発表

1B-048

視野変換3事態における移動方略とその形成過程

[責任発表者] 佐々木 正晴:1
[連名発表者] 鳥居 修晃:2, [連名発表者] 佐藤 佑介:3
1:弘前学院大学, 2:東京大学, 3:日本大学

問 題
視野を変換する逆さめがねの実験は、Stratton(1896)が“正立視”の問題を提起して視覚系活動の可塑性を問いかけて以来、数多くの知見が積み重ねられている。Kohler(1951)は逆さめがね着用後の適応過程が幼児の発達過程に対応すると述べ、その実験の適用範囲を広げている。他方、苧坂(1982)は、宇宙空間、水中空間、動物空間とともに逆さめがねの実験に言及し、“行動空間の成り立ち”に想いを馳せている。
ここでは、上下反転、左右反転、上下反転+90°回転という 3 事態において同一場所で歩行実験を行い、その移動方略と形成・変換過程を取り出し、行動空間拡大化の最初期過程である身体 - 外界をつなげていく経緯の一端を探る。
方 法
装置 上下反転、左右反転、上下反転+90°回転の 3 種。水平視野 80deg、垂直視野 45deg、重さ 175g。着用者 SASAKI(本報告者)。観察者 TORII、SATO(本報告者)。記録 実験場面は VTR に記録(記録者 KYOKO:乳幼児行動研究所)し、実験後にその行動の状況を取り出す。方針 行動のつまずきを乗り越えるよう心がける。手続 各事態 30 試行程度。上下反転+90°回転、上下反転、左右反転の順で行う。課題 室内に設けられたコース(図 1 中、矢印)を歩く。直進歩行とテーブルと椅子を回る8字歩行の2種からなる。歩行距離約40m。
結 果
所要時間 3 事態における歩行所要時間の推移を図 2 に示した。上下反転+90°回転、左右反転、上下反転の順で歩行時間が短くなる。所要時間が最短である上下反転では最終的に29 秒になり、裸眼での歩行時間は 21 秒であった。
特徴的行動 左右反転事態では、歩く動作に付随する体の動きが原因で、目標点が視野内で浮動したり消えたり、強い嘔吐感に襲われる(図 3 左,灰色円:目標点,輪郭四角:めがね枠)。6 試行目から両手でめがねを押さえ上体を一本棒にし、上体を大きく左右に動かし視野内の目標点の動揺を相殺し、水平軸をつくり、その中心部に目標点が位置するようにする。同時に、四股を踏むように両足を広げてガニ股で進む(「ドスコイ方式」図 3 右:輪郭四角下:顔・上体の動き)。この方式は徐々に顔の動きにとって代わり、最終的に動き自体が消失する。
一方、上下反転+90°回転では、深刻な身体の“二重定位”が生じる。体は前に進んでいる(図 4 左, 矢印:進行方向)。しかし、視野内の足・つま先が真横から現れ(図 4 右, 右下視野図・足つま先)、同時に体が 90°左方向に回転して位置すると知覚(図 4 右, 黒塗身体)され、真横の体が視野内足を目標に向けて操る(図 4:右)。この方式は最後まで消えない。
瞼を閉じると体は本来の元の位置に移動するように感じる。

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