発表

1C-093

小学1年生の読字能力の測定―読み困難児童の早期発見に向けて―

[責任発表者] 津川 秀夫:1
[連名発表者] 藤原 直子:1, [連名発表者] 宇都宮 真輝:1, [連名発表者] 川本 悠希#:1, [連名発表者] 太田 早紀:1, [連名発表者] 祖堅 勝行#:1, [連名発表者] 井上 宗政#:1, [連名発表者] 松本 奈浦:1, [連名発表者] 田中 甫篤#:1, [連名発表者] 太田 絢人#:1, [連名発表者] 岡田 夏美#:1
1:吉備国際大学

目的 学習障害(Learning Disability)とは,「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態」(文部科学省,1999)である。学習上の困難のある児童は,小学校の通常学級において5.7%在籍するとされ(文部科学省,2012),その中核的障害として読み困難があげられる(後藤・赤塚・池尻・小池,2009)。
本研究では,読み困難児童の早期発見・早期支援に向けて,小学1年生の読字能力を測定し,6月時点での基準値を検討した。また,性別や誕生月による比較とともに先行研究との差異について考察を加えた。
方法 対象者:岡山県内の公立小学校3校において通常学級に在籍する1年生児童125名(男子64名, 女子61名)。
調査時期:2016年6月。
検査課題:読み検査課題(稲垣,2010)を用いた。この検査は,(1)単音,(2)有意味単語,(3)無意味単語,(4)単文,の4つの課題から構成され,発達性ディスレクシアをはじめとする読み能力障害の診断に用いられる。
(1)はひらがな50文字,(2)は有意味単語30個,(3)は無意味単語30個,(4)は3つの単文,の音読課題であり,いずれの課題も音読に要した時間と読み誤り数の計測が行われる。平均+2SDを超える所見が2つ以上で異常,平均+1.5SDを超える所見が2つ以上で経過観察とされる。
手続き:検査スキルを習得した臨床心理学専攻の大学院生10名が,対象小学校の空き教室等を使用し,個別に実施した。
倫理的配慮:吉備国際大学倫理委員会の承認を得て研究を進めた。研究趣旨は,文書と口頭にて高梁市教育委員会学校教育課および協力小学校に説明し協力を得た。また児童の調査協力については文書により保護者に説明し同意を得た。
結果および考察 6月基準値の算出 読み検査課題における読み時間と読み誤り数(エラー)の平均と標準偏差,および参考値として稲垣(2010)の小学1年生の平均と標準偏差をTable 1に示した。
対象者のうち,平均+2SDを超える所見が2つ以上にあった児童は,本研究の基準では8名(6.4%)であり,稲垣(2010)の基準によると45名(36%)であった。
いずれの課題においても,本研究の結果は稲垣(2010)よりも読み時間が長く読み誤りも多くなった。その理由として ,(1)稲垣(2010)の対象は大学附属小学校の児童であり学習環境が一般的でないこと(川崎・石野,2013),(2)稲垣(2010)が10~12月に検査を実施したのに対し,本研究は4ヶ月ほど早い6月に実施したこと,があげられる。
性別による比較:読み検査課題における男女別の平均と標準偏差およびt検定の結果をTable 2に示した。その結果,読み時間では有意味と無意味単語において女子が男子よりも有意に短く(p<.01),エラー数では無意味単語(p<.05)と単文(p<.01)において女子が男子よりも有意に少なくなった。
誕生月による比較:児童の誕生月により読み検査課題の成績が異なるか検討した。生まれ月から,(1)4~7月生まれ(44名),(2)8~11月生まれ(39名),(3)12~3月生まれ(42名),の3群に分け,課題ごとに一要因の分散分析を行った。その結果,いずれにおいても主効果は認められず,生まれ月による遂行成績の差異は見出せないことが示された。
まとめ 本研究では,小学1年生の読字能力について,ひらがな学習をほぼ終えた6月の時点で測定した。その結果,複数の課題において女子が男子よりも読字成績のよいことが明らかになった。また,先行研究との比較から,学習環境や授業進度の違いが児童の読字能力の差異に関わっていることが推察された。

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