発表

1B-090

協同課題における貢献度と自己関与度が自己評価に及ぼす影響 -自己評価維持モデルからの検討-

[責任発表者] 服部 美保:1
[連名発表者] 神山 貴弥:1
1:同志社大学

目 的
 近年, 教育現場において協同学習の活用が推進されている。協同学習とは, グループ成員が共通の目標に向かって相互依存的に課題を遂行し, 互いを高めあうような学習方法である(Johnson, Johnson, & Holubec, 1998)。従来の研究では, 協同学習を経験することが生徒たちの自尊感情を高め, 友人の学習態度へ肯定的認知をもたらすと報告されてきた(Blaney, Stephen, Rosenfield, Sikes, & Aronson, 1977; 蘭, 1983)。一方で, 協同学習における各成員間での実力の差は貢献度の差に結びつき, 他者との比較を生じさせると考えられている(室山・堀野, 1994)。そこで, 他者との比較が自己評価に及ぼす影響について, 自己評価維持モデル(Tesser, 1984)から検討する。協同学習が自己評価に及ぼす影響を自己評価維持モデルが予測し得るかどうかはまだ検証されていない。したがって, 本研究では協同学習における貢献度と課題に対する自己関与度が自己評価に及ぼす影響について検討する。
方 法
調査時期:2016年11月
調査対象者:卒業後, 一般企業への就職を重視し, 就職活動を行う大学3年生67名(男性17名, 女性50名)
調査手続き:実験はペアで行った。初めに, Pleasantnessと状態自尊感情得点を測定する質問紙へ回答を求めた後, 互いに自己紹介をするよう伝えた。次に, 就職採用試験で用いられるSPIから抜粋した問題について自己関与度の高低と貢献度の高低を操作した個人課題を課した後,個人課題の成績を元に達成されるような協同課題を行わせた。協同課題への回答が終了したら,再びPleasantnessと状態自尊感情得点を測定する質問紙への回答を求めた。
調査内容:1. Pleasantnessは, Beach et al., (1998)の手続きに基づき,川人・大塚・甲斐・中田(2011)が翻訳したThe Positive and Negative Affect Schedule(PANAS)の日本語版尺度より20項目を使用した。2. 状態自尊感情得点は, 箕浦・成田(2013)が作成した2項目の自尊感情尺度について, 阿部・今野(2007)が提案した現時点での自分への評価であるという要素を付け加えた項目を作成した。
結 果 と 考 察
 まず, 独立変数を測定時期, 自己関与度, 貢献度とし, 従属変数をPleasantnessとする3要因の分散分析を行った。その結果, 測定時期の主効果(F (1, 63) = 11.30, p < .05, d = .15)と貢献度の主効果( F (1, 63) = 4.90, p < .05, d = .07), そして, 測定時期と貢献度の交互作用(F (1, 63) = 34.31, p < .01, d = .36)が有意だった。測定時期と貢献度について単純主効果の検定を行った(Figure 1)。測定時期において, 課題後は, 貢献H群(M = 8.80, SD = 1.94)が貢献L群(M = -3.15, SD = 1.91)よりも有意に高かった(F (1, 63) = 19.28, p < .001, d = .93)。また,貢献度において,貢献H群は課題前の得点(M = 6.10, SD =1.99)より課題後の得点が有意に高い傾向にあり(F (1, 63) = 3.13, p < .10, d = .37 ), 貢献L群は課題前の得点(M =6.82, SD =1.96)より課題後の得点が有意に低かった(F (1, 63) = 43.16, p < .001, d = .98)。同様に, 従属変数を状態自尊感情得点とする3要因の分散分析を行った。その結果, 貢献度の主効果( F (1, 63) = 8.0, p < .05, d = .11), そして, 測定時期と貢献度の交互作用(F (1, 63) = 25.28, p < .001, d = .29), 測定時期と自己関与度の交互作用(F (1, 63) = 4.38, p < .05, d = .07)が有意だった。測定時期と貢献度について単純主効果の検定を行った。測定時期において, 課題後の得点は, 貢献H群(M = 6.93, SD = .34)が貢献L群(M = 4.71, SD = .34)よりも有意に高かった(F (1, 63) = 21.54, p < .001, d = .94)。また, 貢献度において, 貢献H群は課題前の得点(M = 6.13, SD = .38)より課題後の得点が有意に高く(F (1, 63) = 10.96, p < .05, d = .81 ), 貢献L群は課題前の得点(M = 5.65, SD = .38)より課題後の得点が有意に低かった(F (1, 63) = 14.94, p < .001, d = .88 )。このことから, 個人課題の自己関与度の高低に関わらず, 協同課題における高貢献者は自己評価が向上し, 低貢献者は低下することが示唆された。
 本研究では, 自己評価維持モデルが協同場面における自己評価の変化を予測可能かについて明らかにすることは出来なかった。しかし, 成功条件において協同課題における貢献度が自己評価に及ぼす影響について検討した研究はこれまでになく, 協同課題に貢献できないことで自己評価が低下する子どもの存在が示唆された。
引用文献
室山晴美・堀野緑(1994). 協同場面における課題認知・対人認知の形成と変容 教育心理学研究, 42, 270-280.
Tesser, A (1984). Self-evaluation maintenance processes: Implications for relationships and for development. In J. C. Masters & K. Yarkin-Levin. (Eds.), Boundary areas in social and developmental psychology (pp.271-999). NewYork: Academic Press.

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