発表

1B-043

隠匿情報検査の質問項目数の違いが生理反応に与える影響

[責任発表者] 藤原 修治:1
[連名発表者] 小林 孝寛:1, [連名発表者] 宮脇 かおり:1, [連名発表者] 渋谷 友祐:2
1:京都府警察本部刑事部科学捜査研究所, 2:鳥取県警察本部刑事部科学捜査研究所

 日本の警察の犯罪捜査では,隠匿情報検査(concealed informaiton test : CIT)によるポリグラフ検査が実施されている。CITは犯罪に直接かかわる内容を持つ質問(裁決項目)と裁決項目と同じカテゴリーに属するが犯罪とは関わりのない複数の質問(非裁決項目)を組み合わせて実施する質問法で,検査では質問に対して生起した裁決‐非裁決項目間の生理反応の反応差(弁別的反応)から質問に対する認識の有無を推定している(詳細は高澤,2009を参照)。
 CITの質問項目数が弁別的反応に与える影響については,明確な結論が得られていない。皮膚電気活動を指標とした実験研究では,非裁決質問の呈示頻度が多くなるほど弁別的反応が大きくなり,裁決項目の検出率が向上するとの報告もあるが(Ben-Shakhar et al., 1975),実務検査において質問項目数と弁別的反応の間にどのような関係があるかは十分に示されていない。
 そこで本研究では,4項目と5項目のCITを実施した実務検査の検査記録を対象に質問項目数が弁別的反応の大きさに与える影響を検証した。
方 法
 調査資料 本検査の質問表に認識があることが確認された実務検査の検査記録80事例253質問表を分析対象とした。このうち,4項目の検査記録は40事例133質問表(男性34名・女性6名,平均年齢33.9歳),5項目の検査記録は40事例120質問表(男性34名・女性6名,平均年齢36.3歳)であった。質問表は全て1つの裁決項目と複数の非裁決項目で構成され,カウンタバランスするため質問項目数と同じセット数を実施した。
 装置と指標 TEAC社製ポリグラフ装置PTH - 347により,呼吸速度(RS),皮膚コンダクタンス反応(SCR),心拍数(HR),規準化脈波容積(NPV)を測定した。
 分析方法 RSについては,返答後15sについてセット内の標準化を行った。SCRについては,刺激呈示0.5s後から返答後2s以内に発現した反応の最大振幅を計測し,対数変換を行った。HR・NPVについては質問呈示後20sを5秒ごとの4つの分析区間に分けた。
裁決−非裁決項目間の反応差を確認するため,裁決項目に対する反応は全セットの値を平均し,非裁決項目に対する反応は各系列内の非裁決項目を平均した後に全セットの値を平均し,裁決・非裁決質問別に1つの値を求めた。さらに,質問表が複数ある事例については全質問表の値を平均し,事例ごとに1つの値を求めた。その上でRS・SCRについては,質問項目数(4項目・5項目)×項目(裁決・非裁決)の2要因分散分析を行い,HR・NPVについては,質問項目数×項目×区間(区間1~4)の3要因分散分析を行った。なお,交互作用の有無に関わらず各質問項目数について項目の下位検定を行った。また,各指標について,質問項目数ごとに裁決−非裁決項目間の差得点の効果量(dD)を算出した。
結 果
 各指標の質問項目数ごとの平均値と裁決−非裁決項目間の効果量をTable1に示した。RS :項目の主効果が認められた。いずれの項目数でも裁決項目の測定値が非裁決項目よりも有意に小さかった(いずれもp < .001)。SCR:項目の主効果が認められた。いずれの項目数でも裁決項目の測定値が非裁決質問よりも有意に大きかった(いずれもp < .001)。HR:項目と区間の交互作用が有意であった(p < .001)。いずれの項目数でも区間2~4において裁決項目の測定値が非裁決項目よりも有意に低かった。また,質問項目数の主効果が認められ,5項目の測定値が4項目よりも有意に高かった(p < .05)。NPV:項目と区間の交互作用が有意であった(p < .01)。4項目では区間1~3,5項目では区間1・2において裁決項目の測定値が非裁決項目よりも有意に低かった。
考 察
 本研究の結果,全ての指標で弁別的反応への質問項目数の影響は有意ではなかった。また,いずれの指標においても質問項目数ごとの裁決−非裁決項目間の効果量の大きさに明らかな差は認められなかった。
引用文献
Ben-Shakhar, G., Lieblich, I., & Kugelmass, S (1975). Detection of information and GSR habituation : an attempt to derive detection efficiency from two habituation curves. Psychophysiology, 12, 283-288.
高澤則美 (2009). ポリグラフ検査‐日本における検査実務と研究の動向 生理心理学と精神生理学, 27, 1-4.

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