発表

1C-005

劣等感が仮想的有能感に及ぼす影響に関する研究

[責任発表者] 藤登 健一:1
[連名発表者] 岩淵 千明:2
1:きぼうステップ光町, 2:川崎医療福祉大学

目 的
近年,他人を攻撃せずにはいられない人々が増えているとされている(片田,2013)。これらの人々の心情に関して「仮想的有能感(速水・木野・高木,2005)」という概念がある。  
仮想的有能感は自己の直接的なポジティブ経験に関係なく,他者の能力を批判的に評価・軽視する傾向に付随して,習慣的に生じる有能さの感覚と定義されている。したがって,仮想的有能感は他者の価値を落とすことによって自身の優越感を高める心情であると考えられる。
 深沢・鈴木・八巻(2015)は,劣等感の対処の分岐として,ポジティブに補償していく場合と,ネガティブな劣等コンプレックスやその裏返しの優越コンプレックスになる場合があるとしている。  
また,Adler,A.(1926)は優越コンプレックスに陥った人は,「いたるところで,嘲笑と非難を用意し,独善的でどんな人も批判する」としている。これは「価値低減傾向」とされ,他者の価値を落とし,相対的に優越感を得ようとする試みであるとされている。これらのことから,価値低減傾向と仮想的有能感は類似した概念であると考えられる。
 以上に基づいて,本研究では劣等感が仮想的有能感に及ぼす影響について検討することを目的とする。

方 法
調査時期 2016年7月から9月にかけて,無記名の個別質問形式の質問紙を配布した。
調査方法 大学の講義時間を利用して質問紙の配布を行い,回答終了後に回収を行なった。
調査対象 大学生283名を調査対象とした。記入漏れのある質問紙を除外した結果,有効回答数は251名(男性95名,女性156名)であった。
質問紙の構成 (1)劣等感尺度:高坂(2008)によって作成された尺度である。全50項目で構成されており,「性格の悪さ」・「家庭水準の低さ」・「統率力の欠如」・「身体的魅力のなさ」・「異性との付き合いの苦手さ」・「運動能力の低さ」・「友達作りの下手さ」・「学業成績の悪さ」という8因子構造とされている。回答は5件法(1.まったく感じない~5.とても感じる)である。(2)仮想的有能感尺度:速水(2005)によって作成された尺度である。全11項目で構成されており,1因子が確認されている。回答は5件法(1.全く思わない~5.よく思う)である。

結 果
 劣等感尺度の各因子を目的変数とし,仮想的有能感を説明変数とする強制投入法の重回帰分析を性別ごとにおこなった。
この結果,男性において仮想的有能感に負の影響を及ぼす因子として学業成績の悪さが認められた。そして,正の影響を
及ぼす因子として性格の悪さ因子が認められた。また,女性
においては仮想的有能感に負の影響を及ぼす因子として,統
率力の欠如因子が認められた。

考 察
男性において劣等感尺度下位因子のうち学業成績の悪さが負の影響,性格の悪さが正の影響を仮想的有能感に及ぼしていると考えられる。そして,女性においては,統率力の欠如因子が負の影響を仮想的有能感に及ぼしていることが認められた。
男女ごとに仮想的有能感に影響を与える因子が異なることが認められた。このことから,性格の悪さ因子が仮想的有能感の要因となりうることが推測される。また,仮想的有能感に負の影響を及ぼす因子も認められた。以上のことから,劣等感は仮想的有能感の要因にもなりうる一方,仮想的有能感を抑制する要因にもなりうることが考えられる。

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