発表

1A-087

高等教育機関における発達障害学生に対するピアサポート(2)ー注意欠如多動性障害学生が抱える支援ニーズに焦点を当ててー

[責任発表者] 永瀬 開:1
1:山口県立大学

問 題 と 目 的
近年、高等教育機関における発達障害学生が増加するのに伴い、高等教育機関における発達障害学生をどのように支援するのかということが課題となっている(佐藤・徳永, 2006)。発達障害学生に対する支援を考える際に、発達障害学生と同じ高等教育機関で学ぶ障害のない学生によるピアサポートが関心を集めている(Garrider & Iarocci, 2014)。しかしながら、ピアサポートを行う学生にとっても、発達障害学生が大学生活において抱える全ての支援ニーズに対して支援を行うことは難しいということが考えられる。なぜなら、発達障害学生に対してピアサポートを行うことには、支援を実施するピアサポーターに対して一定の抵抗感が生じることが考えられるためである(Nevile & White, 2011)。この点をふまえ、本研究では発達障害の中でも注意欠如多動性障害(ADHD)に焦点を当て、ADHD学生の抱える支援ニーズに対して、大学生がどのようなニーズであればピアサポートを行うことができ、どのようなニーズであればピアサポートを行うことが難しいと考えているのかを明らかにすることを目的とする。
方 法
対象者:四年制大学に通う51名(男性15名、女性36名)であった。対象者の平均年齢は20.35歳(SD = 0.74; 年齢幅19-23歳)であった。なお、本研究は山口県立大学生命倫理委員会の承認を経て行われた(承認番号28-29)。
質問紙:注意欠如多動性障害学生の支援ニーズに関するサポート項目については、「ADHD困り感質問紙」(岩渕・高橋, 2011; 高橋, 2013)に記載されている支援ニーズをもとに作成した。具体的には、各項目について、「あなたは以下の内容で困っている同級生をどの程度助ける、または手伝うことができそうですか?」という教示を行い、4「かなり助ける(手伝う)ことができる」、3「かなり助ける(手伝う)ことができる」、2「あまり助ける(手伝う)ことができない」、1「全く助ける(手伝う)ことができない」の4件法で回答を求めた。
手続き:それぞれの質問項目について、支援することができると回答した人数(質問項目において4、もしくは3と回答した人数)と支援することが難しいと回答した人数(質問項目において2、もしくは1と回答した人数)を算出し、それぞれの質問項目で支援することができると回答した人数について、二項検定を実施した。
結 果
分析の結果、5つの項目について、支援することができると回答した人数がチャンスレベルと比べて有意に多いことが明らかになった。また4つの項目について、支援することが難しいと回答した人数が有意にチャンスレベルと比べて多いことが明らかになった。分析の結果の概要を表1に示した。
考 察
分析の結果、「よく物をなくして困っている」、「誤解や早とちりが多くて困っている」、「新しい作業を習得するのに時間がかかってしまう」、「提出物の締め切りや期限を忘れることがあり困ってしまう」、「学校や仕事の場面で単純なミスが多くて困っている」の5つの項目について、大学生は支援することができると考えていることが明らかになった。これらの支援ニーズは、いずれも注意欠如多動性障害の障害特性によって引き起こされた「学業上の困難さ」(丹治・野呂, 2014)だと考えられる。この結果の解釈としては、これらの「学業上の困難さ」の支援ニーズを支援することに対する義務感の高さと心理的負担感の低さがあると考えられる(真下ら, 2014)。
その一方で、「睡眠のリズムが不規則で困っている」、「生活が不規則で困っている」、「授業中集中が続かなくて困っている」、「飽きっぽくて困っている」の4つの項目について大学生は、支援することが難しいと考えることが明らかになった。これらの内、前者2つがADHD学生の生活リズムに関わる支援ニーズであり、後者2つがADHD学生の障害特性そのものに関連する支援ニーズである、と考えられる。この背景として、前者は生活リズムを乱す大学外の要因を把握することは大学生にとっても負担が大きいことがあると考えられ、後者は大学生が障害特性そのものに関連する支援ニーズに対してや十分な知識を有していないことがあると考えられる。

付記:本研究は山口県立大学研究創作活動助成(基盤研究型)による。

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