発表

1C-006

自殺を美化する態度と関連要因に関する探索的検討

[責任発表者] 加藤 央也:1
[連名発表者] 川島 大輔:1, [連名発表者] 川本 静香:2, [連名発表者] 白神 敬介:3, [連名発表者] 川野 健治:2
1:中京大学, 2:立命館大学, 3:上越教育大学

問題と目的
問題 世界価値観調査によると,日本人は,自殺を許容する割合が高くない一方で,自殺率が高いといった特異な傾向を示す。こうした現象の原因の一つとして,日本人には自殺を美的な対象として捉える社会文化的文脈が示唆されている(布施, 1985)。また日本では文学作品や映像作品において自殺が美化された表現が度々用いられるが,川島他 (2014) によると,それは必ずしも日本人特有のものではなく,自殺を美化しうる物語性が影響している可能性も考えられる。またKawashima et al. (2016) は自死遺族を対象とした調査において,自殺を美化する態度が,不良な精神的健康や消極的な社会活動と関連することを示唆している。こうした幾つかの散発的な報告があるものの,自殺を美化する態度について実証的に検討した研究は極めて乏しいのが現状である。
目的 本研究では,自殺を美化する態度と他の要因との関連性について検討することで,日本の自殺予防対策に資する基礎的資料を得ることを目的とする。
方 法
調査方法と対象者 株式会社マクロミル社を通じて,20代から60代までの男女2222人を対象に,WEB上で質問紙を配布・回収した。回答漏れなどを除く,合計2051名(男性1012名,女性1039名,平均年齢 = 44.64,SD = 13.96) のデータを本研究での分析の対象とした。本研究は中京大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った。
質問紙 1) 自殺を美化する態度(e.g., “美しい”,“大義のために自殺する”など; Kawamoto et al., 2016),2) 精神的健康: PCL-4 (Bliese et al., 2008),K6 (川上他,2005),日本語版PHQ-9 (村松・上島,2009),複雑性悲嘆尺度 (中島他, 2008),3) デモグラフィック変数 (性別,年齢,最終学歴 (1. 小学校・中学校〜5. 大学院を選択肢とし,高得点ほど高学歴であるとした),心理学・精神医学就学の有無,死別経験の有無,身近な他者の死因4種類(1. 病死 (闘病期間が2日以上),2. 突然の病死 (闘病1日以内),3. 事故による死,4. 災害による死,5. 自死),死別後総経過月数など)から構成された。なお複雑性悲嘆,PCL4,身近な他者の死因4種類については,死別経験があるもののみに回答を求めた。
分析方法 はじめに各尺度の記述統計量およびα係数を算出した(Table1)。次に,自殺を美化する態度と他変数との関連について検討するため,デモグラフィック変数 (心理学就学の有無,死別経験の有無,性別) との関連についてはt検定を,身近な他者の死因4種類間による差異についてはANOVAを,そしてSOSS,精神的健康 (PCL-4,K6,PHQ-9,複雑性悲嘆),年齢,最終学歴,死別後総経過月数と関連については相関分析をそれぞれ実施した。さらに年齢から世代 (20〜60代)のグループを構成し,性別と世代グループによる差異を,2要因のANOVAにより検討した。
結果
 自殺を美化する変数と他変数との関連について,t検定を行なった結果,性別と死別経験の有無において有意な差が認められた。すなわち男性(平均20.10, SD = 4.60)が女性(平均19.41 SD = 4.48)よりも(t = 3.42, p < .01),死別経験がない者(平均19.63, SD = 4.56)がある者(平均20.31, SD = 4.88)よりも(t = -2.87, p < .01),自殺を美化する態度得点が有意に高かった。他方で,他の変数については有意な結果は認められなかった。
考察 
 男性の方が女性よりも,死別経験がない者がある者よりも,自殺を美化して捉える傾向が示唆されたが,他の変数との有意な関連が見られなかった。今後は,男女や世代間の差異なども考慮した検討が必要である。
付記
 本研究はJSPS科研費25285196からの助成を受けた。

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