発表

1D-007

インターネット調査と郵送紙面調査による調査結果の比較

[責任発表者] 林 明明:1,2
[連名発表者] 金 吉晴#:1
1:国立精神・神経医療研究センター, 2:日本学術振興会

目 的
 近年,インターネット調査(オンライン調査)を用いた研究が増加している。インターネットを利用した研究調査は従来の紙面調査よりも簡便であり,またデータ形式で素早く回答が得られるため,回収や入力の手間を節約することが可能である。Gosling et al.(2004)はインターネット調査と従来手法による論文を比較し,Lewis et al.(2009)やWeigold et al.(2013)は参加者を2群に分けてそれぞれの調査を実施して比較することにより,インターネット調査と従来の紙面調査の間で結果が一貫していたことを報告した。しかし,これらの研究では異なる参加者群の間で比較を行っており,それぞれの群の属性を可能な限り合わせた場合でも,参加者間の特性の違いなどを統制しきれない懸念がある。そこで本研究では,同一の参加者に対して,インターネット調査と郵送の紙面調査を実施し,2つの調査手法による結果に違いがあるかを検討した。

方 法
【調査1】調査会社に登録の20-69歳男女210名を対象に実施した。順序効果を統制するため,参加者は年齢と性別を考慮して2群に割り付けられ,それぞれインターネットおよび郵送紙面調査の順序を入れ替えた。両方の調査を回収できなかった5名,極端に未回答項目が多かった2名を除き,分析対象者は203名(男性105名,女性98名,平均年齢44.4歳,SD=13.6),調査間日数は平均14.95日(SD=4.05)であった。
 調査項目は1.Ten Item Personality Inventory(小塩 他, 2012),2.Social Desirability Scale短縮版(北村・鈴木,1986),3.Problematic Internet Use Questionnaire(林, 2016),4.General Self Efficacy Scale (Ito et al., 2005), 5.Subjective Happiness Scale(鳥井 他,2004),6.Rumination-Reflection Questionnaire(高野・丹野, 2008),7.Fear of Negative Evaluation Scale短縮版(笹川 他, 2004),8.Linkスティグマ尺度(下津 他, 2006) ,9.性態度尺度より性的寛容さ下位尺度(和田・西田, 1992),およびその他回答時の気分状態などを測定する尺度等を用いた。
【調査2】調査1と同様に実施した。対象者は170名であった。両方の調査を回収できなかった6名,回答の順序が群の割付と異なった1名,不適切な回答方法だった4名を除き,分析対象者は159名(男性82名,女性77名,平均年齢45.2歳,SD=13.5),調査間日数は平均15.04日(SD=2.46)であった。
調査項目は1.NEO Five Factor Inventory (下仲 他, 1999),2.Balanced Inventory of Desirable Responding(谷, 2008),3.Risk Propensity Questionnaire (森泉 他, 2010),4.Problematic Internet Use Questionnaire(林, 2016),およびその他回答時の気分状態などを測定する尺度等を用いた。
倫理的配慮 本研究は第一著者の前所属である東京大学の「ヒトを対象とした実験研究に関する倫理審査委員会」の承認を受けて実施した。

結 果・考 察
 対応のあるt検定の結果,調査手法間で差が認められた尺度を抜粋して表1に示す。
 PIUQはインターネット依存傾向を測定する尺度である。調査1では下位尺度にて調査手法間に有意な差があったが,調査2では差が認められなかった。RPQはリスクテイキングの傾向を測定する尺度であり,下位尺度にて差が認められた。TIPIとNEO-FFIは共に性格5因子を測定する尺度である。TIPIは開放性と協調性に調査手法間の差が認められ,NEO-FFIにおいても開放性と調和性(協調性・調和性は同じ次元)に差があった。2回の調査,異なる尺度においてもこれら2つの性格の次元に調査手法間に差があったことに対しては注意が必要である。ただし,調査の間で2週間程度の時間経過があり,さらに調査手法間の相関係数は再検査信頼性として考えてもおおむね満足できる値であることから,単に時間経過による違いである可能性もある。調査手法間の結果に違いに影響し得る要因など,今後さらなる検討が必要である。

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