発表

1B-020

2種類の被透視感を測定する尺度の作成

[責任発表者] 福永 健吾:1
[連名発表者] 橋本 剛:1
1:静岡大学

目的
 対人場面では, 相手との関係性や話の流れによっては, 知られたくないことや逆に言わなくても分かってもらいたいことがある。それらが相手に読み取られているという感覚を, 太幡 (2006) は被透視感としている。被透視感は下位概念として気づかれたくない事柄に対する懸念的被透視感と, 気づいてほしい事柄に対する期待的被透視感とに分類される (太幡・吉田, 2008)。本研究では, 被透視感の定義を「相手との相互作用の中で, 相手に直接伝えていないのに自己の内面が伝わっているかもしれないと感じ, それに対してポジティブ, もしくはネガティブな感情が生起する過程」とする。そしてこの定義に基づき, 被透視感を感じた際にその理由を相手に伝わったと解釈する傾向を測定する, 被透視感尺度を作成することを目的とする。

方法
 調査は静岡の大学に通う大学生を対象とした。協力者は計204名であったが, 最終的に分析対象者は189名 (男性80名, 女性109名), 平均年齢19.60歳 (SD =1.47) であった。
質問紙は以下で構成された。1.フェイス項目 (年齢・性別など)。 2.被透視感尺度:予備調査から作成した28項目。「日常生活であなたが他者と話している際に, 自分の考えや気持ちを伝えていないのに, それが伝わっているかのような反応を相手が示すことがあるかもしれません。以下に挙げるそのような場面で, 相手がそのような反応をしたときに, あなたはその理由をどのように解釈するでしょうか。」と教示した後, 1 (自分の考えや気持ちが何も伝わらずに偶然そうしたと思う) ~5 (自分の考えや気持ちが非常に伝わったからだと思う) の5件法で回答を求めた。3.自意識尺度 (菅原, 1984)。 4.つうかあ尺度 (栗林, 2003) の「察知」:親しい仲にある相手に対して自身の意図を察知してもらう傾向を測定した。5.自我漏洩感状況尺度 (佐々木・丹野, 2004) の「苦手な相手状況」と「赤面・動揺状況」:被透視感 (特に懸念的被透視感) の類似概念とされる自我漏洩感の体験頻度を測定した。6.特性シャイネス尺度 (相川, 1991)。7.自己隠蔽尺度 (河野, 2000)。8.ENDCOREs (藤本・大坊, 2007) の「自己統制」と「関係調整」。

結果
 被透視感尺度に対して探索的因子分析 (最尤法, プロマックス回転) を行った結果, 2因子が妥当だと判断した。再度2因子を想定した因子分析を行い, いずれの因子にも.40以上の負荷量を持たない項目を削除していった結果, 12項目が基準を満たした。第1因子は「普段直接は言わない相手への感謝の気持ちを心の中で感じているときに, 相手が優しい言葉をかけてくれた」などの項目が高い因子負荷量を示しており, 相手に対して伝わってほしい, 伝わってもよいという被透視感であると言える。そのため, この因子を「期待的被透視感」因子と命名した。続いて第2因子は, 「仕事や勉強をさぼるために嘘をついたときに, 相手が疑っているような反応をした」といった項目が高い負荷量を示していた。これらは伝わってほしくないと感じている際の被透視感であると解釈され, この因子を「懸念的被透視感」の因子と命名した。この2つの因子は先行研究における伝わってほしいか, 伝わってほしくないかという被透視感の分類と一致しているため, それに倣い因子名を命名した。以上のような結果を踏まえ, 被透視感尺度の下位尺度を構成し当該項目の合計を尺度得点とした。期待的被透視感は5項目 (α=.75), 懸念的被透視感は7項目 (α=.73) で構成された。
基準関連妥当性を検討するため, 被透視感尺度と各尺度得点との相関を求めた。懸念的被透視感は, 私的自己意識 (r=.32, p<.001), 公的自己意識 (r=.20, p<.01), 自己隠蔽 (r=.18, p<.05) とそれぞれ正の相関がみられた。私的自己意識, 自己隠蔽との相関は先行研究から想定されるものであった。また, 被透視感の類似概念である自我漏洩感とは苦手な相手状況 (r=.33, p<.001) と赤面・動揺状況 (r=.30, p<.001) の双方で弱い正の相関がみられたため, 弁別的妥当性が確認された。その一方でシャイネスと正の相関, 自己統制と負の相関が先行研究より想定されていたが, それらは有意でなかった。
期待的被透視感では, 公的自己意識 (r=.18, p<.05), つうかあ尺度の察知 (r=.26, p<.001), 自我漏洩感の苦手な相手状況 (r=.27, p<.001) と赤面・動揺状況 (r=.25, p<.001) とで正の相関がみられた。期待的被透視感と公的自己意識, つうかあ尺度の察知とは想定通り正の相関がみられた。期待的被透視感と関係調整との間には正の相関が想定されたが, 有意ではなかった。

考察
 本研究の結果から, 被透視感尺度は2因子構造をとり, 太幡・吉田 (2008) における被透視感を感じる事柄が気づいてほしいか, 気づいてほしくないかという分類を支持するものであることが確認された。結果より, 被透視感尺度はある程度の信頼性と妥当性を有すると考えられる。しかしその一方で, 因子分析で多くの項目が除外されてしまったことや, 期待的被透視感尺度については分布が偏っていたことなどから, 概念の網羅性といった内容的妥当性の観点で本研究の被透視感尺度には課題もあると考えられる。今後は被透視感尺度を用いて, 対人コミュニケーションにおける隠し事や伝えずにいることがある際の表面化されない情報伝達のメカニズムを解明していくとともに, 尺度項目をより洗練していくことが必要であろう。

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