発表

1A-090

特別な支援を要する児童生徒の理解−アクティブ・ラーニングによる発達障害の学びの実践−

[責任発表者] 今野 紀子:1
1:東京電機大学

目 的
 平成19年4月,特別支援教育が学校教育法に位置づけられ,すべての学校において障害のある幼児児童生徒の支援の充実が規定された。なかでも知的発達に遅れはないが特別な教育的支援を要する発達障害の児童生徒は増加傾向にあり,発達障害への理解や合理的配慮のあり方,基礎的環境整備は喫緊の課題となっている。本稿では,教員養成課程の大学生を対象とし,アクティブ・ラーニングを用いた,発達障害の理解・支援のための学びの有用性と今後の課題について検討する。
方 法
実施の流れ:アクティブ・ラーニングとは,教員による一方向的な講義形式の教育の代わりに,学修者の能動的な学修への参加を積極的に取り入れた教授・学習法の総称であるが,今回,発達障害の理解・支援の学びを教員養成のための教職課程科目授業内の課題とした。調査研究発表を担当するグループ(1グループは6名程度)は,グループのメンバーで協力しながら以下の学習課題に取り組み,その成果を40分間のプレゼンテーションで発表した。発表グループ以外の学生は,発表グループのプレゼンテーションを聴いて質疑を行ない,それらに対して必要に応じた助言等のフィードバックを教員が行うことで,当該学修が深化するよう工夫した。
学習課題:発達障害の定義,歴史(過去からの流れ),現状(統計や関連ニュースなど),社会的背景や要因,発達障害を抱える児童生徒の特徴,求められる学校(教員)の対応,求められる家庭(家族)の対応,支援対策について調査研究する。
対象者:2016年6月~7月,大学生23名を対象に実施した。当該データの利用および発表に関しては,十分な説明を行い,同意を得た。
評価方法:学修後,以下の10項目について5段階リッカート尺度(1[まったくない]~5[非常にある])で評価した。前興味関心度(Q1学修前,発達障害についてどの程度興味があったか)・後興味関心度(Q2学修後,発達障害についてどの程度興味がわいたか)・前知識度(Q3学修前,発達障害についてどの程度知識があったか)・後知識度(Q4学修後,発達障害についてどの程度知識を得たか)・児童生徒理解度(Q5発達障害を抱える児童生徒についてどの程度理解できたか)・学校の対応理解度(Q6求められる学校の対応についてどの程度理解できたか)・家庭の対応理解度(Q7求められる家庭の対応についてどの程度理解できたか)・支援策理解度(Q8支援対策についてどの程度理解できたか)・学びの重要度(Q9発達障害について学ぶことは,どの程度重要だと思うか)・学びの意欲度(Q10発達障害について,さらに学んでみたいと思うか)。また,自由記述形式の質問により学びの振り返りとアクティブ・ラーニングに対する意見・感想を調査した。
結 果
 評価結果をTable 1に示す。ウィルコクソンの順位和検定の結果,発表グループは非発表グループに比べて,児童生徒理解度が有意に高いことが示された。また,発表グループでは,学修後の知識度が5%水準で有意に上昇した。一方,非発表グループでは,学修後,知識度・興味関心度が1%水準で有意に上昇した。
Figure 1にCS分析(目的変数:学びの意欲度,説明変数:その他9項目とした)の結果を示す。学びの意欲の向上には,家庭の対応理解度・学校の対応理解度を高めることが有用であることが示された。
発表グループの学生からは,主体的に調査研究をしたことで,児童生徒理解や支援策を深く学べたとの意見が多かった。非発表グループの学生からは,「具体例を取り入れて発表している点がよかった」「導入を工夫し,興味を持たせるやり方がよいと思った」という感想や意見が述べられた。
考 察
 今回のアクティブ・ラーニングを用いた発達障害の学びでは,発表グループと非発表グループともに有意義な学修となった。特に非発表グループでは,今まであまり馴染みがなかった発達障害についての興味が喚起された。今後の課題としては,学修達成度を判断する基準をルーブリックで分かりやすく示す工夫や,学びを促進させるファシリテーターの適切な介入方法について,より検討する必要がある。

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