発表

1A-083

青年期における心理的自立と社会観との関連

[責任発表者] 高坂 康雅:1
1:和光大学

自立は青年期の発達課題であり,青年を理解する上で不可欠な概念である。高坂・戸田(2006a, 2006b)は,青年の心理的自立を測定する尺度(PJS-2)を作成し,精神的健康や適応との関連を検討している。一方,高坂(2003)は青年期における心理的自立を「成人期において適応するために必要な心理・社会的な能力を備えた状態」と定義している。これは,青年が大人になり,社会で適応できるようになることを意味しているが,社会に適応するためには,現在の社会をどのように観るかという社会観の形成が必要であると考えられる。青年が自身の生きている環境をどのようにみているかが,個人の意識や行動に影響を及ぼすと指摘されている(白井, 2008など)ことからも,青年の社会観は心理的自立のあり方と関連すると考えられる。
そこで,本研究では,大学生を対象に,心理的自立と社会観との関連について検討することを目的とする。
調査対象者 東京都内の大学生285名(男性144名,女性140名,不明1名;平均年齢19.6±1.5歳)を対象者とした。
調査内容 心理的自立尺度(PJS-2;高坂・戸田, 2006b):「将来志向」,「適切な対人関係」,「価値判断・実行」,「責任」,「社会的視野」,「自己統制」の6下位尺度各5項目を使用した(7件法),社会観項目:Benesse教育研究開発センター(2008)や峰尾(2013)などを参考に,現在の日本に対するとらえ方を尋ねる項目30項目を独自に作成し使用した(5件法)。
調査時期 2014年6月に集団で実施・回収した。
社会観項目の因子分析 社会観項目30項目について,最尤法・promax回転による因子分析を行ったところ,「努力評価社会」,「個性強調社会」,「学歴経済主義社会」,「政治不信社会」の4因子を抽出した。各因子に高い負荷量を示した項目の平均を算出し,各下位尺度得点とした。
心理的自立と社会観との関連 心理的自立や日本における就労・経済状況の男女差,男女における社会的期待の差異が指摘されているため,男女別に心理的自立6得点と社会観4得点との相関を算出した(Table 1,Table 2)。
 その結果,男性では,心理的自立の「適切な対人関係」得点,「責任」得点,「社会的視野」得点が社会観の「努力評価社会」得点と有意な正の相関を示した。また,心理的自立の「自己統制」得点が社会観の「個性強調社会」得点と有意な正の相関を示した。
 女性では,心理的自立の「将来志向」得点,「適切な対人関係」得点,「価値判断・実行」得点,「自己統制」得点が社会観の「努力評価社会」得点と有意な正の相関を示した。また,心理的自立の「社会的視野」得点が社会観の「個性強調社会」得点と有意な負の相関を,「学歴経済主義社会」得点や「政治不信社会」得点と有意な正の相関を示した。
 これらの結果から,男性は心理的自立のうち「社会的視野」が形成されているほど,日本社会は努力を認めてくれる社会であるととらえている一方,女性は「社会的視野」が形成されているほど,日本社会は学歴や所得などによって評価される社会であり,また,信頼できる政治が行われていない社会であるととらえていることが明らかとなった。これは,女性が日本社会においておかれている状況が未だに男性よりも不利であるために生じていると推測される。一方で,「将来志向」や「価値判断・実行」が形成されているほど,日本社会を努力が認められる社会であるととらえており,自立の側面によって,日本社会のとらえ方が異なっていることも示唆され,このような差異が,女性の心理的自立の困難さにも関わっていると考えられる。

詳細検索