発表

1C-059

ロボットとの会話の効果:自発脳波による検討

[責任発表者] 近江 政雄:1
[連名発表者] 松本 紗季#:1
1:金沢工業大学

目 的
近年、コミュニケーシヨンロボットの開発・製品化がすすんでいくなかで、人とロボットとの会話の機会が増加している(岡田・松本、2014)。これらのロボットは、高齢者の介護や自閉症療育の支援への応用も期待されている。従来、人とロボットとの会話の効果は、おもに質問紙調査や視線・動作の行動計測によって研究されてきた。本研究は、ロボットとの会話中の自発脳波を人との会話中のものと比較することによって、ロボットとの会話の効果の脳メカニズムをあきらかにしようとするものである。

方 法
ロボットは、オハナス(タカラトミー)を使用した。オハナスは、スマートフォンと連動しており、会話やしりとり・占いなどのゲームを楽しむことができるとともに、眼の色の変化や接触によって非言語的会話もできるコミュニケーションロボットである。3分間の安静状態、それにひき続いて3分間ロボットと会話させるロボット条件、および3分間実験者と会話させる人間条件のそれぞれにおいて自発脳波を計測した。また、それぞれの条件後に、会話中の癒し・コミュニケーション・感情の印象について計12項目の評価と自由記述からなる質問紙調査をおこなった。自発脳波は、14チャンネル脳波計(Emotiv EPOC+、Emotiv)を使用して計測した。実験参加者は大学生10名 (男性4名、女性6名)であった。

結 果
 質問紙調査から、癒しについてはロボット条件のほうが人間条件よりも高く、コミュニケーションと感情については人間条件のほうがロボット条件よりも高いことがしめされた。コミュニケーションについては統計的有意差があったが、癒しと感情については有意差がなく、ロボットとの会話の印象は人間との会話の印象と比較して顕著な違いがないことがしめされた。ロボットとの会話に緊張しなかったと自由記述した実験参加者が多く、また楽しそうに笑ってロボットと会話をしていた。その一方で、会話がうまくいかずに戸惑っている実験参加者も見受けられたが、戸惑いながらも会話はそのまま続けられていた。
 Emotiv EPOC+のデータは(AF3、F7、F3、FC5、T7、P7、O1、O2、P8、T8、FC6、F4、F8、AF4)の14チャンネルからなっている。それぞれのチャンネルごとに、安静・ロボット条件・人間条件の始めの30秒および終わりの30秒を選択し、α波、β波、θ波の強度を算出した。脳波(α波、β波、θ波)、時間(始め、終わり)、条件(安静・ロボット条件・人間条件)、チャンネル(14チャンネル)の4要因被験者内計画分散分析をおこなったところ、条件の要因が有意であり (F(2,18)=3.595,p<.05)、自発脳波計測によって会話の効果の脳メカニズムについて検討できることがしめされた。
 ロボット条件のほうが人間条件に比べてα波とθ波の強度が大きかったF7、T7、O2、FC6を選択して、それぞれのチャンネルにおける安静・ロボット条件・人間条件でのα波とθ波の強度をもとめた。図1、図2にF7におけるα波とθ波の強度をしめす。ロボット条件のほうが人間条件および安静よりも強度が大きいことがわかる。

F7と同様に、T7、O2、FC6においても、α波とθ波の強度は、ロボット条件のほうが人間条件および安静よりも大きくなった。

考 察
F7とT7は左側の側頭葉であり、言葉を理解する領域をふくむ。ロボットとの会話は、予想外の返答があることや、スムーズでないことがあるため、実験参加者がよく考えて会話していたことをしめすものであると考えられる。O2は視覚情報処理、FC6は視覚情報処理にかかわる領域である。ロボットとの会話に多くふくまれる非言語的情報処理を反映するものであると考えられる。口ポットとの会話は、α波強度の増加がみられることから癒し効果があるといえよう。また、θ波も強度が増加することから、ロポットとの会話によって会話中に集中状態であるともいえる。これらの結果は、コミュニケーションロボットの導入の、高齢者の介護や自閉症療育の支援にとっての有効性の脳メカニズムをしめすものであると考えられる。

引用文献
岡田美智男・松本光太郎(編著) (2014) ロボットの悲しみ コミュニケーションをめぐる人とロボットの生態学,新曜社

詳細検索