発表

1B-064

静かな人は静かな場所で力を発揮する 作業環境と性格特性が認知課題のパフォーマンスに及ぼす影響

[責任発表者] 吉本 早苗:1
[連名発表者] 高橋 康介:1
1:中京大学

目 的
 パーティーのような賑やかな場所で過ごすことが好きな人もいれば,図書館や美術館など静かな場所で過ごすことが好きな人もいる。このような違いは通常,性格の違いによるものと考えられ,前者は「外向的な人」,後者は「内向的な人」とみなされることが多い。
 外向性/内向性は人間の性格特性の一つであり,その違いは大脳皮質の覚醒水準の個人差に起因すると説明されている(Eysenck, 1967)。この説によると,内向的な人は外向的な人よりも皮質の覚醒水準が高く,刺激に対して強い神経応答が生じる。内向的な人が賑やかな環境を好まないことは,刺激の多い環境が過剰な神経応答を喚起し,それが不快感に結びつくためであると考えられる。また,内向的な人は環境音により認知課題のパフォーマンスが低下することが報告されている(Cassidy & MacDonald, 2007)。これは,環境音が注意資源の配分に影響を及ぼすためであると示唆されている。
 現実の状況においても,外向性/内向性によって作業環境の違いが課題パフォーマンスに与える影響は異なるであろうか?そこで本研究では,大学のイベントとして開催される新入生歓迎会を利用し,この問題を検討した。従来の理論に基づけば,内向性傾向の強い人は新入生歓迎会のような刺激の多い環境下において認知課題におけるパフォーマンスが低下すると予測される。

方 法
 実験参加者 大学生72名(男性26名,女性46名,平均年齢18.14歳,SD = 0.56)であった。全員が中京大学心理学部の新入生であり,学内で開催された当該学部の新入生歓迎会に参加した。歓迎会及び実験への参加は任意であった。
 質問紙 モーズレイ性格検査(MPI)により実験参加者の外向性/内向性傾向(E得点)を測定した。E得点は0–48点の範囲で算出され,点数が高いほど外向性傾向が強く,低いほど内向性傾向が強いことを示す。
 認知課題 一般知識課題,連続減算課題,遠隔連想課題(RAT,寺井他,2013)を用いた。一般知識課題は世の中に関する知識を問う課題であり,4つの選択肢の中から正当を選ぶ形式で出題した。連続減算課題では,3桁の数字(800–999)から7を連続で引き算させた。RATは創造性を測定する課題であり,そのままでは意味を成さない3組の漢字(問題語)の語尾に共通して当てはまる漢字1字(正解語)を発見させた。例えば,問題語が「異台・口寒・序然」の場合,正解語は「論」(異論・口論・序論)となる。
 手続き 実験は3回にわたって実施された。1回目と3回目は講義中に教室で行われ,2回目は新入生歓迎会の会場で行われた。3回とも,実験参加者は各自のスマートフォン上で認知課題を行った。一般知識課題とRATは1回あたり各20問で構成されており,実験参加者はそれぞれ2分以内にできるだけ多くの問題に答えるよう求められた。連続減算課題では,2分以内にできるだけ多くの計算結果を入力するよう求められた。1回目のみ,認知課題の前に質問紙によるMPIへの回答が求められた。

結 果
 実験参加者のE得点の範囲は5–43点であった。各実施回(作業環境)におけるE得点と認知課題(一般知識課題,連続減算課題,RAT)の成績の相関係数をTable 1に示す。一般知識課題と連続減算課題においては1回目と3回目にE得点との有意な負の相関がみられた(rs < .–27, ps < .05)。つまり,内向性傾向が強いほど課題パフォーマンスが高いという傾向がみられた。ところが,新入生歓迎会の会場で実施した2回目では,いずれの課題においてもそのような傾向はみられなかった。RATにおいては,3回ともE得点との有意な相関はみられなかった。

考 察
従来の理論から予測されたように,講義中の教室といった比較的静かな環境では,内向的な人のほうが外向的な人よりも課題パフォーマンスが高かった。一方で,新入生歓迎会のような賑やかな環境では,その傾向はみられなかった。以上の結果は,現実の状況でも高パフォーマンスを引き出せる環境が外向性/内向性により異なることを示唆する。創造性の指標であるRATでは外向性/内向性による違いがみられなかったことから,特に作業記憶や長期記憶の検索効率に要する注意資源の配分に影響する可能性がある。

引用文献
Cassidy, G., & MacDonald, R. A. R. (2007). The effect of background music and background noise on the task performance of introverts and extraverts. Psychology of Music, 35, 517–537.
Eysenck, H. J. (1967). The biological basis of personality. Springfield, IL: Thomas.
寺井 仁・三輪 和久・浅見 和亮(2013).日本語版Remote Associates Testの作成と評価 心理学研究,84,419–428.

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