発表

1A-073

子どもの気質に適合したベビーマッサージが育児自己効力に及ぼす影響

[責任発表者] 門田 昌子:1
[連名発表者] 武井 祐子:2, [連名発表者] 寺崎 正治:2, [連名発表者] 奥富 庸一:3, [連名発表者] 竹内 いつ子#:2, [連名発表者] 定守 加奈子#:2
1:倉敷市立短期大学, 2:川崎医療福祉大学, 3:立正大学

【目 的】 子どもが“癇癪が激しい”“不機嫌である”といった育てにくい気質特徴を示すと,養育者の育児不安が高まることが示されている(堀ら,2004)。より近年では,気質特徴そのものよりも,むしろ気質特徴に対する養育者の対処不能感が,育児不安をもたらすことが指摘されている(武井ら, 2008)。よって,養育者の育児不安を低減させるためには,養育者が,自身の子どもの気質特徴に適合した対応を行えると感じることが重要であると考えられる。ベビーマッサージは,養育者が子どもに行う育児行動の1つであり,その効果として,子どもの心と体の不調を感じ取ることができる(大葉,2004),母子相互作用を高める(光盛・山口,2009)ことが報告されている。武井ら(2017)は,養育者が,子どもの気質特徴に適合した対応を学ぶ機会として,気質特徴に適合したベビーマッサージ教室を実施した。その結果,養育者が気質特徴に適合したベビーマッサージを続けることで,子どもに適切に関わることができるという育児自己効力を高められる可能性を明らかにした。しかし,武井ら(2017)では,子どもの気質特徴の違いによる効果については検討していなかった。そこで本研究では,育児不安を高める気質特徴を示す子どもの養育者において,気質特徴に適合したベビーマッサージを行うことで,育児自己効力が高まるか否かを明らかにすることを目的とする。本研究により,育てにくい気質特徴を示す子どもの養育者にとって,気質特徴に適合したベビーマッサージプログラムが有効か否かを検討できると考えられる。
【方 法】 調査対象者;A市の大学の子育てひろばを利用する母子で参加協力が得られた1歳児とその母親27組と,自身の子どもにベビーマッサージを行う目的でベビーマッサージサロンに来所し,参加協力が得られた0~2歳児とその母親21組の合計48組であった。参加申込み時の母親の平均年齢(SD)は33.7(4.38)歳,子どもの平均月齢(SD)は11.77(5.79)か月であり,男児27名,女児21名であった。このうち,気質特徴に適合したベビーマッサージ教室に参加した1か月後に質問紙を返送した37組を分析対象とした。質問紙;(1)武井ら(2007)の6尺度47項目の幼児気質質問紙,(2)手島・原口(2003)の3尺度24項目の育児不安質問紙,(3)井元(2007)の育児行動に対する自己効力感質問紙のうち,接し方3項目とほめ方・叱り方6項目を用いた。質問項目への回答形式は4件法であった。手続き;母親が質問紙に回答した後,個別に子どもの気質特徴の結果を母親にフィードバックした。その後,インストラクターが母親に気質特徴に適合したベビーマッサージの方法を指導し,母親が子どもにベビーマッサージを行った。ベビーマッサージ教室に参加した1か月後に,ベビーマッサージの実施頻度,育児不安質問紙,育児行動に対する自己効力感質問紙に回答し,返送するよう求めた。
【結 果 と 考 察】 まず,気質特徴に適合したベビーマッサージの実施頻度については,「毎日」と回答した母親が17人(45.9%),「1/2日」が10人(27.0%),「1/1週」が7人(18.9%),「1,2回」が3人(8.1%)であり,「していない」と回答した母親はいなかった。気質特徴に適合したベビーマッサージ教室の体験後,ベビーマッサージが日常の育児行動の1つになっていることが明らかとなった。
次に,子どもの気質特徴と母親の育児不安との間の関連を検討するために尺度間で相関分析を行った結果,幼児気質質問紙の否定的感情反応尺度と育児不安質問紙の中核的育児不安尺度との間に有意な正の相関が認められた(r =.370, p < .01)。つまり,子どもが“癇癪が激しい”“不機嫌である”といった育てにくい気質特徴を示すほど,母親は“子育てに失敗するのではないかと思うことがある”といった育児自体に対する漠然とした不安を示すことが明らかとなった。 
次に,母親の育児不安と関連が認められた否定的感情反応尺度について,尺度得点が平均値より高い値を示した19名を高群,低い値を示した18名を低群として,気質特徴に適合したベビーマッサージ教室の体験前後で,育児自己効力に変化が認められるか否かを検討した。否定的感情反応得点と教室体験を独立変数,育児自己効力の接し方得点,ほめ方・叱り方得点のそれぞれを従属変数とし,2要因(高群・低群 × 体験前・体験後)の分散分析を行った。その結果,接し方については,否定的感情反応の主効果,教室体験の主効果が有意であった(F(1,35) = 4.92, p < .05, F(1,35) = 14.14,p <.01)。一方,交互作用は有意ではなかった。また,ほめ方・叱り方についても,否定的感情反応の主効果,教室体験の主効果は有意であった(F(1,35) = 7.83, p < .01, F(1,35) = 4.32, p <.05)が,交互作用は有意ではなかった。つまり,育児不安を高める気質特徴が高い子どもであってもなくても,母親が子どもの気質特徴を理解し,気質特徴に適合したベビーマッサージを行うことで,接し方や,ほめ方・叱り方という育児行動に対する自己効力が高まることが示された(Figure1, 2)。
本研究では,通常のベビーマッサージと比較して子どもの気質特徴に適合したベビーマッサージがより効果的であるか否かは明らかにできていない。今後,対象群との比較を行うなど,さらなる効果検証の研究が必要である。
本研究は川崎医療福祉大学倫理委員会の承認を受け(承認番号16-021号),平成28年度川崎医療福祉大学医療福祉研究費補助金の助成を受けて実施した。

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