発表

1B-037

対人援助職者のポジティブ・ネガティブ職業生活出来事の体験頻度の差―4波からなるパネル調査の結果から―

[責任発表者] 森本 寛訓:1
[連名発表者] 黒田 裕子:1, [連名発表者] 稲田 正文:2
1:川崎医療短期大学, 2:川崎医療福祉大学

目 的
 筆者らは対人援助職者が職場で体験するポジティブ・ネガティブ感情と正の相関関係にあるポジティブ・ネガティブ職業生活出来事(以下「PWLE」「NWLEとする」)に焦点を当てて研究を進めている。PWLE,NWLEのようなイベントの体験頻度については,大学生を対象とした調査結果から,ポジティブイベントのほうをより多く体験するとの報告がある(Gable, Reis, & Elliot, 2000)。本研究では4波からなるパネル調査の結果を用いて,この報告がPWLE,NWLEにも当てはまるか検証することを目的とする。
方 法
 調査時期と手続き 調査は2015年11月から12月までの1ヵ月間にWebを用いて行われた。具体的には,調査会社から調査内容を示したWeb画面が週に1回ずつ4回配信され,そのWeb画面から回答が得られた。なお,調査内容についてはWeb画面の最初で調査対象者に説明し,調査参加への同意を得た。
 調査対象者 調査会社のモニター会員より,所属する職場に1年以上勤務している看護師,介護福祉士,保育士の有資格者が選ばれた。そして,回答内容に著しく偏りのあった者を除く,看護師63人,介護福祉士70人,保育士47人,計180人を本調査の対象者とした。これら対象者の平均年齢(標準偏差)は,看護師が39.444歳(8.800),介護福祉士が39.786歳(8.954),保育士が39.191歳(9.604)であった。性別人数は,看護師が男性9人,女性54人,介護福祉士が男性40人,女性30人,保育士が男性2人,女性45人であった。さらに現職場での平均勤務年数(標準偏差)は,看護師が6.714年(7.163),介護福祉士が6.229年(4.531),保育士が8.894年(8.605)であった。
 調査内容 PWLEとNWLEについて,調査日の前週にあたる1週間の体験頻度を4段階(1:まったくなかった,2:あまりなかった,3:ときどきあった,4:しょっちゅうあった)で評定させた。なお,PWLEとNWLEは筆者らが作成した項目を加筆・修正して用いた。
結果と考察
 調査対象者ごとに4回の調査機会で得た体験頻度の素点をPWLE,NWLEの各項目で合計し,さらに全調査対象者のデータで平均値と95%信頼区間を算出した。算出された平均値と95%信頼区間を項目ごとにプロットしたのがFigure 1である。Figure 1より,NWLE項目と比べてPWLE項目のほうが体験頻度合計点の平均値は高くなる傾向が認められた。
 PWLE項目において体験頻度合計点の平均値が最も低くなった項目はPWLE_14「これまでできなかった仕事ができた。」で,平均値は9,75,95%信頼区間は[9.46 10.04]であった。また,NWLE項目において体験頻度合計点の平均値が最も高くなった項目はNWLE_12「職場スタッフに気をつかった。」で,平均値は10.04,95%信頼区間は[9.74 10.35]であった。両者の95%信頼区間がほぼ重複することから,対人援助職者はNWLEに比べてPWLEをより多く体験する傾向があると推察された。そして今回の結果は,大学生を対象とした先行研究(Gable et al., 2000)を再認するものであった。
引用文献
Gable, S.L., Reis, H.T. & Elliot, A. J. (2000). Behavioral activation and inhibition in everyday life. Journal of Personality and Social Psychology, 78, 1135-1149.

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