表者] 鈴木 伸一:3
1:桜美林大学, 2:琉球大学, 3:早稲田大学

目 的
 2011年3月11日に発生した東日本大震災は,東北地方を中心として,大きな被害をもたらした。東日本大震災被災者および避難者の健康問題について調査した本谷(2013)によると,健康問題としては,PTSD,抑うつ,不安,睡眠障害,アルコール依存など,さまざまな問題が出現しているとともに,震災直後の急性期の問題としてこれらの症状が出現するだけではなく,中長期的な問題として残存していることも指摘している。また,1995年1月に発生した阪神・淡路大震災被災地域の小中学生を対象とした調査(兵庫県教育委員会,2011)によると,阪神・淡路大震災の影響から健康について教育的配慮を必要とされる児童生徒数の推移は,震災後2年から4年後がピークであり,小学生で2,500名弱,中学生で2,000名弱が支援の対象となっていることが示されている。
 このように,東日本大震災が発生して6年が経った現在でも,東日本大震災を契機とした心理的問題を抱える者が少なくないことが考えられる。このような事態を背景としつつ,継続的な支援の必要性を示すためには,東日本大震災以降,被災地域における心理的問題がどの程度発生しているのかを明らかにすることが必要であると考えられる。
 そこで本研究では,東日本大震災被災地域である東北地方の太平洋側にある県の高校1年生を対象として,主たる心理症状であるPTSDと抑うつ症状の推移について,継続的に調査し,その変化を明らかにすることとした。本研究の結果を基盤とし,継続的な心理的支援の必要性を示しつつ,災害後,どのような時期に支援が必要となるのか,といった今後生じうる大規模災害への示唆を提供することをねらいとする。
方 法
調査時期:2013年から2016年までの毎年6月,各1回。
対象:東北地方の太平洋側にある県の高校に入学した1年生。2013年の調査対象は県立のA高校の男子133名,女子142名,不明1名。2014年以降は同県同地域にある私立のB高校を対象としており,2014年の調査対象は男子51名,女子174名。2015年の調査対象は男子48名,女子164名,不明3名。2016年の調査対象は男子51名,女子166名,不明3名。
調査材料:1.PTSD症状を測定するために,IES-R(Asukai et al., 2002)を用いた。IES−Rは25点がカットオフ値として設定されており,カットオフ値を超えた場合,PTSDの診断がつく可能性が高い。
2.抑うつ症状を測定するために,CES-D(島ら,1985)を用いた。CES−Dは16点がカットオフ値として設定されており,カットオフ値を超えた場合,うつ病の診断がつく可能性が高い。
倫理的配慮:本研究の実施にあたり,調査対象となる学校の校長および養護教諭に対して研究の趣旨を説明し,内諾を得た。その後,対象となる生徒に対して質問紙を配布し,成績等への影響はないこと,回答は任意であり,無記名での実施であること,回答をもって調査協力へ同意したとみなすことなどを伝えて協力を得た。なお,これらの研究手続きは,2013年時点に筆頭著者が所属していた研究機関の研究倫理委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
 調査への回答が得られ,記入漏れや記入ミスのあった回答を除いた結果,2013年は男子119名,女子136名,2014年は男子49名,女子168名,2015年の調査対象は男子43名,女子150名,2016年は男子47名,女子153名の,合計865名の回答が解析対象となった。
 調査時期と性別の2要因分散分析の結果,CES-D得点を従属変数としたときに交互作用が有意であり(F(3, 857)=3.47, p<.05),男性において2016年の対象者の得点が2013年の対象者に比べて有意に高く(p<.05),女子において2016年の対象者の得点が2014年および2015年の対象者に比べて有意に高かった(ともにp<.05)。また,IES−R得点とCES−D得点の双方において,調査時期に関わらず,カットオフ値を超える人数が一定の割合を示していた。
 以上のことから,現時点で学校に通っている生徒の中にも,心理的支援が必要と考えられる被災生徒が少なくないことが示された。そのため,急性期支援のみならず,継続的な支援の提供が求められることが示唆された。
付記:本研究はJSPS科研費 (JP16K13492)の助成を受けたものです。

詳細検索