発表

1A-091

小中連携の教育活動が児童の中学校生活の予期に及ぼす効果—不登校傾向の高い児童に着目して—

[責任発表者] 千島 雄太:1
[連名発表者] 茂呂 輝夫#:2
1:筑波大学, 2:茨城県立三和高等学校

目 的
 小中連携の教育活動によって,中学校生活の初期適応を促す取り組みが推奨されている(文部科学省, 2008)。しかしながら,小中連携活動が,児童・生徒に対して,どのような効果があるのか,実証的に明らかにしている研究は少ないのが現状である。
 そこで,本研究では,小中連携活動の一環として行われている宿泊学習を取り上げ,その教育的効果を検証する。Riglin et al.(2013)が中学校生活への不安は,介入の重要なターゲットになりうると述べていることから,本研究では中学校生活の予期の変化を取り上げる。さらに,Sirsch(2003)は,学業と友人関係において,期待と不安の両面に着目する必要性を述べているため,本研究でも同様の方法を採用する。
方 法
 平成28年12月に実施された1泊2日の宿泊学習に参加した小学6年生計154名(男子81名・女子73名)を対象とした。宿泊学習では,同じ中学校に進学する他校の児童と一緒になり,関係づくりのグループワークや中学校教員による出前授業などが行われた。宿泊学習が行われる1週間前にpre調査が行われ,宿泊学習の直後にpost調査が行われた。その3ヵ月後の,平成29年3月にfollow-up調査が行われた。
調査項目は,「中学校生活への期待と不安」16項目(1点—5点の5段階評定),「不登校傾向」(五十嵐・萩原,2004)11項目(1点—4点の4段階評定)を使用した。「中学校生活への期待と不安」の項目については,Sirsch(2003),Rice et al. (2011),南他(2011)を参考にして,「学業」と「友人関係」に限定して作成した。「不登校傾向」は,「精神・身体症状を伴う不登校傾向」,「別室登校を希望する不登校傾向」,「遊び・非行に関連する不登校傾向」の3つの下位尺度に分かれているため,下位尺度ごとに分析を行った。
結 果
 まず,中学校生活への期待と不安を従属変数として,調査時期(pre・post・follow-up)を要因とした分散分析を行った。その結果,いずれの変数も有意差は示されなかった。
 続いて,不登校傾向の高低に着目するために,不登校傾向の3下位尺度の得点を平均値で分割し,高群と低群を作成した。「精神・身体症状を伴う不登校傾向」の平均値は1.34であり,高群47名,低群96名であった。「別室登校を希望する不登校傾向」の平均値は1.22であり,高群27名,低群116名であった。「遊び・非行に関連する不登校傾向」の平均値は1.65であり,高群57名,低群84名であった。
 中学校生活への期待と不安を従属変数として,調査時期(pre・post・follow-up)×不登校傾向(高群・低群)を要因とした分散分析を行った。その結果,全体的に見て,不登校傾向の主効果が有意であり,不登校傾向の高い児童ほど,中学校生活への期待が低く,不安が高いという結果が得られた。また,「別室登校を希望する不登校傾向」と「遊び・非行に関連する不登校傾向」において,交互作用が示され,それらの不登校傾向が高い児童ほど,preからpostにかけて,友人関係への期待が有意に上昇していた(順にF = 10.21, df = 2, 282, p < .001, ηp2 = .07; F = 4.06, df = 2, 274, p < .05, ηp2 = .03)。特に,「別室登校を希望する不登校傾向」の高群においては,preとfollow-upにも有意差が見られた。
考 察
 以上の結果から,特に不登校傾向の高い児童において,宿泊学習を経験することで,中学校での友人関係への期待が高まったといえる。また,不登校傾向の中でも,「精神・身体症状を伴う不登校傾向」以外で差が見られたということは,学校不適応の原因が,心や体の不調ではなく,小学校での友人関係に関する問題がある児童に,宿泊学習が効果的であったと推察される。宿泊学習は,新たな友人との出会いの場であるため,不登校傾向の高い児童が新しい友人関係に期待を持つきっかけとなったと考えられる。ただし,この宿泊学習では,中学校生活への不安を低減する結果は得られなかったため,不安低減には別のアプローチが必要である可能性がある。
引用文献
Sirsch, U. (2003). The impending transition from primary to secondary school: Challenge or threat?. International Journal of Behavioral Development, 27, 385-395.

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