発表

1B-028

バーチャルセラピストと人間セラピストとの精神疾患評価における差

[責任発表者] 横谷 謙次:1
[連名発表者] 高木 源#:2, [連名発表者] 若島 孔文:2
1:新潟青陵大学, 2:東北大学

目 的
 バーチャル技術は臨床心理学にも応用されており、飛行機恐怖症者への暴露療法でも用いられている(Rothbaum et al., 2000)。また、バーチャルセラピストも作られており、失語症者への言語指導(van Vuuren et al., 2014)や健常者への抑うつ評価が行われている(Pontier et al., 2008)。バーチャルセラピストは人間と比べて、ラポートを構築し難いと報告されているが(Gratch et al., 2007)、精神疾患の評価が専門家とどのように異なるのかについては検討されていない。
 本研究では、バーチャルセラピストと人間セラピストの精神疾患構造化面接を比較し、そこでのラポート構築及び精神疾患評価がどのように異なるのかを検討する。
方 法
 研究協力者:A国立大学に通学する大学生・大学院生で20歳以上の日本語話者。29名が参加。女性13名、男性16名。平均23.7(S.D.3.21)才。
バーチャルセラピストの機材:音声認識にJulius-4.4.2を使用。音声合成にCeVIO Creative Studioのさとうさららを使用。シナリオ展開にJokerScriptを使用。開発環境はUnity5.3を使用。メモリ増設(16GB)のノートパソコン使用。
バーチャルセラピストの面接条件:パソコンのモニター画面でマイクを通して会話する。M.I.N.I.5.0—精神疾患簡易構造化面接法を実施。
人間セラピストの面接条件:対面で精神鑑定の経験のある臨床心理士と会話する。Structured Clinical Interview for DSM- 4を実施。
課題:研究協力者はバーチャルセラピストと人間セラピストの両方の面接を体験した後に、ラポートの5件法の質問紙(柿井, 1997)を記入した。なお、バーチャルセラピストと人間セラピストの順番は無作為化された。
結 果
 バーチャルセラピストは人間セラピストに比べて有意にラポートを構築し難かった。(平均2.33[S.D. 0.57] v.s. 平均4.17[S.D. 0.50], t = 13.18, p < .001)
 また、人間セラピストが見つけている大うつエピソード、軽そうエピソード、社会恐怖、パニック発作の多くをバーチャルセラピストは見つけられていなかった(表1のFN)。
 一方、アルコールの依存と乱用の症状については、バーチャルセラピストは人間と同程度に見つけていた(精度0.66、再生率1.0、F値0.8)。
考 察
バーチャルセラピストは人間セラピストのようにラポートを構築できていなかったため、研究協力者は自身の否定的な側面(抑うつ気分や不安)を言いにくい可能性が考えられる。一方、アルコールでは専門家と同程度の水準に達していた。
表1.バーチャルセラピストの精神疾患評価
TPFPFNTN
気分障害現在の大うつEp00029
過去の大うつEp00722
現在のメランコリー型大うつEp00029
現在気分変調01325
生涯軽そうEp10424
生涯そうEp00029
不安障害生涯パニック00128
現在パニック00029
生涯広場恐怖10127
現在社会恐怖00326
現在強迫性障害00029
現在PTSD00029
アル現在依存あり42023
現在乱用あり42023
摂食現在無食欲症01028
現在過食症00128
注:Epはエピソードの略。アルはアルコールの略。TP,FP,FN,TNはそれぞれTrue Positive, False Positive, False Negative, True Negativeの略
引用文献
Gratch, J., Wang, N., Gerten, J., Fast, E., & Duffy, R. (2007, September). Creating rapport with virtual agents. In International Workshop on Intelligent Virtual Agents (pp. 125-138). Springer Berlin Heidelberg.
柿井俊昭. (1997). 双方向型 TV を用いたマルチメディア・カウンセリングの基礎的研究. 心理学研究, 68(1), 9-16.
Pontier, M., & Siddiqui, G. (2008). A virtual therapist that responds empathically to your answers. In Intelligent Virtual Agents (pp. 417-425). Springer Berlin/Heidelberg.
Rothbaum, Barbara Olasov, Larry Hodges, Samantha Smith, Jeong Hwan Lee, and Larry Price. "A controlled study of virtual reality exposure therapy for the fear of flying." Journal of consulting and Clinical Psychology 68, no. 6 (2000): 1020-1026.
van Vuuren, S., & Cherney, L. R. (2014, August). A virtual therapist for speech and language therapy. In International Conference on Intelligent Virtual Agents (pp. 438-448). Springer International Publishing.

詳細検索