発表

1A-079

乳幼児の父親・母親における子ども誕生後の生きがい感の変化 10点満点の生きがい感と生きがいプロセスからの検討

[責任発表者] 熊野 道子:1
1:大阪大谷大学

目 的
父母ともに,理想としては家事・育児と仕事の両方を重視したいと考えていても,特に父親では現実的には仕事を重視している者が多い (厚労省,2009)。すなわち,父母とも自分の理想とする生き方を実現することが難しくなっている。しかしながら,自分の理想とする生き方の実現は生きがい感に深く関わるであろう。そこで,本研究では,乳幼児の父母を対象として,子ども誕生後の生きがい感の変化と,その要因を生きがい感に対する考え方と生きがいプロセスの観点から検討する。職業の有無で生き方や生活様式が大きく異なり,生きがい感に対する考え方が異なるので,専業主婦家庭の父親と母親,共働き家庭の父親と母親の4群を設定し,各々,専業父親,専業母親,共働き父親,共働き母親と記した。
方 法
乳幼児のいる親859名(父親422名,母親437名)に対してweb調査を実施した。調査項目は,現在の生きがい感と子どもの誕生前の生きがい感を0点から10点までで回答を求め,熊野(2013)の生きがいプロセス尺度15項目(過去の意味づけ,未来の目標意識,ポジティブ状況の没頭,ネガティブ状況の受容,ネガティブ状況の対処)に回答を求めた。さらに,生きがい感に対する考え方として10点満点の生きがい感を感じる人生の自由記述を求めた。なお,熊野(2017)のデータも取得した。数値の解析にはIBM SPSS Statistics ver. 22.0, IBM SPSS Amos ver. 19.0を使用し,記述の解析にはKH-Coder ver.2.Beta.31(樋口,2014)を使用した。調査は無記名で行い,自由に拒否できた。
結果と考察
1)現在と子ども誕生前の生きがい感(表1)
 現在と子ども誕生前の生きがい感について,性別と家族形態の2要因分散分析を行った結果,現在の生きがい感に有意差は認められなかったが,子ども誕生前の生きがい感で1次の交互作用が認められ(F(1,855)=5.2, p<.05),母親において,専業母親は共働き母親に比べ,子ども誕生前の生きがい感は低かった。
2)子ども誕生後の生きがい感の変化
子ども誕生前から現在の生きがい感への変化をみるために,子ども誕生前より現在の生きがい感が上昇する場合,変化のない場合,低下する場合に分けた。4群のいずれの群でも,子ども誕生後の生きがい感が上昇した者の割合が最も大きく(48~62%),次に変化のない者の割合が大きく(29~45%),低下した者の割合は少なかった(7~15%)。
4群における生きがい感の変化する者の割合についてχ2検定を行った結果,4群において上昇する場合,変化のない場合,低下する場合の比率が有意に異なった(χ2(6)=21.3, p<.01)。残差分析を行った結果,共働き母親は,誕生前より現在の生きがい感が低下する者の割合が4群の中で最も大きかった(15%,p<.01)。一方,専業母親は,誕生前より現在の生きがい感が上昇する者の割合が4群の中で最も大きかった(62%,p<.01)。
3)10点満点の生きがい感の記述内容
10点満点の生きがい感の記述内容において,20人以上に出現したcodingについて,ward法による階層的クラスター分析を行った結果,6つのクラスターに分類された。4群全体のクラスターの出現比率では,「CL6自分の人生実現」が53%と最も多く,「CL2毎日充実」44%,「CL5社会生活」33%,「CL1経済生活」32%,「CL4健康生活」25%,「CL3子ども成長」25%であった。すなわち,子どもが生きがい対象として重要ではあるが,「CL3子ども成長」だけでは10点満点の生きがい感を説明できないと考えられる。なお,専業母親は他3群に比べると,「CL3子ども成長」と「CL6自分の人生実現」を10点満点の生きがい感とする者の割合が大きかった。
4)子ども誕生後の生きがい感変化の生きがいプロセスと10点満点の生きがい感からの検討
専業母親は,子ども誕生後に生きがい感が高まる者の割合が最も大きかった。それは「CL3子ども成長」を10点満点の生きがい感とする者の割合が最も大きいためと考えられる。また,生きがいプロセスの5種のうち過去の意味づけのみが,専業母親の生きがい感上昇群で低下群と比べ有意に高かった(p<.05)。未来の目標意識は,専業母親の生きがい感上昇群・変化なし群が低下群に比べ,有意差はないが高い傾向がみられた。専業主婦は日々の生活の中で時間的見通しをもつことが比較的少なかったところに,子どもの誕生により,子どもの成長に伴う過去の各種出来事の人生への意味づけや未来の展望や目標意識が高まることにより子ども誕生後の生きがい感が高まる者の割合が大きいと考えられる。
共働き母親は子ども誕生後に生きがい感が低下する者の割合が最も大きかった。共働き母親では,生きがいプロセスの5種のうち,ネガティブ状況の受容と対処は,共働き母親の生きがい感低下群は上昇群や変化なし群と比べて有意に低く(p<.05),ポジティブ状況の没頭は,共働き母親の生きがい感低下群は変化なし群と比べ有意に低かった(p<.05)。共働き母親は仕事と子育てが両立困難であるネガティブ状況への受容や対処が低下したり,ポジティブ状況への没頭が低下したりしていると考えられる。また,共働き母親は,子育てと仕事に追われて,自分の時間を持ったり,充実感を感じたりすることが難しく,10点満点の生きがい感である「CL6自分の人生実現」や「CL2毎日充実」が満たされにくい状況にあると考えられる。そのため,子ども誕生後の生きがい感が低下する者の割合が大きくなっていると考えられる。
本研究は科研費(基盤研究C,課題番号23530878)の助成を受けた。

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