発表

1B-091

英語・英語学習に対する信念の4技能間比較—動機づけの期待理論に基づく信念の大学生とビジネスパーソンの比較—

[責任発表者] 島田 英昭:1
[連名発表者] 鈴木 俊太郎:1, [連名発表者] 田中 江扶#:1
1:信州大学

目 的
学習や学習対象に対する信念は学習行動に影響することが知られている。本研究はその中でも,英語・英語学習の信念を調べる。我々は,BALLI(Horwitz, 1985)等を参考に,動機づけの期待理論の基づいた信念の質問紙尺度を提案しており(日本教育心理学会第59回総会発表予定),努力随伴性(例:英語の勉強に時間をかければ、英語は必ず上達する),能力随伴性(例:英語をいくら勉強しても、才能がなければ上手にならない),結果期待(例:日本に住んでいても、英語は役立つ)の3因子に分類した。
近年の日本の英語学習では,「読む・書く」だけではなく,「聞く・話す」を取り入れた英語4技能のバランスのよいスキル獲得が求められている。その中で我々は,大学生を対象に上記の尺度を用いて,3因子それぞれ4技能間の比較をした(第47回中部地区英語教育学会発表予定)。その結果,「聞く・話す」は「読む・書く」に比べて才能(センス)に依存していると認知されていること,各因子において4技能間の相関係数が高く,4技能を分離せずに英語全体の信念とした方が理解が容易であること等を明らかにした。
しかし,上記調査は大学生に限られており,仕事を日常としているビジネスパーソンでは結果が異なる可能性がある。そこで本研究は,20~30歳台のビジネスパーソンを対象に同様の調査を行い,大学生データと合わせて分析する。
方 法
 調査参加者 大学生534名(男性256名,女性278名,平均20.9歳)およびビジネスパーソン528名(男性262名,女性266名,平均31.0歳)が参加した。
 材料 上記尺度の各項目の「英語」の部分を4技能の各スキルに置き換えて用いた。たとえば「英語のリスニングの勉強に時間をかければ、英語のリスニングは必ず上達する」とした。努力随伴性,能力随伴性,結果期待の3因子それぞれに5項目を選び,「1:全くそう思わない」~「5:とてもそう思う」の5段階評価を求めた。
 手続き 2017年4月,インターネット調査により行った。
結 果
 平均値の比較 各項目の回答を得点化し,各因子の各技能について尺度得点を算出した(Table 1)。クロンバックのα係数はいずれも.80以上であった。2属性(学生、ビジネスパーソン)×3因子×4技能の3要因分散分析を行った結果,因子の主効果,技能の主効果,因子×技能の交互作用が有意であり(p<.05),属性×因子の交互作用が有意傾向(p<.10)であった。属性×因子の交互作用について,各因子における属性の単純主効果を検討したところ,努力随伴性のみ有意傾向がみられ,その他は有意ではなかった。また,因子×技能の交互作用について,すべての因子水準で技能の効果が有意であった。Holm法による多重比較(p<.05)の結果,努力随伴性では「聞く・読む」と「書く」の間に,能力随伴性では「読む」と「書く」の間以外のすべての技能間に,結果期待ではすべての技能間に有意な差がみられた。
 確認的因子分析 各因子における4技能間の相関係数がr=.67~.83と高かったため,4技能に共通の因子を仮定するFigure 1に示す多母集団同時分析による確認的因子分析を行った。因子負荷量は両群に等値制約を置いた。その結果,CFI=.980,RMSEA=.051と十分な適合度が得られた。標準化した因子負荷量は両群を通して.78以上であった。
考 察
大学生とビジネスパーソンの比較では,努力随伴性において学生が若干高かった。ここから,大学生は努力により英語力が向上すると認知している傾向が比較的強いと考えられる。
大学生とビジネスパーソンに共通して,努力随伴性では「書く」の値が低く,「書く」が努力で向上しにくいと認知されていると考えられる。能力随伴性では「聞く・話す」の値が高く,才能やセンスに依存すると認知されていると考えられる。一方,結果期待では「聞く・話す」の値が高く,生活や仕事で役立つと認知されていると考えられる。
確認的因子分析の結果から,4技能間の関係性は個人の中では比較的一貫していて,4技能の相対的な違いよりも,英語・英語学習全般の信念として捉える方が,説明の簡約化にもつながり,実用的であると考えられる。
引用文献
Horwitz, E. K. (1985). Using student beliefs about language learning and teaching in the foreign language methods course. Foreign Language Annals, 18, 333-340
謝 辞
本研究はJSPS科研費JP15K02675の助成を受けたものです。

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