発表

1C-024

悪夢の苦痛度に関連する精神的要因の検討

[責任発表者] 岡田 斉:1
[連名発表者] 松田 英子:2
1:文教大学, 2:東洋大学

岡田・松田(印刷中)は悪夢の苦痛度を測定する質問紙であるNDQ (Belicki, 1992) を翻訳しNDQ-Jと名付け、オリジナル同様の信頼性と妥当性を持つことを示した。さらに、岡田・松田(2015)はこの質問紙を用い、悪夢の苦痛度とうつ、統合失調症的傾向、離人感、空想傾向、視覚的イメージの鮮明性との間の関連性を検討し、有意な相関があること報告した。これらの結果はLevin & Nielsen (2007) が指摘する悪夢の苦痛度と不安障害、統合失調傾向や空想傾向、イメージの鮮明性などの知覚・認知的側面の異常を伴う障害とも関連するという指摘を、NDQ-Jを用いて確認できたと考えられる。NDQ-Jの妥当性をさらに確認することを目的とし、先の指標に加え、NDQとの関連が報告されている病理的な行動としての自傷行為 、覚醒時の空想傾向についてより多面的に測定できる質問紙を新たに加え、女子大学生を対象に調査を行い、検討したので報告する。方法:調査時期と調査対象者:2016年9月から2016年12月に実施した。対象者は関東圏の私立大学の女子大学生163人。年齢は18から22歳、平均19.0歳(SD 0.84歳)。質問項目によって欠測値があるため、分析によって対象者の人数に変動があり、分析ごとにそれを明記した。質問紙:悪夢の苦痛度:NDQ-J (岡田・松田,2014)。うつ:SDS日本語版。特性不安:STAI-t(清水・今栄,1981)統合失調型パーソナリティ:坂東・毛利・下山・高祖・丹野(2003)が翻訳したSPQ の短縮版にあたるSPQ-B 。空想傾性:Creative Experience Questionnaire 日本語版。離人感:日本語版ケンブリッジ離人尺度のうち頻度に関する5段階評定部分、多面的空想特徴質問紙短縮版 (松井・小玉,2004)のうち空想に対する認識、空想の役割・影響、空想する状況、空想傾向に関する35項目、自傷行為質問紙(岡田,2002)質問紙への協力依頼と教示は、共通教育の心理学の講義の時間中に無記名での回答を求め、自発的に協力提出された用紙を回収した。質問紙は一つの授業で1種類のみ実施したため8週間に渡って実施した。結 果 と 考 察:NDQ-Jの合計得点と各尺度との相関係数を表1,2に示す。NDQ-Jの合計得点は、統合失調症スペクトラム傾向、空想傾性、離人感とは前回報告した結果とほぼ同様の有意な相関係数となった。うつ傾向に関しては、前回の我々の報告では弱い相関でしかなかったが、今回はスペイン語版やドイツ語版での検討結果に近い値となった。今回新たに導入した特性不安、自傷行為の頻度はいずれも有意な相関を示した。これらの結果は、Levin & Nielsen (2007) が統合失調症スペクトラム障害において頻回な悪夢が伴うと指摘していること、頻回悪夢のある人では解離の指標および空想傾向が高くなるという指摘を前回の我々の報告同様、支持すると考えられる。Levin & Nielsen (2007)の指摘は主として悪夢の頻度との関連性を示す結果であり、今回の結果はこの関連性を苦痛度においても裏付けるものと思われる。さらに、今回の結果は、悪夢の苦痛度は特性不安と関連が深いこと、悪夢で苦しむ人は行動的にも示す傾向がある可能性を示唆する。NDQ-Jと多面的空想質問紙の下位尺度の関連性は興味深いものとなった。相関が有意となった下位尺度は空想の統御不能、ネガティブ影響、不快な状況の空想、空想傾向の4つであった。これらの項目は松井・小玉(2004)が精神的健康低群の特徴として差異を見出した項目と一致する。この結果は悪夢の苦痛度は悪夢に限らず覚醒時のイメージや空想などの認知機能と関連する可能性を示唆すると考えられ、Carr,et al (2016)と同様に夢の内容の生成に関するcontinuity 仮説(Scheredl,2010)を支持する結果と考えることができる。

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