発表

1B-034

小学生における無気力感メカニズムの検討‐性別データによる検討‐

[責任発表者] 牧 郁子:1
1:大阪教育大学

目 的
 近年実施された小学生・中学生を対象とした調査結果で,日本の子どもは欧米の子どもよりも抑うつ得点が高いことが報告されている(傳田,2004)。こうしたことからも,子どもの抑うつは,現代の心理学において看過できない重要課題となっているといえる。こうした抑うつの予防としては,その前段階としての「無気力感」に着目し,発達段階によるメカニズムを明確化した上で,そのメカニズムに沿って介入することが有用と考える。これまで中学生における無気力感は,牧ら(2007)や牧(2011)によって,随伴性認知,コーピング・エフィカシー,思考の偏りといった変数から構成されることが確認されている。中学生は具体的操作期から形式的操作期への移行時期にあたり,行動と結果の随伴性判断がより現実的になる思春期(鎌原・樋口,1987; Weisz & Stipek,1982)であり,認知システムが劇的に変化する時期(中村,2014)でもある。一方思春期前の小学生は,発達的に認知システムが十分成長していないことが予想され,中学生における無気力感のメカニズムとは違う可能性が考えられる。以上から牧(2016a)は,児童期の認知情動発達を鑑み,中学生における無気力感の構成要因と示唆されている随伴経験,非随伴経験,コーピング・エフィカシー,思考の偏りに,保護者との情動交流といった変数を加え,小学校4年生から6年生を対象に調査を行い,無気力感モデルを検討した。そこで本研究では,児童期の無気力感をより詳細に考察するため,小学生の無気力感における性差の検討を目的とした。
方 法
 【調査協力者】
大阪府・滋賀県の小学生4年生~6年生1556名を対象に,調査を行い,分析可能な1534名(男子=802名,女子=732名;4年生= 502名,5年生=533名,6年生=499名;平均年齢10.84歳,SD= 0.89)を対象に検討を行った。
【調査用紙】
児童用・情動交流尺度 (牧,2016b)・児童用・随伴経験尺度(牧,2015)・児童用・コーピング・エフィカシー尺度(牧,2015)・児童用・思考の偏り尺度(牧,2015),および小学生用の無気力感尺度(笠井ら,1995)を無記名式で実施した。なお本調査は,各協力校の管理職に調査内容の事前説明を行い,各調査項目チェックを受けた上で実施した。
結 果 と 考 察
 まず各指標における平均値の違いを,性(男・女)×学年(4年・5年・6年)の2要因分散分析で検討したところ,いずれの指標も交互作用は認められなかった。一方有意な性の主効果が認められ,ポジティブ情動の送受信・ネガティブ情動の子ども送信・ネガティブ情動の保護者受信,随伴経験,コーピング・エフィカシーにおいて,有意に女子の得点が高い結果となった。一方,非随伴経験,思考の偏り,無気力感では,有意に男子の得点が高い結果となった。続いて,無気力感のメカニズムの性差を検討するため,牧(2016a)による小学生の無気力感モデルを参考に,性別の無気力感構造をパス解析にて検討した(Fig.1,2)。

その結果,男女とも概ね全体データによる構造(牧,2016a)と同様であったが,男子にのみネガティブ情動の保護者受信から思考の偏りへの有意な負のパスが認められ,女子のみポジティブ情動の送受信から無気力感への有意な負のパスが認められた。以上から,小学生における無気力感は女子より男子の方が高く,その背景には,保護者への情動送信や保護者に情動受信される経験が女子より少ないこと,その影響が,対処行動への自信・随伴経験の認知の低減や,悲観的な考え・非随伴経験の認知の増加につながった可能性が示唆された。

※本研究は日本学術振興会・科学研究費・基盤研究(C)「小学生における無気力感メカニズムと教師介入プログラムの検討」(課題番号25380927)の助成を受けて実施された。

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