発表

1B-030

一般学童における対人応答性尺度(SRS)と子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)の正準相関

[責任発表者] 市川 寛子:1
[連名発表者] 岡田 真人#:2,3, [連名発表者] 山口 真美:4, [連名発表者] 金沢 創:5, [連名発表者] 神尾 陽子#:6
1:東京理科大学, 2:東京大学, 3:理化学研究所, 4:中央大学, 5:日本女子大学, 6:国立精神・神経医療研究センター

目 的
 自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)の症状は,自閉症者と定型発達者とを端点とする連続体として広く分布する。ASDのある子どもには情緒や行動の問題が併存することは多くの臨床報告がなされているが,一般の学童においてもASD症状を強く持つ子どもには同様に情緒や行動の問題がみられることが報告されている。
近年の大規模サンプルを対象とした研究では、ASD症状の程度を対人応答性尺度(SRS:Social Responsiveness Scale, Constantino et al., 2003)、そして子どもの情緒や行動など全般的な精神症状を子どもの強さと困難さアンケート(SDQ:Strengths and Difficulties Questionnaire, Goodman, 1997)といった定量化しうる尺度で測定し症状の間の関連が調べられている。ASD児を対象としたRatcliffeら(2015)の先行研究では両尺度得点の間に有意な相関がみられた。
本研究では,SRSおよびSDQの下位尺度、また子どもの性や評定者がどの程度、両尺度得点の相関関係に寄与するかを明らかにすることを目的として、神尾らが2010年に本邦小中学生を対象に行った大規模な質問紙調査結果を2次利用し、正準相関解析を用いて検討した。

デ ー タ 解 析
 対象:国立精神・神経医療研究センターの神尾らが全国の通常学級に在籍する小・中学生(6-15才)のべ32,779人のうち、年齢,性別,SRSとSDQの項目への回答に欠損のない教師評定による6,955名分の回答,および保護者評定による21,623名分の回答を解析対象とした。
 質問紙:対人応答性尺度(SRS)(65項目)の日本語版(神尾ら, 2009),および,子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)(25項目)の日本語版(http://www.sdqinfo.com/)。SRSは,対人的気づき(図1内,AWE。以下同様),対人認知(COG),対人コミュニケーション(COM),対人的動機づけ(MOT),自閉症的常同症(MAN)という5つの下位尺度から構成される。SDQは,情緒的困難さ(ES),行為困難さ(CP),多動・不注意(H),仲間関係(PP),向社会性(PB)という5つの下位尺度から構成される。
解析手法: 本研究では正準相関解析を行い,変数群同士の相関を最大にするときの,変数にかける重みベクトル(第一正準係数),その時の相関係数(第一正準相関)を得た。

結 果
図1に示すように、SRSとSDQの各下位尺度別の第一正準係数の大きさは、評定者,被評定者の性別によらず類似していた。これは,SRS得点とSDQ得点の相関関係を支持する下位尺度が,評定者によらず類似していることを示唆する。評定者別,子どもの性別の第一正準相関係数を表1に示す。性に関係なく教師評定において保護者評定よりも第一正準相関の値が高かった。

考 察
 SRSの「対人コミュニケーション(COM)」「自閉症的常同症(MAN)」,SDQの「情緒的困難さ(ES)」「多動・不注意(H)」「仲間関係(PP)」の下位尺度が,SRSとSDQの相関を高めたことが示唆された。またこの関連は子どもの性や評定者に関係なく共通して見出された。ここで挙がった下位尺度同士は何らかの要因でオーバーラップしやすく,その結果,自閉症尺度と全般的精神病理尺度の相関が高まる可能性が示唆される。
ただし、教師評定では子どもの性にかかわらず保護者評定よりもこれらの関連が強く見られたことから,これらの質問紙を用いる際には、観察場面の違いや評定者の違いを考慮する必要があることが示唆される。

引用文献
Constantino, J. N., et al. (2003). JADD, 33, 427–433.
Goodman, R. (1997). JCPP, 38, 581–586.
神尾 (2011).厚労科研 平成20年度~平成22年度 総括・分担研究報告書.
神尾ら (2009). 精神医学, 51, 1101–1109.
Ratcliffe et al. (2015) JADD, 45, 2487–2496.

詳細検索