発表

1B-040

店舗強盗における犯人特徴の予測

[責任発表者] 大塚 祐輔:1
[連名発表者] 平間 一樹:1, [連名発表者] 横田 賀英子:1, [連名発表者] 和智 妙子:1, [連名発表者] 渡邉 和美:1
1:科学警察研究所

目 的
 店舗強盗は,わが国で発生する強盗事件の約3割を占め,平均年間検挙率(2008年から2012年)は約64%であるとされる(小野,2016)。近年は,認知件数が減少するとともに検挙率が上昇しているが,事件の凶悪性を鑑みると犯人の検挙率をさらに上げることが望ましい。そのためには,犯罪者プロファイリング等の捜査支援を行うことが有用であろう。
わが国において,犯罪者プロファイリングの観点から強盗を研究したものとして,強盗事件の類型化を行ったものや連関規則を用いて犯人特徴の予測を行ったものがある。しかし,店舗強盗に関して,犯行特徴から犯人特徴を確率的に予測することを目的として行われた研究は著者の知る限り存在しない。警察が得ることのできる犯行の特徴から犯人の特徴を推測することができれば捜査にとって有用である。
そこで,本研究においては店舗強盗について犯行特徴から犯人特徴を予測するモデルを構築することを目的とする。
方 法
 日本国内において2014年から2015年に解決した店舗または金融機関を対象とした強盗事件(未遂,事後強盗を含む)のうち,単独犯によって犯行がなされ,犯人特徴および犯行特徴を確認することができた事件に関する情報を使用した(N = 997)。
 分析において,目的変数は,犯人の年齢(37歳(中央値)以上か否か)(37歳以上50.6%),犯行時の車両(自動車・オートバイ)利用の有無(あり32.0%),犯罪経歴の有無(あり69.1%)であった。一方,説明変数は,犯行対象として8変数(デパート・スーパーマーケット,日用品・雑貨店,コンビニエンスストア,食料品店,飲食店,遊技場・娯楽施設,時計・貴金属店,郵便局・金融機関),犯行地の環境として4変数(大通り沿い,鉄道沿い,農漁村,商業地域),犯行特徴として12変数(犯行時間帯昼間,脅迫言動,通報阻止的言動,客を装う,指紋工作,変装,凶器による威嚇,凶器殴打,素手暴力,刃物による傷害,所持品遺留,現金・カード以外強取)を用いた。目的変数および説明変数を2値にコーディングし,該当ありに1,該当なしに0を割り当てた。
 二項ロジスティック回帰分析により,説明変数から目的変数を予測するモデルの構築を行った。本研究では,AIC (Akaike’s information criterion)をモデル選択基準とし,最終的にAICが最も小さかったモデルを最良モデルとして採用した。また,各サンプルの予測確率を算出する際には10重交差検証を行った。最後に,構築されたモデルの有用性を確認するためにROC曲線におけるAUC (area under the ROC curve)を予測確率に基づいて算出した。
結 果
 表に,ロジスティック回帰分析の結果を示した。犯人の年齢が37歳以上である可能性を高める変数として選択されたのは,郵便局・金融機関,鉄道沿い,指紋工作であった。一方,犯人の年齢が37歳未満である可能性を高める変数として選択されたのは,飲食店,農漁村,変装であった。犯人の年齢を予測するモデルのAUCは0.61(p < .001, 95% CI [0.57, 0.64]),判別的中率は0.60であった。
 犯行時の車両利用の有無に関するモデルとして選択された変数は表に示したとおりであるが,特に,Wald検定の結果有意だった変数は以下のとおりである。車両利用ありの可能性を高める変数として選択されたのは,遊技場・娯楽施設,郵便局・金融機関,大通り沿い,農漁村,指紋工作,変装であった。一方,車両利用なしの可能性を高める変数として選択されたのは,鉄道沿い,商業地域,犯行時間帯昼間であった。犯行時の車両利用の有無を予測するモデルのAUCは0.69(p < .001, 95% CI [0.66, 0.73]),判別的中率は0.66であった。
 なお,犯罪経歴の有無については,有用なモデルは構築されなかった。
考 察
犯人の年齢(37歳以上か否か)および犯行時の車両利用を予測するモデルが構築された。モデルのAUCがいずれも0.7未満であったため,これらのモデルを予測のために用いる際には,結果の妥当性に十分な注意を要する。本研究では,主効果のみのモデルを検討したが,今後は交互作用項を加えたモデルを検討するなどしてより予測精度の高いモデルを構築する必要がある。
また,犯罪経歴の有無を予測するモデルについても,用いる説明変数の検討等を行うなどして有用なモデルの構築を目指す必要がある。
引用文献
小野修一 (2016). 店舗強盗 日本犯罪心理学会(編) 犯罪心理学事典 (pp. 156-157) 丸善出版

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