発表

1A-072

子どもの情動調整の発達的変化 日本と米国の子どもの情動調整の特徴を中心に

[責任発表者] 中田 栄:1
1:帝京大学

目 的
 近年、Emotion APIや Emotion API for Videoなど人間の表情をすみやかに認識でき、子ども同士のコミュニケーションや集団の反応を長期間にわたり追跡することができる。
  世界中で、オープンソースとして感情APIが身近なものとなり、様々な国の人間の表情についてのデータが蓄積されることによって、研究成果の検証のための情動についての観察や実験や調査を繰り返し行うことが可能である。
 他者の情動の理解は、コミュニケーションを円滑にするために必要不可欠であるため、日本の教育現場においても教師が子どもに対して相手の気持ちに気付かせるための手作り教材や絵カードで子どもの情動の理解を促す活動に関心が高まっている(Nakata,2016)。
 他者の情動理解を促すことによって、相手の気持ちに配慮したコミュニケーションが可能となる。そのため、情動調整や自己統制などを促し、コミュニケーション能力を育成する教育が重要である。そこで、本研究は、子どものコミュニケーション能力の育成を検討するため、3歳~5歳の子どもを対象に,子どもの情動発達を状況ごとに明らかにすることを目的とする。
方 法
研究対象: 3歳~5歳の幼児72名の中から、本研究では、 3歳児12名(男児6名, 女児6名), 4歳児12名(男児6名, 女児6名), 5歳児12名(男児6名, 女児6名), 合計36名(日本18名, 米国18名)の日本と米国の幼児を各同数ずつになるように抽出した。対象者の背景とスキル: 英語でネイティブと共に過ごす環境にいるため、英語の絵本の質問を英語と日本語でできる。
手続き: 幼児の情動表出について状況ごとに行動観察を実施した。情動表出の測定には、観察の協力を得て、Anger(怒り), Contempt(軽蔑), Disgust(嫌悪感), Fear(恐れ),Happiness(喜び), Neutral(あいまいな中立), Sadness(悲しみ), Surprise(驚き)などに加え、本研究では多様な情動の中から、安らぎ、興味などの情動を記録した。行動観察は可能な午前8:30~9:30と情動測定の可能な午前10:30~11:30の時間に行った。午前8:30から時間経過に沿って観察し、表情を記述する。
観察期間: 本研究の 測定は、2016年10月から2017年3月までの間に週に2回づつ実施した。
実施場所: 室内の半分をブロックコーナーにして実施した。
分析方法:子どもの情動表出の記述、観察による情動の測定と行動観察により検討した。
材料: 日本語と英語の絵カードとブロック。絵カードと教示: 実際に手本を見せ、観察者側があらかじめ絵カードを提示して「噛みつかない」「取られた時は噛みつかずに返してと言おう」ということを日本語と英語の絵カードを使い日本と米国の幼児に伝えた。
 友達や先生と一緒に「ブロックを返して」と言う側の子どもの情動、先生や友達からブロックを「返して」と言われる側の幼児の情動を記録する。
結 果
 ブロックコーナーの観察: ブロックを譲り合いながら作品を作る状況において、順番を待てない幼児にタイヤのついたブロックを取られる。先生と友達と一緒に手をつないで「返して」と言いに行く状況の幼児の表情を記録した。
観察結果:状況ごとに表出された情動の頻度を選択し評定した結果、幼児のそれぞれの表情が認識され、Emotion APIで検出した感情値(Emotion score)と同じ情動の結果が表示された。友達におもちゃをとられてすぐに返してもらえないときの幼児のAnger(怒り)が90%から99%へと変化した。
考 察
 ブロックの数が限られている場面で順番に使う場面では、ブロックが足りず、取り合いになったときに教師が介入し、「友達が作ったブロックの車をかしてと言わずに取ったね。はじめから見ていましたよ」と言われる場面では、取られた子どもは、怒り、嫌悪感、悲しみ、驚きなどが混ざりあった情動として検出された。取った子どもに対して、取られた子どもと一緒に「返して」「返してあげよう」と一緒に言い,返してもらえるまで取った子どもに伝える場面ではお互いに嫌悪感が見られた。友達同士で穏やかに遊んでいる中で、友達におもちゃをとられてすぐに返してもらえないときの幼児のAnger(怒り)が90%から99%へと変化したことが認識されたことによって、教師が手の届く距離に待機し、噛みつき行動やひっかきによる怪我をする危険を事前予測し、未然に防止できた。
 なお、米国の子どもは表情が読み取りやすいのに対し、日本の子どもでは、あいまいな中立や複数の情動が混ざり合うことが明らかにされた。
引用文献
Nakata,S. 2016 The effects of role playing to emotional regulation process in preschool children. Poster presentation at the 31st International Congress of Psychology.

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