発表

1B-021

シャイネスと自己呈示規範内在化における性差およびその関係性に関する研究

[責任発表者] 原田 卓也:1
[連名発表者] 岩淵 千明:2
1:永和会, 2:川崎医療福祉大学

目 的
 日本人の若者は欧米人より「シャイネス」経験が高いとされている。後藤(2004)によれば,日本人の90%以上が自分を「シャイ」だと感じた経験があり,75%がシャイな自分は問題と考えているとZimbardo(1977)が報告している。
Zimbardo,P.G,Pilkonis,P.A.,& Norwood,R.M.(1974)は,シャイネスは人を謙虚に見せるなどの一定の長所はあるが基本的には克服すべきものであると問題点を指摘している。一方で,藤井・澤海・相川(2015)は,潜在的なシャイネスには主観的幸福感と関係性があることが認められ,容易に不適応的だと結論づけることはできないことを指摘している。このようなシャイネスを理解するためには,自己呈示の視点が有用であるとしている。
自己呈示には,社会的な規範も存在し,自分の有能さを積極的に売り込む場合と謙虚に振舞う場合の2つに大別されている(久保,1998)。さらに,自己呈示の社会的な規範には文化による違いも存在し,日本文化は「恥の文化」ともいわれる。吉田・浦(2003)は,日本文化には自己卑下呈示を望ましいとする文化的な自己呈示規範が存在するとしている。
 これらのことから本研究は,シャイネスと自己呈示規範の内在化との関係性に注目して検討していくことを目的とする。

方 法
調査協力者 K大学の在学生286名(男性106名,女性186名)を分析対象とした。
調査方法 大学の講義時間中に,質問紙の配布と回収をおこなった。
調査時期 2016年7月から8月にかけて実施した。
質問紙構成 1.シャイネス:菅原(1998)が作成したシャイネス尺度を用いた。この尺度は,対人不安傾向(9項目),対人消極傾向(8項目)の2因子で合計17項目から構成されている。「全く当てはまらない」1点から「よく当てはまる」5点の5件法である。本研究では,この尺度の合計点をシャイネス得点とした。 2.自己呈示規範内在化:吉田・浦(2003)が作成した自己呈示規範内在化尺度を用いた。この尺度は,自己卑下呈示内在化(11項目),自己高揚呈示内在化(11項目)の2因子で合計22項目で構成されている。「全く望ましくない」1点から「非常に望ましい」5点の5件法である。

結 果
 尺度の信頼性 各尺度についてそれぞれが2因子が存在することを確認するために,確証的因子分析(主因子法,プロマックス回転)をおこなった。その結果,全ての尺度において2つの因子を確認できた。次に,各項目の回答分布に極端な偏りがないことを確認した後,Cronbachのα係数を算出した。その結果,α係数の若干低い項目がみられたが,解釈上の留意が必要であることを確認し,以下の分析をおこなった。

 シャイネスと自己呈示規範内在化における性差 t検定の結果,シャイネス尺度(t(284)=-2.86, p<0.1)と対人不安傾向(t(284)=-3.32, p<.001)は女性の方が男性よりも高いという結果となった。自己呈示規範の内在化には有意な差異は認められなかった。

 変数間の相関関係 先行研究では,シャイネスと性差についての見解が一致していない。このことから,男女別に相関関係数(ピアソンの積率相関係数)を算出した(表2;左下が女性,右上が男性)。その結果,自己卑下呈示内在化は,男性のみでシャイネス得点と対人不安傾向と有意な正の相関が認められた。自己高揚呈示内在化は,女性のみで対人消極傾向と自己卑下呈示内在化と有意な負の相関が認められた。そして,男女ともに対人不安傾向と自己高揚呈示内在化の間に正の相関,対人消極傾向の間に負の相関が認められた。

考 察
 シャイな人物でも,対人不安傾向が高い者の場合は自己高揚呈示を望ましいと考え,対人消極傾向の高い者の場合は自己卑下呈示を望ましいと考えることが明らかになった。
女性の場合であれば,対人消極傾向が強い人は自己卑下呈示を望ましいとはしていなかった。このことは,対人関係に対して関心のない者は,顔色を窺ってまで他者から評価を得ようとする動機が薄いことが考えられる。
男性の場合は,対人不安傾向が強い人は自己卑下呈示を望ましいとしていた。つまり,男性は集団の中で適応していく中で生まれる周囲から拒絶されることへの不安に,自己を卑下して呈示することで対処しようとしていると考えられる。

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