発表

1B-039

東日本大震災後の被災地における犯罪不安ー停電と近隣との結びつきが犯罪不安に与えた影響ー

[責任発表者] 岡本 英生:1
[連名発表者] 森 丈弓:2, [連名発表者] 阿部 恒之:3
1:奈良女子大学, 2:甲南女子大学, 3:東北大学

目 的
 阪神淡路大震災(1995年発生)後の被災地住民に対する調査では,犯罪への不安を感じた被災者がいたことが確認されている(斉藤他,2001)。大規模災害は住民の犯罪への不安感を高めやすいと思われるが,どのような要因が不安感に影響を与えているかは必ずしも明らかでない。東日本大震災(2011年発生)の被災地である宮城県と福島県において実施した調査では,被災者の性別や年齢,そして避難したかどうかといったことが犯罪への不安感の高さと関係していたことが示された(岡本他,2013)。ただし,このような犯罪不安を減少させるうえでどのような要因が有用であるか(たとえば,大きな災害が発生しても,近隣同士の助け合いなどにより不安感はやわらげられると思われる)といったことまでは分かっていない。
そこで,今回は,東日本大震災後の被災者を対象とした調査により,犯罪への不安感に大きな影響を与えると思われる震災後の停電のほかに,近隣との結びつきの強さの要因についても検討する。
方 法
調査協力者:調査協力者は,東日本大震災の被害の大きかった被災地である岩手,宮城,福島,そして茨城県に住む男女2,800人(20歳以上60歳未満。各県の性別・年齢段階ごとの人口に比例配分している)であるが,そのうち震災による転居がなかった2,406人が今回の分析の対象である。
調査内容:大規模災害後に多い犯罪6種類の被害にあうことについての心配の程度(6種それぞれの犯罪被害について震災の直後と現在について4件法(1〜4)での回答を求めた。以下,この犯罪被害6種についての回答の合計を不安感とした)。震災による停電の有無。近隣との結びつきの強さ(近隣は知っている人が多いかどうか)。
調査時期及び方法:2014年9月にWeb調査により実施した。
結 果
 従属変数を不安感,独立変数を「時間」(震災の直後か現在かの参加者内2水準),「停電」(停電の有無の参加者内2水準),そして「近隣との結びつき」(近隣は知っている人が多いかどうかの参加者内2水準)とする3要因分散分析を行った(Figure 1・2)。2次の交互作用は見られなかったが,1次の交互作用が「時間」と「停電」の間(F(1,2402)=7.047, p<.01),「時間」と「近隣との結びつき」の間(F(1,2402)=4.092, p<.05)でそれぞれ見られた。
単純主効果の検定の結果,震災直後よりも現在のほうが不安感が低くなっていることが確認できたが,「停電」については震災直後において停電あり群のほうが停電なし群よりも不安感の得点が高いこと,また「近隣との結びつき」については現在において知っている者が多い群が知っている者が少ない群よりも不安感の得点が低いことが示された。
考 察
 震災直後に高かった犯罪への不安感は時間経過とともに低下していくことがうかがえた。また,震災による停電は,震災直後は犯罪不安を高めるものの,その後は停電がなかった場合と変わらない程度まで低くなることがわかった。
一方,近隣は知っている人が多い場合は,知っている人が少ない場合に比べて震災直後は不安感に差がないが,時間経過による減少の程度が大きくなった。近隣との結びつきの強さが,災害直後ではなく,災害後しばらくしてからの犯罪不安の減少に影響を与えていることがうかがえた。
引用文献
岡本英生他 (2013). 東日本大震災後の犯罪に関する研究(1)—被災者の年齢,性別,そして避難が震災直後の犯罪不安に与えた影響— 日本心理学会第77回大会発表論文集,444.
斉藤豊治他 (2001). 阪神大震災後の犯罪問題 甲南大学総合研究所叢書,63.

本研究は,JSPS科研費 25285025の助成により行われた。

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