発表

1C-095

保育実践力に及ぼす保育に対する自信の影響 子どもや保育者への関わりに対する自信に注目して

[責任発表者] 田村 隆宏:1
[連名発表者] 木村 直子#:1, [連名発表者] 谷村 宏子#:2
1:鳴門教育大学, 2:関西学院大学

目 的
 平成20年改訂の幼稚園教育要領や保育所保育指針では,現代の大きく変動する子どもの保育・教育環境を踏まえて,今まで以上に保育者の資質向上が求められ,保育者養成段階,並びに現場で様々なキャリアを持つ保育者の個々の段階において保育実践力を向上させていくことが課題となっている。このことから,特に保育者養成段階においては保育者志望の学生にできる限りの保育実践力を身につけておくことがより強く求められている現状にあるといえよう。これを実現するためには,保育者養成の段階でどのような要因が学生の保育実践力向上に関与しているかを明らかにし,その要因をサポートするための教育環境や教育的処遇の具体的なあり方を改めて考え直す必要があろう。そこで,本研究では保育実践力の重要な要素の一つであると考えられる子どもや保育者との関わりの側面に注目し,これらに対する自信が保育実践力にどのように関与しているかについて検討する。木村・田村・谷村(2016)によると子どもとの関わりに関する保育実践力は,コミュニケーション力,保育計画力,保育展開力の3つの因子で構成されていることが明らかにされている。本研究では,学生の子どもや保育者との関わりに関する自信がこれら3つの因子のそれぞれに対してどのような影響を及ぼしているかについても詳細に検討する。
方 法
被調査者 被調査者は近畿地方にあるA大学の保育者養成学部の3年生130人であった。
調査内容 保育実習の直前に子どもや保育者とうまく関われる自信の程度を尺度評定で尋ねた。加えて,保育実習の直後に木村・田村・谷村(2016)の「保育実践力スタンダード(子どもとのかかわり編)」の“実践に必要なコミュニケーション能力”に関する33項目,“保育を計画する力”に関する17項目,“保育を展開する力”に関する16項目,について「非常によくあてはまる」から「全くあてはまらない」の6段階評定尺度での回答を求めた。
結 果 と 考 察
 実習後の保育実践力を従属変数とし、「実習前の子どもへの関わりに対する自信」と、「実習前の保育者との関わりに対する自信」を独立変数とした重回帰分析を行った。表はその結果を示したものである。実習後の保育実践力(子どもとの関わり編)と実習前の子どもや保育者との関わりに関する自信との関係については,「実習前の子どもへの関わりに対する自信」(β=0.402***)との間にはある程度の影響が確認されたが,「実習前の保育者との関わりに対する自信」(β=0.239***)との間にはそれほど大きな影響は確認されなかった(R2=0.303)。3つの因子との関係については,いずれの因子に関しても説明率は低く,保育実践力の個々の構成因子への影響は説明できなかった(コミュニケーション力:R2=0.245, 保育計画力:R2=0.239, 保育展開力:R2=0.258)。
 これらの結果から,特に「子どもへの関わりに対する自信」が保育実践力にポジティブな影響力を持つことが明らかにされた。つまり,保育者養成の段階では,特に子ども理解や子どもとの関わり方に関する知識や技能を高める経験が不可欠であり,学生一人一人の保育に関わる自信を高めることが重要であることが示唆されたといえよう。保育者養成段階における教育環境や教育的処遇を考える上においては,保育者志望学生が特に子どもとの関わりに自信を持てるような方向性で具体的なあり方を考えていくことが極めて重要であると考えられる。そのためには,保育者志望学生に保育実践に関わる力量を向上させることに加えて,それが学生に実感できるように,賞賛する,励ますといった教育的処遇も極めて重要であることが示唆されたといえよう。
引用文献
木村直子・田村隆宏・谷村宏子(2016)「保育実践力スタンダード(子どもとのかかわり編)」作成に関する研究,日本保育学会第69回大会発表論文集,p299.
(Takahiro TAMURA, Naoko KIMURA, Hiroko TANIMURA)

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