発表

1B-066

写真の背景適合性が文脈依存再認におよぼす効果

[責任発表者] 漁田 武雄:1
[連名発表者] 久保田 貴之:1, [連名発表者] 漁田 俊子:1
1:静岡産業大学

 背景写真依存再認は,ICE理論でよく説明できるとされている(Hockley, 2008; Murnane, Phelps, & Malmberg, 1999)。背景写真は意味情報が豊かであるため,項目と文脈との間にアンサンブルが形成されやすく,再認弁別で文脈依存再認が生じるとされている。しかしながら,この予測は,背景適合性の高い(sensitive)画像でしか実証されていない。
本研究は,背景適合性の高低によって,文脈依存再認弁別が影響を受けるかどうかを調べた。
方 法
 実験参加者 40名の大学生が実験に参加した。
 実験計画 2(背景適合性,実験参加者間)×2(文脈,実験参加者内)の混合計画を用いた。40名の実験参加者は,ランダムに背景適合性条件に割り当てた。
 材料 熟知価3.50以上の仮名3文字名詞(小柳・石川・大久保・石井, 1960)108個を,相互に無関連となるように選出し,72個を旧項目,36個を新項目に,ランダムに割り当てた。
 文脈刺激の選択 実験に参加しなかった10名の大学生が,12枚の写真を1枚ずつ,背景適合性を評定した。そのうち,最も適合性の高い4枚を適合写真,最も不適合な4枚を不適合写真として選定した。実験参加者ごとに,各4枚の写真のうち3枚を旧文脈,1枚を新文脈に割り当てた。72個の旧項目は,3枚の適合写真と3枚の不適合写真に割り当てた。
 手続き 実験参加者は,個別に20分の実験に参加した。17インチのディスプレイを用いて,36対の旧項目を1対ずつ,45ポイントのMSゴシックフォントの赤文字を縦並びで,実験参加者に提示した。提示速度は,6秒/項目(提示間隔1秒)であった。実験参加者には,旧項目を意図学習させた。項目対の提示順序,対内の提示位置,実験参加者ごとにランダムとした。3枚の背景写真は,同じ写真が4回以上連続しないという条件つきランダムで,それぞれ12回ずつ提示した。
 項目提示後,実験参加者は真後ろに向き,クレペリン検査と同種の計算課題を5分間行った。その後,もとに向き直り,36個の旧項目(36対の一方)と36個の新項目を提示された。各項目は,学習時と同じフォント,色,サイズで,1個ずつ,ランダム順で提示した。実験参加者は,各項目の新旧判断を行い,画面下の新旧ボタンを,実験参加者ペースで押すことで反応した。ボタンを押すと,その下に「次へ」ボタンが表示され,それを押すことで次の項目を表示させた。旧項目の半数は学習時と同じ旧文脈で提示し,残りは新文脈で提示した。新項目も,半数ずつ旧文脈と新文脈で提示した。
結 果
 各条件ごとのhit率,false alarm (FA) 率, A' をTable 1 に示す。hit率,false alarm (FA) 率,A' のそれぞれについて,2(適合性)×2(文脈)の分散分析を行った。
 Hit率では, 適合性×文脈の交互作用が有意であった [F(1, 38) = 4.85, MSE = 0.019, p = .034]。下位分析の結果,適合写真では,SC条件がDC条件よりも高かったが [F(1, 38) = 14.48, MSE = 0.019, p < .001],不適合写真では差が無かった[F < 1]。
 FA率では, 適合性の主効果が有意でなく[F < 1],文脈の主効果は有意であった[F(1, 38) = 8.32, MSE = 0.007, p = .007]。交互作用は有意でなかった[F < 1]。
 A'では, 適合性×文脈の交互作用が有意であった [F(1, 38) = 5.63, MSE = 0.042, p = .023]。下位分析の結果,適合写真では,SC条件がDC条件よりも高かったが [F(1, 38) = 5.35, MSE = 0.042, p = .027],不適合写真では差が無かった[F < 1]。
考 察
 背景適合性にかかわらず,Hit率とFA率で正の文脈依存効果が生じた。この結果はICE理論を支持している。
 けれども,A'の文脈依存効果は,適合写真でのみ生じた。この結果より,「文脈が意味内容を豊富に含むとアンサンブルが生じやすくなる」というICE理論の副原理を修正する必要を示唆する。アンサンブルは意味内容の豊富さではなく,文字と文脈が意味的に統合するのではなく,画像的に統合することを意味している。

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