発表

1B-032

大学生における疲労感と対処行動及び学校適応感の関連

[責任発表者] 片平 千智:1
1:九州大学

目 的
近年,日本の大学進学率は高くなっているが,学生の中には心身のバランスを崩し休学・退学する者もおり,学生に心身の自己管理を促し,学校適応感が高まるよう支援することは急務である。渡辺ら(2008)は,疲労・倦怠感は,私たちが日常的に経験している感覚であり,身体の恒常性の乱れを知らせる重要なアラ-ム信号の一つであると述べており, 疲労感は日常的に経験している感覚である。よって,本研究では自己管理を促すための指標として疲労感を取り上げる。疲労感の詳細な捉え方を扱った先行研究は見当たらないが,疲労感を含む身体感覚に関する先行研究からは,身体感覚を感じ取り(身体感覚の覚知),身体感覚に沿って休養などの対処行動をとる必要性を意識化し(休養の必要性の認知),身体感覚を自身のありのままの感覚として尊重し(身体感覚への尊重感),対処行動をとる,という過程があり,それら全てがうまく機能して初めて身体・精神的健康に寄与すると考えられる。
よって,本研究では,疲労感を覚知することが休養の必要性を認知することに影響を与え,休養に必要性を認知することが疲労感への尊重感を持つことを介して疲労感への対処行動に影響を与え,疲労感への対処行動が学校適応感に影響するとしたモデルについて検討する。モデルの検証を通して,大学生に対し疲労感の適切な捉え方と対処方略を提起し学校適応感を高めるような知見を得ることを目的とする。
方 法
予備調査 
疲労時の対処行動を大学生20名に対し自由記述で尋ね,回答を基に疲労感への対処行動尺度(27項目)を作成した。
 本調査 
1.調査時期・対象者・手続き 
質問紙調査を大学1年生に対し2012年11~12月,2014年12月に実施した。有効回答数は257名(男性103名,女性154名)であった。大学の講義の時間を利用して行った。
2.調査内容
(1)「疲労の多次元測定尺度」 山本ら(2009)の疲労の多次元測定尺度(身体面,精神面,認知面,対人面の4因子40項目)の各因子から5項目ずつ抜粋した20項目に対し,各疲労の症状について,自分が疲れている状態であることをどれくらい感じるか(疲労感の覚知),休養の必要をどれくらい感じるか(休養の必要性の認知)を7件法で尋ねた。
(2)「疲労感への対処行動尺度」  7件法で尋ねた。
(3)「疲労感への尊重感を尋ねる項目」 井上(2011)の「身体感覚への態度尺度」の第2因子である「身体感覚への尊重感」因子の項目の中で,身体感覚に関する部分の表現を“疲れたときの感じ”という表現に変えて質問可能な項目を抜粋し,表現を変えて使用した。7件法で尋ねた。
(4)「学校適応感尺度」 大久保(2005)の学校適応感尺度(居心地の良さ,課題・目的の存在,被信頼感受容感,劣等感のなさの4因子30項目)に対し5件法で尋ねた。
(5)フェイスシ-ト 性別,年齢,学年・学部・学科を尋ねた。
結 果
 疲労の多次元測定尺度,疲労感への対処行動尺度について因子分析を行った。疲労感への対処行動尺度は気分転換,他者への気遣い,一人の時間作りと休養の3因子が抽出された。 
疲労感を覚知することが休養の必要性を認知することに影響を与え,休養に必要性を認知することが疲労感への尊重感を持つことを介して疲労感への対処行動に影響を与え,疲労感への対処行動が学校適応感に影響するという仮説に基づき共分散構造分析を行った(Figure 1)。最終的に以下のモデルが採択され,仮説の一部を支持する結果となった。
考 察
 疲労感を覚知することや,休養の必要性を認知することは,疲労感への尊重感を持つことや対処行動,学校適応感に影響しないことが示された。これは,そのような感覚の意識化の程度は状況により左右されるためだと考えられた。一方,疲労感への尊重感を持つことで,気分転換や自分の時間作り等の対処行動に繋がり,学校適応感が高まることが示唆された。
引用文献
井上 久美子(2011).青年期における身体感覚への態度と「悩む」こととの関連 心理臨床学研究,29(5),574-585.
大久保 智生(2005).青年の学校への適応感とその規定要因-青年用適応感尺度の作成と学校別の検討- 教育心理学研究,53(3),307-319.
渡辺 恭良・田中 雅彰・水野 敬(2008).疲労の脳内機序 精神医学,50,527-532.
山本 唱子・中塚 晶子・吉村 裕之(2009).新たな多次元測定尺度による中年有職者の疲労の評価:疲労感と自己効力感の関連性 日本看護科学学会誌,29(4),23-31.

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