発表

1A-077

就学前期の内在化・外在化問題行動と2つの気質との関連 行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロールの縦断データの分析から

[責任発表者] 水野 里恵:1
1:中京大学

目 的
 従来の問題行動(精神疾患を含む)は,内在化問題行動と外在化問題行動とに分類できる(Achenbach,1982)。内在化問題行動は,過度の不安や恐怖,抑うつ,社会的引きこもりなど自己の内部に問題を含むものである。それに対して,外在
問題行動は,攻撃,非行,かんしゃく,多動性など,周囲の人々との間で軋轢を生じさせ,環境との葛藤を含むものである。これら2種類の問題行動に対してのリスク要因と保護要因に関して,多くの研究が積み重ねられてきた。
 さて,水野(2017)は,行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロールの2つの気質次元に焦点を当てた発達初期からの縦断研究を進めている。行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロールは脳機能における個人差と対応した気質であることが非侵襲的脳機能画像研究によって示唆され,その生理基盤や遺伝要因(ジェネティクス・エピジェネティクス)が分子遺伝神経学の進展によって次第に明らかになっている気質次元であることから,それらの発達初期からの安定性や変容性とそのメカニズムについて検討することに意義があると考えているからである。その2010年出生コホートの子どもたちが就学前期に達したことから,子どもに観察される問題行動に,2つの気質次元がリスク要因・保護要因となっているかについて検討することを本研究の目的とした。
 
方 法
 A市内5区の住民基本台帳から無作為抽出した第一子を対象に,2011年から2014年までに計6回の質問紙調査を保護者に対して実施した。本稿においては,第2回調査~第6回調査のすべてのデータが揃った53名(男児22名,女児31名)を分析対象とした。各調査時点における子ども(53名)の平均月齢は,第2回: 21.3ヶ月齢(SD= 3.54),第3回質:40.5ヶ月齢(SD= 3.61),第4回:51.7ヶ月齢(SD= 4.01),第5回:64.7ヶ月齢(SD= 3.64),第6回:平均年齢は5.8歳(SD=0.4),全員が年長もしくは小学校1年生であった。第2回~第5回の調査時点で子どもの行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロールの気質測定を行った。第6回調査では CBCL(日本語版4‐18歳用)に回答を求めた。

結 果
 CBCL採点用プロフィールに基づいて,ひきこもり,身体的訴え,不安/抑うつ,社会性の問題,思考の問題,注意の問題,非行的行動,攻撃的行動の8つの下位尺度得点を算出した。次に,CBCL採点用プロフィールに基づき,内向尺度,外向尺度を算出した。内向尺度は内在化問題行動の得点,外向尺度は外在化問題行動の得点をあらわすものである。内向尺度は,<ひきこもり+身体的訴え+不安/抑うつ−項目103>で求めた。外向尺度は,<非行的行動+攻撃的行動>で求めた。

内向尺度,外向尺度による群分け
 研究協力者を内向尺度・外向尺度の得点により,それぞれ3つの群に分類した。CBCLの採点用プロフィールを参考にし,T得点が49以下の群を“普通群”,50以上59以下の群を“中間群”,60以上の群を“高群”とした。内向尺度・外向尺度による各群の人数を表に示した。
内向尺度による2群,外向尺度による2群の気質得点比較
内向尺度の普通群と高群,外向尺度の普通群と高群で第2回~第5回に測定した行動的抑制傾向尺度得点,エフォートフル・コントロール尺度得点に差が見られるかの検討を行った。
内向尺度の高群は,第5回調査・第4回調査のBI尺度得点の平均値が普通群より有意に高かった。外向尺度の高群は,第5回調査・第3回調査・第2回調査のEC尺度得点の平均値が普通群より有意に低かった。
考 察
 (1)行動的抑制傾向が高い子どもは就学前期になると内在化問題行動を示しやすいこと,(2)エフォートフル・コントロールが高い子どもは外在化問題行動を示しにくいことが示唆された。調査時点により気質尺度得点の平均値に有意差が見られた時点とそうでない時点があったことから,気質の発達過程における個人差を考慮したさらなる分析が必要である。

引用文献
Achenbach, T.M. (1982). Developmental Psychopathology. (2nd ed.). New York: Wiley.
水野里恵. (2017). 子どもの気質・パーソナリティの発達心理学. 東京:金子書房.
本研究は科学研究費補助金(課題番号26380909)による助成を受けた。データの収集・入力については溝口真瑚さん(中京大学2017年卒業)に協力いただいた。

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