発表

1A-080

中年期における主観的幸福感と夫婦関係−性別と子どもの有無に着目して−

[責任発表者] 沼山 博:1
[連名発表者] 福島 朋子:2
1:山形県立米沢栄養大学, 2:岩手県立大学

目 的
 中年期における主観的幸福感に夫婦関係が影響していることはさまざまな研究で示されている。しかし,それらの多くは子どものいる既婚成人が主たる調査対象とされており,子どもの有無による違いは必ずしも明らかになっていない。本研究は,中年期における主観的幸福感と夫婦関係の関係性に,性別や子どもの有無による違いがあるかどうかを把握することを目的としたものである。

方 法
調査協力者 全国の45—60歳の子どもを持つ有配偶男性(以下,子ども有男性)139名(平均年齢54.3歳)・女性(以下,子ども有女性)140名(同53.0歳),子どもを持たない有配偶男性(以下,子ども無男性)139名(同52.4歳)・女性(以下,子ども無女性)140名(同49.7歳)。結婚年数は,子どもを持つ男性25.4±7.0年,女性26.6±7.3年,子どもを持たない男性17.4±7.8年,女性17.8±7.2年であった。
調査期間と手続き 2014年10月にインターネット調査を実施した。
調査内容 1)フェイスシート:調査協力者の属性(性別・年齢・世帯年収・結婚年数)2)主観的幸福感:主観的幸福感尺度(伊藤ほか,2003)12項目を使用した(4件法)。3)夫婦の共行動:“食事”“買い物”“旅行”“趣味・活動”“映画を見に行く”の計5項目について夫婦で共に行う活動を4件法で尋ねた。4)夫婦の親密性:夫婦親密度尺度(近喰ほか,2010)31項目のうち22項目を使用した(4件法)。

結 果
1.各変数の基礎統計量についての検討
各変数について性別と子どもの有無による2要因分散分析を行ったところ,主観的幸福感・世帯年収には性および子どもの有無による有意な差は認められなかった。‘夫婦の共行動’については,子どもの有無の主効果が有意であり,子ども有より子ども無において得点が高かった。‘夫婦の親密性’については性別・子どもの有無および交互作用が有意であり,子ども有女性群の得点が他の3群に比べて低い結果であった。
2.子どもの有無×性別の4群による規定要因の検討
 子どもの有無と性別による4群における‘主観的幸福感’を規定する要因の違いを検討するため,4つの群それぞれについて階層的重回帰分析を行った。説明変数は,step1では統制変数として‘世帯年収’‘結婚年数’を,step2では‘夫婦の親密性’‘夫婦の共行動’,step3では‘夫婦の親密性’と‘夫婦の共行動’との交互作用を投入した(Table)。その結果,いずれの群もstep1からstep2の重決定係数に有意な増分が認められ,子ども有男性群・子ども無男性群・子ども無女性群の3つの群では‘夫婦の親密性’が有意な正の効果を示していたが,子ども有女性群では‘夫婦の共行動’が有意な正の効果を示していた。また,step3で投入した交互作用項を見ると子ども無女性群のみ正の有意な効果が見出され,重決定係数も有意な増分が確認された。

考 察
 上の結果から次の点が示唆される:1)有配偶男性では,子どもの有無と関係なく,‘夫婦の親密性’という意識が主観的幸福感を高める傾向がある,2)有配偶女性では,子ども有の場合は‘夫婦の共行動’が主観的幸福感を高める傾向を持つが,その一方で,子ども無の場合は,‘夫婦の共行動’の効果は‘夫婦の親密性’に調整されている,すなわち‘夫婦の共行動’は‘夫婦の親密性’を伴った場合に主観的幸福感を高める傾向がある。

引用文献
伊藤裕子・相良順子・池田政子・川浦康至(2003).主観的幸福感尺度の作成と信頼性・妥当性の検討,心理学研究,74, 276-281.
近喰ふじ子・塚本尚子・安藤哲也・吾郷晋浩(2010).「夫婦親密度尺度」の開発とその試み,心身医学,50,1171-1185

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