発表

1C-089

体罰に対する多数派の態度変容に及ぼす専門的・高圧的説得の効果

[責任発表者] 田中 敏:1
[連名発表者] 中村 佳希#:2
1:信州大学, 2:パソナ

目 的
 Holden et al.(2013)は,体罰に肯定的な親に体罰研究の知見を載せた文章を読ませると彼らの体罰の容認度が低下することを見いだした。そのような専門的文章の予防効果が確証されるなら,全く正反対に体罰を支持する専門的文章が体罰の容認度を高める可能性も考えられる。そこで,体罰を許容する説得的文章に専門性を操作したときの効果を検討することにした。なおまた説得方略として修辞的高圧性(Snyder & Wicklund, 1976)を当の文章に付加した。

方 法
参加者 大学3・4年生150人(男性59,女性91)。
質問紙 体罰に対する容認度と多数派自認度の評定尺度(共に7段階)を提示後,大八木(2013)と田母神・戸塚(2010)を参考に作成した『体罰は許される』と題した約1600字の文章を提示し,その後に再び体罰容認度の評定尺度と当の文章の印象評定9項目(Table 1)を提示した。文章の専門性は著者を大学教授,現職教員,大学生とする3水準とした。また,高圧性は「この考えに反対する理由など全く考えられない」「全く疑問の余地はなく読者も同意する以外にない」という2文挿入の有無とし,計6バージョンの質問紙を作成した。
手続き 調査は集団に実施し,無作為に6バージョンのうちの1つを各参加者に配布した。

結果と考察
 文章を読む前と読んだ後の体罰容認度について参加者の回答は,Table 2のように変化した。参加者150人中,読前の体罰容認度3以下(体罰反対)の者は121人(80.7%)だったが,読後の体罰反対者は68人(45.3%)と半数近く減少するという驚くべき結果だった。
 読前の体罰反対者121人のうち多数派自認度5以上の104人を抽出し,体罰容認度を従属変数とした分散分析を行った結果,男女×事前事後の交互作用(F(1,98)=5.912, p=.017)が有意であり,(程度差はあるが)男女とも文章の読後に体罰容認の方向への有意な態度変容が見られた(Figure 1)。
 そこで態度変容の過程を探るため,文章の読前・読後の体罰容認度の差を取り"体罰許容得点"とし,これを目的変数として文章の印象評定値によるモデル構築を試みた。結果として"論理認知"と"知的関心"を一次因子とするモ
デル(Figure 2)が最適だった(CFI=.979, RMSEA=.053)。高圧性(x1)と"論理認知"の相関を仮定しないと適合度は低下する(CFI=.875)。
 一方で文章の専門性や不偏性の印象から成る"論理認知"が体罰許容を促し(β=.63),他方で高圧性も体罰容認を推進する(β=.39)。相反するが(β=-.62),両者は共に体罰の許容を説得する機能をもち,知的関心(β=.25)よりその影響は大きい。

引用文献
Holden et al.(2014). Research findings can change attitudes about corporal punishment. Child Abuse and Neglect, 38, 902-908.
大八木淳史 (2013). ラグビー校長,体罰と教育を熱く語る 小学館
田母神俊雄・戸塚宏 (2010). それでも,体罰は必要だ! ワック
Synder & Wicklund (1976). Prior exercise of freedom and reactance. Journal of Experimental Social Psychology, 12, 120-130.

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