発表

1B-015

大学生のネット上のコミュニケーションスキルの傾向

[責任発表者] 石川 真:1
[連名発表者] 平田 乃美:2
1:上越教育大学, 2:白鷗大学

目 的
 内閣府(2017)の調査によると,スマートフォン利用者の高校生のうち,92.3%がコミュニケーションサービス(メール,メッセンジャー,ソーシャルメディア)を利用している。石川・平田(2016)はコミュニケーションスキルの高い者の方が低い者よりもネット上のトラブルに対処できる傾向を明らかとした。しかし,日常的となったネット上のコミュニケーションに掛るスキルの傾向については必ずしも十分に検討されていない。堀毛(1994)は対人コミュニケーション全般に関わる能力について記号化,解読,統制の3次元の概念で構成される基本スキルと呼んでいるが,本研究では,この基本スキルの概念を援用し,大学生のネット上のコミュニケーションスキルの傾向を探る。特に通常のコミュニケーションスキル(基本スキル)との関連性に着目する。
方 法
【調査対象・時期】情報教育関連の講義科目の受講者である学部生と大学院生計158名(男80名,女77名,無記名1名/18〜24歳)を対象とし,質問紙調査を授業時間内に実施した。
【調査項目】調査対象者には,a.基本スキルを測定する尺度(ENDE2)15項目(堀毛,1994),b.堀毛(1994)の尺度を参考として作成したネット(オンライン)上のコミュニケーションスキル(以下OCスキルと呼ぶ)を測定する尺度(18項目),c.社会的スキル尺度(菊池,1988),d.ネット上のさまざまな振る舞いに関する複数の項目の回答を求めた。今回はこのうちaおよびbを分析対象とした。これらの項目については,5件法により回答を求めた。
結 果
 基本スキル尺度およびOCスキル尺度の信頼性係数はそれぞれα=.75,α=.83だった。基本スキルの因子分析(最尤法,固有値1.0以上の4因子を抽出,バリマックス回転)を行った結果,第4因子までの累積寄与率は48.14%であった。因子負荷量の高い項目内容を参考とし,第i因子を解読,第ii因子を記号化,第iii因子を統制,第iv因子を感情表出と命名した。OCスキルの因子分析(最尤法,固有値1.0以上の5因子を抽出,バリマックス回転)を行った結果,第5因子までの累積寄与率は50.86%であった。因子負荷量の高い項目内容を参考とし,第I因子を解読,第II因子を記号化,第III因子を感情的表出,第IV因子を推察,第V因子を非文字表現と命名した。
 基本スキル尺度,OCスキル尺度それぞれの全体の素点平均および因子負荷量が.50以上の項目の素点平均を各因子の指標(Table1)とした。基本スキルの4因子を独立変数,OCスキルの全体および5因子を従属変数とした変数増減法による重回帰分析を行い,有意となるモデルを抽出した(Table 2)。今回対象とした独立変数間は最大でVIF=1.05であった。なお,第III因子(感情的表出)を従属変数とした分析においては有意となるモデルは抽出されなかった。
考 察
Table1の各スキルの因子別平均に着目すると,感情的表出を除いて基本スキルとほぼ同程度のスキルがあり,ネット上に固有の因子も比較的高い傾向であると考えられる。感情的表出は抑制すべき感情を表出する傾向の指標であるため,望ましいスキル傾向を示していると考えられる。
Table2に示す通り,OCスキルは,基本スキルの解読および記号化と関連が高い傾向を示した。オンライン固有の表現としての非文字表現は,基本スキルにおける記号化の概念と考えられるが,今回の結果においては解読のみと関連が有意であった。また,推察は基本スキルの解読,統制の概念と考えられるが,解読との関連は示されず,記号化と関連が高かった。
今回の結果より,大学生のネット上でのコミュニケーションスキルは,対面場面における基本スキルと類似した傾向であることが明らかとなった。一方,ネット上における固有の概念(因子),たとえば推察や非文字表現については基本スキルの概念のみで解釈することが難しい点も明らかとなった。したがって,今回の結果を踏まえ,感情的表出やネット上に固有のコミュニケーション概念を再度検証する必要がある。また,ネット上でのコミュニケーションスキルを測定するためのより信頼性・妥当性の高い尺度を作成していくことが課題である。
引用文献
堀毛一也(1994) 恋愛関係の発展・崩壊と社会的スキル. 実験社会心理学研究, 34(2), 116-128.
石川真・平田乃美(2016) コミュニケーションスキルとネット上のトラブル対処の関連性.日本教育心理学会第58回総会発表論文集, 376.
菊池章夫(1988)思いやりを科学する,川島書店.
内閣府(2017)平成28年度 青少年のインターネット利用環境実態調査
本研究はJSPS科研費15K01751の助成を受けて行った。

詳細検索