発表

1D-010

対人ストレッサーに対する反応にパーソナリティが及ぼす影響 (2) 20代のパート/アルバイト勤務者を対象とした映像刺激を用いたオンライン調査

[責任発表者] 山川 樹:1
[連名発表者] 坂本 真士:1
1:日本大学

目 的
 対人過敏/自己優先傾向 (以下IP傾向)とは,いわゆる「新型うつ」と呼ばれるような抑うつ状態の発生に対する脆弱性と考えられているパーソナリティ特徴である (村中他, 2016)。そして,坂本他 (2014) の仮説枠組では,IP傾向の強い人が対人ストレッサー (e.g., 批判される) に接すると抑うつ的になると想定している。山川他 (2016) は,大学生を対象にIP傾向によってストレッサーへの評価や反応が異なるか検討した結果,対人過敏傾向 (以下IS傾向) は,ストレッサーの脅威性/統制不能性の評価や回避,情動表出型コーピングと関連することを示した。
 本研究では,先行研究の一般化可能性を拡大することを目的に,20代のパートアルバイト勤務者を対象としてIP傾向によってストレッサーへの評価や反応が異なるか検討する。本研究では,アルバイト中に良かれと思って指示とは異なる対応をしたことを店長から叱責される場面を撮影し,その映像を提示した。
方 法
手続き 株式会社クロス・マーケティングが保有するアンケートモニターに登録する会社員のうち,「20–29歳であり,かつパートアルバイト勤務」という条件に合致する男女を対象に回答募集を行った。実験は2度に分けて行われた。第1回ではIP傾向の測定を行い,約1週間後に行った第2回では刺激の呈示及び統制変数,従属変数の測定を行った。
実験参加者 2回ともに回答した参加者は280名 (男性91名,女性189名,平均年齢25.90歳±2.44)であった。
調査票 (a)短縮版対人過敏/自己優先尺度: 村中他(2016) が開発した対人過敏・自己優先尺度の短縮版22項目を用いた。対人過敏傾向11項目,自己優先志向11項目について,それぞれ5件法 (1: そう思わない—5: 非常にそう思う) で尋ねた。(b) ストレッサーの認知:認知的評価尺度 (鈴木・坂野, 1998)を参考にストレス場面をコミットメント,脅威性,影響性,統制不能性の4側面から各2項目で測定する項目を考案し用いた。(c) コーピング:山川他 (2016) を参考に,回避,問題焦点,情緒的サポート希求,情動表出の各コーピング行動をとろうと思う程度を各2項目で測定した。(d) 対人ストレス経験: 統制変数として過去1か月の対人ストレス経験の程度を橋本 (2005) の対人ストレッサー尺度により測定した。分析には橋本 (2005) と同じ18項目の合計点を用いた。
操作チェック 以下のいずれかの条件に当てはまる参加者を分析から除外した。すなわち(1) satisfice検出のために設定した回答を指示する項目で2回とも指示に従わなかった者,(2) 回答時間が2分以下あるいは30分以上だった者であった。以上のスクリーニングにより,本研究の分析対象は152名となった (男性39名,女性113名,平均年齢25.95歳±2.40)。
結 果
 ストレッサーの認知を測定した8項目に対して探索的因子分析を行った結果,2因子が抽出された。第1因子は影響性,脅威性,統制不能性の混合した因子であるため,恐れ因子と命名し,第2因子はコミットメントを表す2項目であるためコミットメント因子と命名した。コーピングを測定した項目のうち情動表出を測定した2項目は相関が低かったため,分けて分析に用いた。
 最後に,対人ストレス経験を統制変数,対人過敏,自己優先,そしてその交互作用を説明変数とし,ストレッサーの認知及びコーピング行動の各得点を目的変数とした重回帰分析を行った。分析の結果,標準編回帰係数が有意になった目的変数を表に示す。対人過敏はいずれのストレッサーの認知に対しても有意な正の係数を示した。一方自己優先は回避型コーピングと情動表出型のうち「何事もなかったかのようにしよう (逆転項目)」に対し有意な正の係数を示し,「不満を態度に表す」や問題焦点型,情緒的サポート希求型に対しては有意な係数を示さなかった。
考 察
分析の結果,大学生を対象として同様の検討を行った山川他 (2016) とは,一部異なる結果が得られた。対人過敏傾向が強いほどストレッサーを重要かつ脅威的であり自力ではどうしようもできないと認知する点は先行研究と整合する結果であった。しかし,自己優先傾向の強さが回避型や情動表出型コーピングをとろうとする程度に寄与する点は異なっている。また,山川他 (2016) とは異なり,本研究で対人過敏傾向がコーピング行動に対して有意に寄与していなかった。この結果が,サンプルの違いに起因するものなのか,さらなる検討を要する。
            
本研究は平成28年度科学研究費補助金(基盤研究(B),課題番号936113:研究代表者 坂本真士)の補助を受けた。

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