発表

1B-029

子どもの貧困問題に関するスクールカウンセラーの認識 -学校教員との比較による検討-

[責任発表者] 吉住 隆弘:1
1:中部大学

目 的
 わが国では,近年,子どもの貧困問題に社会的関心が集まっている。国はこの状況を鑑み2013年に子どもの貧困対策法を定め,特に学校を貧困対策のプラットフォームとし,包括的な支援を行なうとした。大綱では,スクールソーシャルワーカー(以下SSW)の学校配置が注目されているが,学校現場で働くスクールカウンセラー(以下SC)にとっても無縁な問題ではない。実際,同大綱では,SCを貧困家庭の多い学校へ重点的に配置することが明記されており,今後,その支援と関わるSCが増えてくることが予想される。教育と福祉の連携の難しさが指摘される中,SCが実行性のある支援を行うためには,まずはSCの子どもの貧困問題に対する認識と実際の支援の経験について,その実情を調査する必要があると考えた。そこで本研究では,生活困窮世帯が抱える問題,および支援の問題に対して,学校現場で働くSCがどのような認識を持っているか,学校教員と比較することとした。加えてこれまで実施した支援の経験についても調査した。

方 法
調査方法および調査対象者
 A県内の小学校,中学校,高校に勤務するスクールカウンセラー47名(平均年齢40.4歳)を調査対象とした。また同じくA県内の小学校,中学校,高校に勤務している教員82名 (小学校33名,中学校17名,高校27名,平均年齢46.2歳) にも調査を実施した。
調査項目
 SCおよび教員に,子どもが抱える問題17項目(忘れ物が多い等),保護者が抱える問題15項目(連絡がとれない等),支援の問題(何を支援していいのか分からない等)を4件法で尋ねた。またSCに対しては,学校で実施した支援の経験13項目(子どものカウンセリングを行なった等)についてその有無を2件法で尋ねた。

結 果
尺度の検討
 子どもが抱える問題,保護者が抱える問題,支援の問題の各尺度について因子分析を行った。子どもが抱える問題は3因子が抽出され,学校場面での問題,心理社会的問題,日常生活上の問題となった。保護者が抱える問題は3因子が抽出され,養育の問題,心理社会的問題,学校との関係性の問題となった。支援の課題は2因子が抽出され,連携の問題,支援方法の問題となった。
スクールカウンセラーと教員の認識の違い
 各尺度の平均値および標準偏差を表に示した。SCと教員の認識の違いを検討するためにt検定を実施したところ,子どもが抱える問題については,どの下位尺度においても有意差は認められなかった。次に保護者が抱える問題についてt検定を実施したところ,心理社会的問題の認識に違いがみられ (t(127) = 2.86, p<.01),SCは教員よりもこの問題を認識していた。さらに支援の課題に関してt検定を実施したところ,連携における問題の認識に違いがみられ (t(127) = 1.98, p<.05),SCは教員よりもこの問題を認識していた。
学校で実施した支援の経験
 実施経験の有無に従ってその人数と割合を表に示した。

考 察
SCは,学校教員よりも,保護者の心理社会的問題をより認識しており,生活困窮世帯が抱える問題に対して,幅広い視点からアセスメントしている可能性が明らかとなった。またSCは,連携の問題をより認識していたが,これは他機関との連携による支援を教員よりも意識している結果かもしれない。実際の支援の経験に関しては,6割から9割のSCがカウンセリングやコンサルテーションを通して,生活困窮世帯の問題と関わった経験を持つことが明らかとなった。一方で,他機関との連携は3割程度に留まった。生活困窮世帯の支援においては,他機関連携が重要視されており,SC業務においてその支援パラダイムを確立することが今後の課題と考えられた。

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