発表

1B-050

不快情動喚起時の有効視野の縮小

[責任発表者] 増田 奈央子:1
[連名発表者] 園田 直子:2
1:久留米大学比較文化研究所, 2:久留米大学

 有効視野とはあるものを見ながら同時に他のものを見ることができる範囲をさすといわれている(藤原,2011)。
 偏心度9°のとき覚醒度の高い不快な刺激は覚醒度の高い快刺激や覚醒度の低い中性刺激より課題正答率が低いことから有効視野が狭くなること(野畑・箱田,2008)が示されている。さらに凶器が含まれる刺激を用いた場合でも有効視野が縮小すること(Harada,Hakoda,Kuroki,&Mitsudo,2015)が示されている。
 本研究では,不快情動喚起の覚醒度の高さの違いによって有効視野の縮小範囲がどの程度変化するかについて,快情動と比較を行うことによって検討する。
方 法
 実験参加者:大学生23名(男性7名,女性16名)が実験に参加した。平均年齢は20.8歳(SD=0.94歳)であった。
装置:実験制御はCedrus社製のSuperLab5.0.5で行った。
刺激:画像刺激としてIAPS(International AffectivePictureSystem; Lang, Bradley, & Cuthbert, 2008)より選択した画像刺激80枚を使用した。
課題:実験課題は,中心課題と周辺課題からなっていた。
 中心課題は,視線が中心に固定されているかを確認するための課題であり,画面中央に提示される“D”“F”“J”“K”のいずれかのアルファベットに対し,なるべく速く正確に該当するキーを押すことを求めた。
 周辺課題は,有効視野の範囲を測定するための課題であり,画面周辺に提示される数字を答えることを求めた。周辺課題の数字の提示位置は斜め4方向のいずれかであり,提示される数字は1・3・4・7のいずれかであった。偏心度は3°・6°・9°・12°のいずれかであった。
手続き:実験参加者は顎台を用いて顎と頭を固定し,パソコン画面から57㎝離れたところから刺激を観察してもらった。課題は次のような流れで構成されていた。まず注視点が500ms間提示されその後,画像刺激が画面中央に500ms間提示された。刺激が消える50ms前に画面中央に再び注視点が現れ刺激が消えた後に,中心課題と周辺課題を同時に150ms間提示された。その後,中心課題のいずれかのアルファベットは注視点に変化し,周辺課題の数字は消失した。
 アルファベットが提示されてから実験参加者が反応するまでを中心課題の反応時間として測定した。3000ms以上反応がない場合は誤反応として,注視点を画面から消した。
 次に周辺課題として提示していた数字が何であったかについて質問する内容を画面に提示し,質問への回答に該当するキーを入力してもらった。その後,画像から喚起される感情価と覚醒度の評価を行ってもらった。評価が終わると再び注視点を提示し,次の試行を行ってもらった。
 練習試行は10試行行った。本試行は80試行行い,そのうち,周辺課題の数字が提示されない試行が10試行あった。また,刺激の提示順序はランダムであった。中心課題のアルファベット,周辺課題の数字および位置もすべてランダムな順序で提示した。
結果と考察
 実験参加者に評定してもらった感情価と覚醒度の値,中心課題の正答率,周辺課題の正答率を刺激ごとにそれぞれ算出し,分析を行った。周辺課題に関しては,中心課題に対する反応が正しかった試行のみを対象に分析を行った。周辺課題の正答率を目的変数,感情価と覚醒度,偏心度を説明変数とした。Step1に感情価と覚醒度,偏心度,Step2に感情価と覚醒度の交互作用項,感情価と偏心度の交互作用項,覚醒度度偏心度の交互作用項,Step3に感情価と覚醒度と偏心度の交互作用項を投入し,階層的重回帰分析を行った。その結果,Step3において感情価と覚醒度と偏心度の交互作用が有意であった(β=-15.21,t=-2.24,p=.028)。下位検定を行った結果,不快で覚醒度が高い場合(+1SD)には,偏心度が高くなるほど周辺課題の正答率が低くなることが示された(図1)。このことから,不快情動において覚醒度が高い場合には有効視野が縮小することが示された。これは野畑・箱田(2008)と同様の結果が得られたと考えられる。
 次に,快で覚醒度が高い場合(+1SD)には,偏心度が高くなるほど周辺課題の正答率が低くなり,覚醒度が低い場合(-1SD)には,偏心度が高くなるほど周辺課題の正答率が高くなることが示された(図2)。
 以上の結果から,情動喚起の感情価にかかわらず覚醒度が高いと有効視野が縮小することが示された。

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