発表

1A-074

子どもの気質に適合したベビーマッサージが育児不安に及ぼす影響

[責任発表者] 武井 祐子:1
[連名発表者] 門田 昌子:2, [連名発表者] 寺崎 正治:1, [連名発表者] 奥富 庸一:3, [連名発表者] 竹内 いつ子#:1, [連名発表者] 岩藤 百香#:1
1:川崎医療福祉大学, 2:倉敷市立短期大学, 3:立正大学

【目 的】 子どもが“癇癪が激しい”“不機嫌である”といった育てにくい気質特徴を示すと養育者の育児不安が高まること(堀ら,2004),そのような気質特徴はその後の養育者の育児不安を予測することが指摘されている(武井ら,2007)。養育者の育児不安を低減するためには,育児行動に対する自己効力感を高めることが重要であり(武井ら,2008),育児不安と関連のある気質特徴をもつ子どもの養育者が気質を考慮して子どもに対応することは,自身の育児不安を予防,低減していく一助になると考えられる。
子どもの気質を考慮した育児行動を学習する機会の1つとしてベビーマッサージがある。ベビーマッサージによって,子どもの心と体の不調を感じ取れること(大葉,2004),自然に我が子に触れ合うことができ,母子相互作用を高めること(光盛・山口,2009)など育児上の効果が報告されている。気質特徴に適合したベビーマッサージを体験すると,子どもの気質特徴を考慮した関わりの重要性に気づき,子どもへの関わりについて考えるようになることや育児での関わりの1つとして活かしたいという思いにつながるなど母親が育児する上で有効であること(武井ら,2016),育児自己効力感のなかでも子どもに適切に関わることができるという感覚を強めること(武井ら,2017)が明らかとなっている。しかし,育児不安を高める気質特徴の子どもをもつ母親に効果があるかについては検討されていない。
本研究は,0歳から2歳までの育児不安を高める気質特徴の子どもをもつ母親を対象に,子どもの気質特徴に適合したベビーマッサージを行うことで育児不安が低減するのかを明らかにし,子どもの気質特徴に適合したベビーマッサージの育児上の有効性を検証することを目的として実施する。
【方 法】 調査対象者;A市にある大学の子育てひろばを利用する母子のなかで参加協力が得られた1歳児とその母親27組と,自身の子どもにベビーマッサージをする目的でベビーマッサージサロンに来所し,参加協力が得られた0~2歳児とその母親21の合計48組であった。参加申込み時の母親の平均年齢は33.7歳(SD 4.38),子どもの平均月齢は11.77ヶ月(SD 5.79)であり,男児27名,女児21名であった。このうち,気質特徴に適合したベビーマッサージ教室に参加した1か月後にアンケートを返送した37組が分析対象であった。質問紙;武井ら(2007)の6尺度47項目から成る幼児気質質問紙,手島・原口(2003)が作成した3尺度24項目から成る育児不安質問紙であった。回答形式は4件法であった。手続き;2つの質問紙に母親が回答後,幼児気質質問紙の結果に基づき子どもの6つの気質特徴について個別に母親にフィードバックされた。その後,6つの気質特徴の高低それぞれに適合したベビーマッサージの方法をインストラクターが母親に指導し,母親が自身の子どもの気質特徴に適合したベビーマッサージを行った。ベビーマッサージ教室に参加した1か月後に育児不安質問紙に回答し,返送するよう母親に求めた。
【結 果 と 考 察】 子どもの気質特徴と母親の育児不安との間の関連を検討するために尺度間で相関を求めた。結果,幼児気質質問紙の否定的感情反応尺度と育児不安質問紙の中核的育児不安尺度との間に有意な正の相関が認められた(r =.370,p <.01)。つまり,子どもが“癇癪が激しい”“不機嫌である”といった育てにくい気質特徴を示すほど,母親は“子育てに失敗するのではないかと思うことがある”といった育児自体に対する漠然とした不安を示すことが明らかとなった。
気質特徴に適合したベビーマッサージ教室を体験後、日常どの程度ベビーマッサージをしているか尋ねたところ,「毎日」と回答した母親が17人(45.9%),「1/2日」が10人(27.0%),「1/1週」が7人(18.9%),「1,2回」が3人(8.1%)であり,「していない」と回答した母親はいなかった。体験後,ベビーマッサージが日常の育児行動の1つになっていることが明らかとなった。
母親の育児不安と関連が認められた否定的感情反応尺度の尺度得点が全体の平均値より高い値を示した18名の母親を高群、全体の平均値より低い値を示した17名を低群とし,気質特徴に適合したベビーマッサージ教室体験前と体験後で中核的育児不安に変化が認められるかを明らかにするために,2要因(高群・低群×体験前・体験後)の分散分析を行った。
結果,否定的感情反応尺度の主効果,教室体験の主効果が有意であった(F(1,35)=11.119,p <.01, F(1,35)=4.384,p <.05)(Figure 1)。一方,交互作用は有意ではなかった(F(1,35)=.378, n.s.)。つまり,育児不安を高める気質特徴の高低によらず,母親が子どもの気質特徴を理解し,気質特徴に適合したベビーマッサージを体験することは,育児に対する母親の不安を低減させることが明らかとなった。
本研究では,通常のベビーマッサージと比較して子どもの気質特徴に適合したベビーマッサージがより効果的であるのか,育児不安が低減する背景に育児自己効力感が高められているのかについては明らかにできていない。よって,対象群との比較をするとともに,育児自己効力感への効果を検証することが必要だと考えられる。




 





Figure 1 否定的感情反応尺度高群・低群の体験前後の中核的育児不安の変化
結果,否定的感情反応尺度の主効果,教室体験の主効果が有意であった(F(1,35)=11.119,p <.01, F(1,35)=4.384,p <.05)(Figure 1)。一方,交互作用は有意ではなかった(F(1,35)=.378, n.s.)。つまり,育児不安を高める気質特徴の高低によらず,母親が子どもの気質特徴を理解し,気質特徴に適合したベビーマッサージを体験することは,育児に対する母親の不安を低減させることが明らかとなった。
本研究では,通常のベビーマッサージと比較して子どもの気質特徴に適合したベビーマッサージがより効果的であるのか,育児不安が低減する背景に育児自己効力感が高められているのかについては明らかにできていない。よって,対象群との比較をするとともに,育児自己効力感への効果を検証することが必要だと考えられる。

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