発表

1A-093

若年就業者のキャリア焦燥感と水平的・垂直的交換関係 離転職意思との関係から

[責任発表者] 尾野 裕美:1
1:明星大学

目 的
 早期離職は多くの企業に共通した問題となっている。早期離職の背景にはキャリアに関する焦燥感が存在しており,若年就業者のキャリア焦燥感は「切迫感」「キャリア構築への衝動」「キャリアの懸念」の3因子により構成され(尾野・岡田,2014b),切迫感が離転職意思を促すことが示されている(尾野,2017)。一方,尾野・岡田(2014a)は,キャリア焦燥感の緩和プロセスについて検討し,職場のサポートによってキャリア焦燥感が緩和されることを確認した。職場のサポートには,同僚との横の関係である水平的交換関係と,上司との上下関係である垂直的交換関係が含まれている。よって,水平的・垂直的交換関係によってキャリア焦燥感が抑制されることが予測される。以上より,本研究では,水平的・垂直的交換関係→キャリア焦燥感→離転職意思という仮説モデルに従い分析することを目的とする。

方 法
 民間企業に就業している大卒または大学院卒の20代正社員を対象に,2017年3月にインターネット調査を実施し,合計312の有効サンプルを確保した(男性134名,女性178名,平均年齢:26.9歳,SD:1.71)。調査項目として、尾野・湯川(2017)で用いられた離転職意思を測定する質問、尾野・岡田(2014b)のキャリア焦燥感尺度、金井(2000)の水平的交換関係尺度および垂直的交換関係尺度を用いた。

結 果
 共分散構造分析によるパス解析を行った結果,モデルの適合度は,GFI=.993,AGFI=.974,RMSEA=.023であり,モデルの適合が良好であることが示された(Figure 1)。解析の結果,切迫感(β=.17,p<.05)およびキャリアの懸念(β=.38,p<.001)が離転職意思を促進する一方,キャリア構築への衝動(β=−.25,p<.01)は離転職意思を抑制することが明らかとなった。また,水平的交換関係(β=−.22,p<.001)は切迫感を抑制するが,垂直的交換関係(β=−.24,p<.001)は離転職意思を直接的に抑制することが示された。

考 察
尾野(2017)の研究では切迫感のみが離転職意思を促進していたが,本研究の結果から,キャリアの懸念も離転職意思を促進すること,一方でキャリア構築への衝動が離転職意思を抑制するという新たな知見が得られた。キャリア構築への衝動は,人間的成長を促進するポジティブな側面であることから(尾野・岡田,2014b),現在自分が置かれている環境のなかで何をすべきかということに関心が向き,現在所属している組織を去ろうという意思を持ちにくいと解釈できる。
また,同僚とのつながりは切迫感を抑制し,上司との関係は直接的に離転職意思を抑制するということが明らかとなった。すなわち,水平的交換関係は離転職意思の間接的抑制要因であり,垂直的交換関係はその直接的抑制要因であるととらえることができる。

引用文献
金井篤子 (2000). キャリア・ストレスに関する研究−組織内キャリア開発の視点からのメンタルヘルスへの接近 風間書房
尾野裕美 (2017). 若年就業者おけるキャリア焦燥感とその喚起状況−離転職意思との関係から− カウンセリング研究, 49, 1-10.
尾野裕美・岡田昌毅 (2014a). 20代ホワイトカラーにおけるキャリア焦燥感の構造とそれによって生じる行動,およびキャリア焦燥感の緩和プロセスに関する探索的検討 キャリアデザイン研究, 10, 105-117.
尾野裕美・岡田昌毅 (2014b). 若年就業者おけるキャリア焦燥感の構造:キャリア焦燥感尺度の開発 産業・組織心理学研究, 28, 31-41.

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