発表

1C-056

fMRIを用いた反芻誘導課題日本語版の作成と評価

[責任発表者] 勝又 結菜:1
[連名発表者] 中谷 裕教#:2, [連名発表者] 高橋 美保:1
1:東京大学, 2:東京大学進化認知科学センター

目 的
 反芻は気分障害やストレス増加のリスクファクターとして注目されており,発生や持続のメカニズム解明が求められている。Cooney et al.(2010)は,反芻の神経学的メカニズムを検討するため,反芻誘導課題を作成しfMRI実験を行った。その結果,Disner et al. (2011)でも理論的に反芻との関連が指摘され,自己参照処理とも関連する内側前頭前皮質等の活動が見られた。反芻は“つい考えてしまう”という自動的特徴を持つため,神経学的手法による検討は有効であると考えられるが,本邦において反芻のfMRI実験は行われていない。
本研究では,日本語版のfMRI用反芻誘導課題を作成し,反芻関連領域が賦活するかについて追試することを目的とする。その際,反芻の主観的な測定データである反芻質問紙得点と脳活動との関連も検討する。

方 法
実験参加者 健常な日本人大学生・大学院生25名(男性15名,女性10名,平均年齢23.85歳,SD=3.02)が参加した。
反芻誘導課題 Cooney et al.(2010)は,Nolen-Hoekesma & Marrow(1993)の反芻誘導課題を参考に,自己や不快気分について考える反芻条件,外的な対象物について考える気晴らし条件を作成,加えて抽象的な物事について考える抽象的気晴らし条件を増やし,3条件のfMRI用反芻誘導課題とした。しかし,反芻関連領域の多くは自己参照処理関連領域と重なるため,本研究では注目対象が明確な反芻(RUMination)条件と具体的な気晴らし(DIStraction)条件の2条件とした。課題文は,Cooney et al.(2010)とNolen-Hoekesma & Marrow(1993)から,RUM/DISそれぞれ14文を選定し,原著者に日本語訳と課題使用の承諾を得た上で,著者が日本語訳した後,英語圏に在住経験のある心理学専攻の大学院生に表現の適切さを確認した。課題は4ブロック(2条件××2ブロック)に分かれ,ブロックの開始・終了時には落ち込みの情動評価を行った。課題提示の方法をFigure 1に示す。予備実験により,RUMの落ち込み誘導が確認された。
反芻得点 Rumination-Reflection Questionnaire日本語版(高野・丹野,2008)を用いた。
手続き 実験参加者は,実験の説明を受け質問紙に回答した後,MRI装置に入り反芻誘導課題に取り組んだ。撮像には,Siemens MAGNETOM Prisma 3T,64chヘッドコイルが使用された(35slices(no gap),TR=2000ms,TE=30ms,FOV=192mm,flip angle=80°,voxel size=3×3×4mm3)。
統計解析 Cooney et al.(2010)では条件間比較のみであったが,反芻は考え続けるという持続的な性質を持ちfixation中にも起きている可能性があるため,2条件(RUM vs DIS)×2タスク(sentence vs fixation)のANOVAを行った。

結 果
 左後帯状皮質,左角回,左上内側前頭前皮質,左中眼窩前頭前皮質,両側下前頭前皮質,両側中後頭皮質にて有意差が見られた(Figure 2)。それぞれのβ値をFigure 3に示す。反芻得点(Mean=44.20,SD=6.49)と各領域のβ値との相関はいずれもみられなかった。

考 察
 本研究では先行研究で指摘されていた反芻や自己参照に関連する領域の活動が確認され,反芻誘導課題日本語版の有用性が支持された。反芻得点と観測された各領域のβ値は相関がなく,状態としての反芻と特性としての反芻は異なると考えられる。β値はRUMsentenceとDISfixation,DISsentenceとRUMfixationで連動性が見られた。自己内外のどちらかに注目し思考することは,もう一方を抑制することになり,注意の解放時に無意識にリバウンド効果が起きている可能性がある。自己外部に注目する気晴らしは反芻を軽減するとされるが,反動的に自己注目を促し反芻をより強化するという,反芻回避の悪循環につながることもあると推察される。

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