発表

1B-017

反個人主義と権威主義的態度

[責任発表者] 山岡 重行:1
1:聖徳大学

目 的
 異質なものに対する否定的反応は集団主義の文脈で議論されてきたが、山岡(2015)は、「主観的に多くの人々と異質だと判断できる反応に対する嫌悪感」を、集団主義とは異なる概念である「反個人主義(anti¬¬-individualism)」として定義し、その個人差の測度である反個人主義尺度を作成している。反個人主義尺度の信頼性係数はα=.834、Yamaguchi,Kuhlman, Sugimori(1995)の改訂版集団主義尺度との相関係数はr=.157である。山岡は反個人主義傾向が高いほど、社会規範や集団規範からの逸脱と見なした言動をとる他者を「痛い人」と見なす傾向が強くなること(山岡,2015a)、また自分とは異質だと思う服装のイメージ評定が否定的になること(山岡,2015b)を報告している。
 反個人主義者はなぜ多くの人々と異質だと思う反応を嫌悪するのだろうか。現代社会では基本的人権や文化的多様性を否定することは正しくない態度である。異質な他者を非難すると加害者と見なされ社会的に非難される危険性がある。従って、何らかの社会的権威を利用し、自身の反個人主義を正当化することが必要になると考えられる。本研究の仮説は、反個人主義者は権威主義的な態度が強い、である。本研究はこの仮説の妥当性の検討を目的とする。

方 法
 調査対象者 通信教育部生を含む首都圏私立大学3校の大学生と通信教育部生が職場で収集した社会人合計709名(男性176名、女性523名)。平均年齢は27.41歳(SD=13.663)。
 権威主義的態度尺度の作成 Adorno et al.(1950)の権威主義尺度(Fスケール)の古風な言い回しを現代の表現に合わせるアレンジを加えたものを元にした。また、マスコミ等で見られる権威主義的な言説を参考に新しい項目も作成し、合計21項目の尺度とした。回答方法は、「1:当てはまらない~5:あてはまる」の5件法である。
手続 調査対象者に反個人主義尺度(山岡,2015)と新たに作成した権威主義的態度尺度を配布し、回答を求めた。大学生は通常の授業時間の一部を利用して調査を実施した。通信教育部の学生に関してはスクーリング期間の授業時間を利用した。

結 果 と 考 察
権威主義尺度の21項目に主因子法プロマックス回転の因子分析を行った。その結果、固有値1.00以上の因子が4因子抽出された。第1因子は「若者に必要なのは厳しい規律であり、自分を犠牲にしてでも社会のために働こうという強い意志である」、「非道徳的で精神のゆがんだ意志の弱い人々を何とかすることができれば現代の社会問題はほとんど解決できるだろう」、「我が国の名誉に対する侮辱はどのようなものでも見過ごしてはならない」などの9項目に負荷量が高かった。これらは社会の権威に対する服従を強制する態度を反映したものと解釈できる。この9項目の信頼性係数はα=.798である。この9項目の平均を「権威の強制得点」とした。第2因子は「権威を守り権威に従うことが、社会の秩序を維持することになる」、「個人の権利を制限しても、社会全体の利益や幸福を優先させるべきだ」、「多くの人が認めている権威は、社会的に価値があるものなので従うべきだ」の3項目に負荷量が高かった。これは社会の権威を尊重する態度を反映したものと解釈できる。この3項目の信頼性係数はα=.679である。この3項目の平均を「権威の尊重得点」とした。第3因子は「日本の文化や伝統を守り続けなければならない」、「歴史と伝統のあるすばらしい国に生まれてきたことを我々は感謝するべきだ」、「日本人は我が国の自然や文化や歴史にもっと畏敬の念を抱くべきだ」の3項目に負荷量が高かった。これらの項目は日本の伝統や文化を尊重する態度を反映したものと解釈できる。この3項目の信頼性係数はα=.682である。この3項目の平均を「日本の尊重得点」とした。第4因子は「礼儀やマナーをわきまえない人は社会人として失格である」、「本当に重要なことは苦しい思いをしないと学ぶことができない」、「人々が社会規範に従い正しく生活しよく働くならば、暮らしが良くなるだろう」、「この国が必要としているのは国民に支持された勇敢で精力的な指導者である」の4項目に負荷量が高かった。これらの項目は社会規範遵守の態度を反映したものと解釈できる。この4項目の信頼性係数はα=.581である。この4項目の平均を「社会規範遵守得点」とした。なお、1項目は負荷量があまり高くなかったために、もう1項目は2つの因子に同程度に負荷量が高かったために分析から除外した。
この権威主義的態度尺度の4つの下位尺度を本研究の従属変数とした。反個人主義尺度の平均点で調査対象者を二分し反個人主義高群と低群とし、本研究の独立変数とした。4つの下位尺度にt検定を行ったところ、いずれにおいても反個人主義高群が低群よりも高得点であることを示す有意差が認められた。これは本研究の仮説を支持する結果である。
人間は他者との一致や合意を自分の妥当性の証明と考える傾向(合意的妥当化)がある。従って、自分たちと異質な反応をする他者の存在は、妥当性の自己認識に対する脅威となる。しかし妥当性の認識を脅かし不安を喚起されたとしても、それは認知者側の問題であり異質な他者がそのことを意図したわけではない。異質だというだけで他者を嫌悪することは、いじめ等の加害と見なされてしまう。そのために反個人主義者は社会的権威を尊重し、権威の側に立つことで自己正当化を行うのである。つまり、反個人主義者にとって自分たちが受容している権威を認めようとしない者は、権威により維持されている社会秩序を乱す者であり、社会の敵であると認識するのである。社会の敵を嫌悪することは、社会を守る正しいことだと反個人主義者は自己を正当化すると解釈できる。

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