発表

1D-009

オンライン調査における単調回答とその影響:学生と社会人を対象とした対人過敏・自己優先尺度を用いた検討

[責任発表者] 亀山 晶子:1
[連名発表者] 山川 樹:1, [連名発表者] 村中 昌紀:1, [連名発表者] 樫原 潤:1,2, [連名発表者] 坂本 真士:1
1:日本大学, 2:日本学術振興会

目 的
近年,オンライン調査の問題として,努力の最小限化(調査協力者が調査に際して応分の注意資源を割かない行動)が指摘されている(e.g.,三浦・小林,2015,2016)。例えばオンライン調査におけるリッカート尺度回答では,同じ選択肢の単調回答が見られやすいことが示されており (Fricker, Galesic, Tourangeau, & Yan, 2005),単調回答が調査結果にもたらす影響について,今後知見を蓄積していく必要がある。
本研究では,5件法のリッカート尺度を用いて,オンライン調査と質問紙調査で単調回答の発生率とその影響について検討した。さらに,指定の選択肢を回答することを指示するトラップ項目を設け,トラップ項目誤答者(指示に従わなかった者)とトラップ回答正答者(指示に従った者)の回答特徴の違いを検討し,質問を精読しない回答者によるデータへの影響についての一知見を提供することを目的とした。
方 法
分析対象 4つのサンプルにおいて調査を実施した。(a) 質問紙調査・大学生:大学生306名(男性131名,女性169名,欠損6名,平均年齢19.4 ± 1.2歳),(b) オンライン調査・大学生:大学生119名(男性59名,女性60名,平均年齢20.8 ± 1.4歳),(c) 質問紙調査・社会人:病院に勤務する看護師・准看護師・介護スタッフ133名(男性20名,女性109名,欠損4名,平均年齢39.6 ± 10.9歳),(d) オンライン調査・社会人:会社員453名(男性203名,女性250名,平均年齢37.1 ± 9.4歳)であった。(a)(c)は質問紙配布による集団での実施であり,(b)(d)は同一の調査会社によるオンライン上での実施であった。
質問項目 対人過敏・自己優先尺度(村中他,2016)の短縮版22項目を用いた。22項目中には対人過敏傾向 (以下,IS) 項目と自己優先志向 (以下,PS) 項目が11項目ずつ含まれており,それぞれ5件法 (1: そう思わない— 3: どちらともいえない— 5: 非常にそう思う) で尋ねた。逆転項目は,ISで1項目のみであった。(d)においては,22項目内に,指定の選択肢を回答するよう指示するトラップ項目が2項目含まれていた。すべてのサンプルにおいて,IS,PSともに内的一貫性が確認された (α=.77-.90)。
結 果
5件法の選択肢のうち同じ数値を全項目で回答した場合を単調回答とし,すべて1からすべて5までの単調回答者数を合計して単調回答率を算出した。各サンプルにおける単調回答率は,(a)で0.3%,(b)で10.1%,(c)で0.0%,(d)で8.6%であった。単調回答のうち,8割以上がすべて3回答(中点回答)であった。(d)において,トラップ項目誤答者(1項目でも指示に従わなかった者)は147名 (24.5%) 存在し,トラップ項目誤答者内での単調回答率は27.8%であった。(d)のうち,トラップ項目正答者でも,2.4%の単調回答(トラップ項目以外すべて3)が存在した。  
次に,ISとPSは.60程度の相関が想定される概念であるため(村中他,2016),各サンプルにおいてISとPSの相関係数を算出した。質問紙調査(a)(c)では,.49-.59,オンライン調査(b)(d)ではともに.63であり,オンライン調査のほうがやや高かった。(d)のトラップ項目正答者では.62,トラップ項目誤答者では.87と特に高かった。
さらに,潜在混合分布モデルによるISとPSの混合分布を描いたところ,質問紙調査(a)と(c)ではともに図1のような分布となった一方で,オンライン調査(b)(d)ではIS,PSともに合計得点が33点付近の狭い範囲に集中した回答がみられた(図2-4)。IS,PSともに合計が33点付近となった回答者には,IS,PS各11項目にすべて3を回答した者 (11項目×3) や,ほぼ3だが他の数値にも少し回答し合計がほぼ33点になった者などが含まれる。33点付近回答者の割合は,(b)で19.3%,(d)のトラップ項目正答者で12.1%,(d)のトラップ項目誤答者で61.5%であった。(b)と(d)のトラップ項目非正答者のサンプルから中点回答者を削除した場合,中心部の過度な密度集中はなくなり,図1と同様のなだらかな密度分布が存在することが確認された。
考 察
オンライン調査では中点付近の単調回答が起こりやすく,特にトラップ項目誤答者でその傾向は顕著であった。単調回答の増加によって下位項目間の相関が高くなる問題があるため,目的に応じて単調回答者は分析から削除することも考慮すべきだろう。今後は,オンライン調査における中心付近の分布密集が他の尺度でもみられるかを確認し,その影響についてさらなる検討が必要である。

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