発表

1B-065

同一ビデオの連続提示が文脈依存再生におよぼす効果

[責任発表者] 久保田 貴之:1
[連名発表者] 森 琢也#:2, [連名発表者] 漁田 俊子:1, [連名発表者] 漁田 武雄:1
1:静岡産業大学, 2:モルテン

目的
Smith & Manzano (2010) は,同一の文脈を連続して提示すること(以下,ブロック提示)によってビデオ文脈がグローバル文脈として機能するとしたが,その主張を支持する明確な根拠は示されていなかった。実証的な研究としては,中島・漁田・漁田(2015)がビデオ文脈のブロック提示による実験を行い,グローバル文脈として機能した場合に類似した結果を得ている。しかしながら,中島ら(2015)の用いた方法は再認法であるため,ブロック提示によってビデオ文脈がグローバル文脈として機能したことを主張するための根拠としては十分とは言えない。なぜならば,再認法では記憶の群化の検証ができないためである。ブロック提示によってビデオ文脈がグローバル文脈として機能するならば,記憶の群化が生じると推測され (e.g., Isarida & Isarida, 2007) ,この点については再生法を用いて検証することが必要であった。そこで本研究は,ビデオ文脈がグローバル文脈として機能するか否かを検証することを目的とし,再生法を用いて実験を行った。
方法
実験参加者 心理学関連科目を受講する大学生42名。
実験計画 2[ビデオの提示方法:ブロック vs. ランダム;参加者間要因]×2[文脈の異同:同文脈 (SC) vs. 異文脈 (DC);参加者内要因]の混合計画。ビデオの提示方法の2条件に実験参加者を21名ずつランダムに割り当てた。
材料 林 (1976) より,連想価91以上のカタカナ2音節綴を24項目選出し,記銘項目とした。また,Smith & Manzano (2010) の選定基準に基づいて撮影したビデオ・クリップ6個を用意した。ビデオ・クリップの長さは5秒とした。
手続き 実験参加者は,約15分の個別実験に参加した。まず,実験参加者をコンピュータ画面の前に座らせ,コンピュータ画面に表示された単語を自由な方法で暗記するように教示した。またこの際,一緒に映し出される背景のビデオは暗記する必要がないこと,計算課題とテストを行うことも合わせて伝えた。テストの方法についてはこの時点では伝えず,テストの直前に説明することを伝えた。
学習セッションでは,ビデオをコンピュータ画面上に全画面表示し,その画面の中央に項目を赤字でスーパーインポーズして提示した。項目は,24個を1画面に1個ずつ継続的に提示した。項目の提示速度は,5秒(提示時間5秒,提示間隔0秒)とした。項目の提示順序は,実験参加者ごとにランダムに変化させた。学習時に提示するビデオは,6個のビデオから2個を実験参加者ごとにランダムに選出して用いた。ランダム条件では,2個のビデオの提示回数がそれぞれ12回となること,同じビデオが4回以上連続で提示されないことを条件として統制したもとで,ランダムな順序で提示した。ブロック条件では,一方のビデオを12回連続提示し,その後もう一方のビデオを12回連続提示した。
学習セッションののち,計算課題を30秒間行った。計算課題では,コンピュータ画面上に3つの1桁数字からなる加減算が表示され,計算結果の下1桁をマウスでボタンを押して回答する課題であった。
計算課題の終了後,テストの教示として,暗記した単語を口頭で報告すること,報告する単語の順番に指定はないこと,テスト中はコンピュータ画面上にビデオが再生されることを伝えた。テストの教示終了後,ただちにテストを開始した。テスト中,学習セッションで使用したビデオの一方を24回連続提示した。テストの時間は2分間であった。テストの終了後,内省報告用紙に回答させ,実験は終了した。
結果と考察
条件ごとの再生項目数および群化の指標(repetition ratio)の平均と標準誤差を表 1に示す。平均再生項目数に関する分散分析の結果,交互作用が有意であった[F(1, 40) = 5.868,MSE = 3.579, p = .021, ηp2 = .127]。下位検定を行ったところ,文脈の単純主効果は,ランダム条件で有意ではなく[F < 1],ブロック条件ではSC条件の再生項目数がDC条件よりも有意に多かった[F (1, 40) = 7.245, MSE = 3.579, p = .011, ηp2 = .153]。この結果より,ブロック条件においてのみ,文脈依存効果が生じたといえる。
次に,各参加者のrepetition ratioの実測値と期待値の比較を行ったところ,ブロック条件においてのみ実測値が期待値よりも有意に大きかった[ランダム:t(20) = 1.532, p = .142, d = 0.304;ブロック:t(20) = 2.260, p = .036, d = 0.413]。このことから,ブロック条件においてのみ,記憶の群化が生じたといえる。この結果は,ビデオ文脈がブロック提示によってグローバル文脈として機能したことを意味している。ビデオ文脈は,文脈の提示方法によって性質が変化するといえよう。
引用文献
Isarida, T., & Isarida, T. K. (2007). Environmental context effects of background color in free recall. Memory & Cognition, 35, 1620-1629.
中島 早紀・漁田 俊子・漁田 武雄 (2015). 再認におけるビデオ文脈依存効果 日本認知心理学会第13回大会発表論文集, 45.
Smith, S. M., & Manzano, I. (2010). Video context-dependent recall. Behavior Research Methods, 42, 292-301.

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