発表

1A-094

大学生における交通規則に対する評価と批判的思考態度

[責任発表者] 矢野 伸裕:1
[連名発表者] 宮﨑 章夫:2
1:科学警察研究所, 2:茨城大学

【目 的】
批判的思考(以下,CT)とは,「適切な基準や根拠に基づく,論理的で,偏りのない思考」(廣岡ら, 2000)とされる。
このような思考態度を持つ者は,そうでない者と比べて,交通規則に対し,'事故防止や交通秩序維持の上での効果を重視する等により,肯定的な態度を取りやすい',あるいは逆に,
'不合理さや現実とのミスマッチを重視する等により,否定的な態度を取りやすい'などのことが考えられる。本研究はこの点について予備的に検討した。
【方 法】
94 名の大学生に,交通規則に対する評定と批判的思考態度尺度への回答を依頼した。
用いられた交通規則は,自転車に関するもの9 種と歩行者に関するもの4 種であった。
自転車に関する規則
A. 車道を通行するときは、道路の左側を通行しなければならない。(左側通行の原則)
B. 一時停止の標識がある場所では停止位置で一時停止しなければならない。
C. 踏切では、一時停止し安全を確認しなければならない。
D. 歩道を通行するときは、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならない。
E. 横断歩道に自転車横断帯が併設されている場所では、横断歩道ではなく自転車横断帯を横断しなければならない。
F. 走行中に携帯電話やスマートフォンを使用してはならない。
G. ぬかるみや水たまりを通行するときは、水を他人にかけないようにしなければならない。
H. 幼児用座席に幼児を乗せる場合を除き、2人乗りをしてはならない。
I. 傘をさして運転してはならない。
歩行者に関する規則
J. 歩行者用信号が青点滅の場合は、横断を始めてはならず、横断途中の場合はすみやかに横断を終えるか引き返さなければならない。
K. 歩道のない道路では、やむを得ない場合を除き、道路の右側端を通行しなければならない。(右側通行の原則)
L. 横断歩道の付近(30 メートル以内)では、その横断歩道上を横断しなければならない。
M. 酒に酔って交通のじゃまとなるような程度にふらつきながら歩行してはならない。
評定項目は次の9 項目で,7 段階で評定した。①遵守の煩わしさ,②制御不可能性(守ろうとしても守れない程度),③違反の悪質さ,④遵守の重要度,⑤他者遵守度(他者が守っていると思う程度),⑥違反のメリット(違反によるメリットがあると思う程度),⑦違反の危険性(違反すると事故になると思う程度),⑧遵守意図(自分が守ろうと思う程度),⑨社会規範認知(人々が他者に守ることを望んでいると思う程度)CT 態度尺度は平山&楠見(2004)を用い,33 項目の合計得点を求めた。そして,94 名の得点を順に並べ,上位31 名を高CT 群,下位31 名を低CT 群とした。この2 群の間で,各交通規則について各評定値を比較した。
【結 果】
マン・ホイットニーのU検定を行い,各交通規則について,高CT 群と低CT 群との間に有意傾向(p < .1)以上の差がみられた評定項目を表1 に示す。規則G(ぬかるみ…)では高CT 群の評定の方が社会的望ましさが高かった評定項目が多く,一方,規則I(傘をさして…)や規則K(歩道のない道路では…)では高CT 群の評定の方が社会的望ましさが低かった評定項目が多かった。
【考 察】
規則G は他者への迷惑を抑止するもの,規則I やK は安全のために利便性を制限するものといえる。高CT 群は前者を規範として合理性を認め受容する一方,後者の2 規則に関しては安全性と利便性の釣り合いを分析し,利便性の犠牲を重くみて規範としての合理性を低く評価していると考えられる。
高CT 群といえども大学生はまだ若く社会的な経験も乏しいと言えるが,自動車運転など交通経験や社会経験がより豊富な中・高年齢の高CT 者では交通規範に関する意識が大学生の高CT 者とは異なる可能性も考えられる。
【引用文献】
平山るみ,楠見孝(2004) 批判的思考態度が結論導出プロセスに及ぼす影響−証拠評価と結論生成課題と用いての検討−, 教育心理学研究, 52, 186-198
廣岡秀一,小川一美,元吉忠寛(2000) クリティカルシンキングに対する志向性の測定に関する探索的研究,三重大学教育学部研究紀要(教育科学), 51, 161-173

詳細検索