発表

1B-035

老人保健施設通所者の認知機能とIADLの関連

[責任発表者] 松永 祐輔:1,2
[連名発表者] 村山 憲男:1, [連名発表者] 寄川 兼太:1, [連名発表者] 伊東 真里#:2, [連名発表者] 鈴木 珠実#:2, [連名発表者] 深瀬 裕子:1, [連名発表者] 田ヶ谷 浩邦#:1
1:北里大学, 2:田名老人保健施設光生

目 的

ADLとは,日常生活における基本的な日常行為のことで, 基本的ADL(BADL)と手段的ADL(IADL)などがある。BADLは日常生活で行っている基本的動作(トイレ動作や歩行など)の能力のことで, 身辺処理と移動能力を中心としている。一方 IADLは, BADLの上位の活動動作(洗濯, 掃除や金銭管理など)のことで, 生活環境における適応的側面を重視している。そのためIADLには, 身体的な要因以外にもMini Mental State Examination(MMSE)や長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で評価される全般的な認知機能の要因が関係する可能性がある。

そこで今回, 老健施設通所者で, BADLの評価尺度であるBarthel Index(BI)の得点が比較的保もたれている利用者において, MMSE, HDS-Rの得点や両検査の下位検査項目の得点とIADL頻度の評価尺度であるFrenchay Activities Index(FAI)の得点の関係を検討した。



方 法

2015年~2016年においてA老人保健施設通所者のなかでMMSE, HDS-R, BI, FAIが実施された32名(女性16名, 男性16名, 平均年齢74.4±10.5歳)を対象とした。IADLは身体機能とBADLに影響するため, 今回のデータ解析はBIの得点が65点以上のデータで解析を行った(今村, 2010)。対象者は要支援・要介護のいずれかに認定され(要支援:1名3.1%, 要介護31名96.9%), 対象者はすべて家族と同居していた。

今回測定されたFAIの得点の中央値7点以上の得点群をHIGH score群, 7点より低い群をLOW score群とし, 性別, 各疾患の有無(中枢神経疾患, 骨関節疾患, 心血管疾患, 呼吸器疾患)でx2検定を行った。また, HIGH score群, LOW score群を従属変数, 年齢, MMSE, HDS-R, 下肢筋力(%BW), MMSE, HDS-Rの下位検査の見当識課題, 記憶課題, 言語課題, MMSE計算課題(Serial 7s), MMSEの命令, 作文, 描画課題の合計点(以下MMSE動作課題とする)それぞれの得点を説明変数として, 対応のないt検定を用いて群間を比較した。さらに, HIGH score群, LOW score群を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析をおこなった。多重ロジスティック回帰分析の独立変数に年齢, 下肢筋力(%BW), さらに, 多重共線性を考慮し, 説明変数にMMSE, HDS-R, 見当識課題, 記憶課題, 言語課題, Serial 7s, MMSE動作課題をそれぞれ加えたmodelで解析を行った。統計解析にはJMP Pro 13を使用し, 有意水準を5%とした。



結 果

x2検定の結果, 年齢, 各疾患の有無で有意な偏りは認められなかった。また, t検定の結果, HIGH score群はLOW score群と比べ, MMSEとserial 7sが有意に高かった(P < .05)。HIGH score群とLOW score群の比較はTable 1に示す。多重ロジスティック回帰分析の結果, serial 7s を加えたmodelにおいてのみ, 年齢と下肢筋力(%BW)で調整しても, serial 7s が独立して有意な関連が認められた(P < .05)。HIGH score群 対 LOW score群のオッズ比(OR)はTable 2に示す。

考 察

BADLの影響を除いた対象群において, Serial 7sの得点がFAIの得点の予測因子になりうることが示唆された。Serial 7sは, 一時的に記憶しながら減算を行うため, 注意やワーキングメモリーなどが関わるとされており, IADLの頻度はこれらの機能と関連することが考えられる。

今後は, 対象人数を増やすとともに, IADLと認知機能を継続的に測定していく。さらに, 今回測定しなかった精神的な側面などの, 認知機能以外の側面がIADLに与える影響についても検討する。



引用文献

今村純平・柴田元(2010). 脳血管障害患者が自宅に退院するために必要な要因 第45回日本理学療法学術大会抄録集

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